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セレスタ 帰還編
ショッピング 5
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「うう…、恥ずかしい」
ここに来た目的は果たせた。
それはいいんだけど、ここまで恥ずかしい思いをするとは思わなかった。
ヴォルフが平然としてるのがまた腹が立つ。
ちらりと自分の手に目を落とす。
視界の端に銀色が入るともうダメだった。
慌てて視線を外す。
顔がにやけそうで困る。
気を取り直してヴォルフに話しかけた。
「これからどうする? 何か見たいものある?」
マリナは歩いているだけでも楽しいけれど、この辺りは洋服を扱った店が多いのでヴォルフはあまり興味ないと思う。
女性向けの方が多いし。
(ああ、あの服かわいいなぁ)
向こうでは着れないから買わないけれど、可愛い。
セレスタの衣装とは違うのでこの世界で暮らしていたときは仮装してるみたいで楽しかった。
衣装ひとつ変わるだけで違う自分になったような気がして。
「…?」
返事がないことを不思議に思って振り返るとすぐ後ろにいない。
どこに消えたのかと視線を巡らせると通路の端にヴォルフの背中が見える。
(誰?)
ヴォルフの影になってよく見えないけど男の人と話してるみたい。
知り合いということはないと思う。
(だってヴォルフがこの世界にいたときは黒犬の姿だったもの)
初対面の男の人がヴォルフに何の用だろう。
見る限りあまり友好的な雰囲気ではなかった。
「だから、彼女とどういう関係なんだ…!」
気弱そうな男性が必死にヴォルフに食い下がっている。
ヴォルフは見知らぬ男性に詰問されて、ただでさえ近寄り難い風貌を恐ろしいものに変えている。
(逆効果だからそれ)
ヴォルフの威容に怖気づいているのか男性は若干腰が引けていた。
男性がヴォルフに掴みかかったりしてなくて良かったと思う。
どう見ても弱そうな人相手に暴力を振るったりはしないけれど、先に攻撃されたらその限りではない。
騒ぎになる前に止めようと近づくとヴォルフが口を開いた。
「まずお前は何だ」
威圧するな。
事態が悪化する前に間に割り込んだ。
「どうかしましたか?」
覗き込むように男性の前に出る。
突然入ってきたマリナに男性は戸惑ったように身を引いた。
幼く見える容姿を利用して無害そうな顔を作り微笑む。
「何かあったのでしょうか、彼が何か失礼を?」
「き、君は?」
どう見ても少女のマリナに男性の勢いが削がれた。
「私ですか? 彼の連れですけれど…」
マリナの答えに男性が動揺する。
「え、でも、彼は…」
「ちょっと! 何してるの!?」
男性の言葉を遮って美菜さんの声が聞こえた。
声の方を見ると美菜さんが足音を立てながら歩いてくるところだった。
「美菜!」
「美菜さん!」
男性が美菜さんの名前を呼んだことで彼の正体が知れる。
美菜さんは腕を組んでご立腹だ。
(ケンカしてた?)彼氏さんの前に立って睨みつけている。
「何でここにいるの?」
マリナが聞いたことのない低い声。相当怒っているみたい。
「美菜こそ、この人は誰だよ!?」
その台詞に美菜さんの目が据わった。まずい。
「これは私の婚約者ですが、何か?」
慌てて割り込む。
マリナの言葉に彼氏さんが呆けた顔になる。
「え、でも美菜と指輪とか選んでただろ?」
「視界に入っていなかったようですが私もいましたよ」
そもそも美菜さんはほぼ、マリナに話しかけていたのに何故気が付かないんだろう。
「美菜さんは彼と私のためにリングを選んでくれていただけですが」
そう言って指輪を示す。
マリナとヴォルフが着けている揃いのリングを見て彼氏さんが青褪める。
「ごめ…」
「いいかげんにしなさいよ! この馬鹿!!」
美菜さんの怒りが爆発する。
怒る美菜さんに彼氏さんは平謝りだった。
ここに来た目的は果たせた。
それはいいんだけど、ここまで恥ずかしい思いをするとは思わなかった。
ヴォルフが平然としてるのがまた腹が立つ。
ちらりと自分の手に目を落とす。
視界の端に銀色が入るともうダメだった。
慌てて視線を外す。
顔がにやけそうで困る。
気を取り直してヴォルフに話しかけた。
「これからどうする? 何か見たいものある?」
マリナは歩いているだけでも楽しいけれど、この辺りは洋服を扱った店が多いのでヴォルフはあまり興味ないと思う。
女性向けの方が多いし。
(ああ、あの服かわいいなぁ)
向こうでは着れないから買わないけれど、可愛い。
セレスタの衣装とは違うのでこの世界で暮らしていたときは仮装してるみたいで楽しかった。
衣装ひとつ変わるだけで違う自分になったような気がして。
「…?」
返事がないことを不思議に思って振り返るとすぐ後ろにいない。
どこに消えたのかと視線を巡らせると通路の端にヴォルフの背中が見える。
(誰?)
ヴォルフの影になってよく見えないけど男の人と話してるみたい。
知り合いということはないと思う。
(だってヴォルフがこの世界にいたときは黒犬の姿だったもの)
初対面の男の人がヴォルフに何の用だろう。
見る限りあまり友好的な雰囲気ではなかった。
「だから、彼女とどういう関係なんだ…!」
気弱そうな男性が必死にヴォルフに食い下がっている。
ヴォルフは見知らぬ男性に詰問されて、ただでさえ近寄り難い風貌を恐ろしいものに変えている。
(逆効果だからそれ)
ヴォルフの威容に怖気づいているのか男性は若干腰が引けていた。
男性がヴォルフに掴みかかったりしてなくて良かったと思う。
どう見ても弱そうな人相手に暴力を振るったりはしないけれど、先に攻撃されたらその限りではない。
騒ぎになる前に止めようと近づくとヴォルフが口を開いた。
「まずお前は何だ」
威圧するな。
事態が悪化する前に間に割り込んだ。
「どうかしましたか?」
覗き込むように男性の前に出る。
突然入ってきたマリナに男性は戸惑ったように身を引いた。
幼く見える容姿を利用して無害そうな顔を作り微笑む。
「何かあったのでしょうか、彼が何か失礼を?」
「き、君は?」
どう見ても少女のマリナに男性の勢いが削がれた。
「私ですか? 彼の連れですけれど…」
マリナの答えに男性が動揺する。
「え、でも、彼は…」
「ちょっと! 何してるの!?」
男性の言葉を遮って美菜さんの声が聞こえた。
声の方を見ると美菜さんが足音を立てながら歩いてくるところだった。
「美菜!」
「美菜さん!」
男性が美菜さんの名前を呼んだことで彼の正体が知れる。
美菜さんは腕を組んでご立腹だ。
(ケンカしてた?)彼氏さんの前に立って睨みつけている。
「何でここにいるの?」
マリナが聞いたことのない低い声。相当怒っているみたい。
「美菜こそ、この人は誰だよ!?」
その台詞に美菜さんの目が据わった。まずい。
「これは私の婚約者ですが、何か?」
慌てて割り込む。
マリナの言葉に彼氏さんが呆けた顔になる。
「え、でも美菜と指輪とか選んでただろ?」
「視界に入っていなかったようですが私もいましたよ」
そもそも美菜さんはほぼ、マリナに話しかけていたのに何故気が付かないんだろう。
「美菜さんは彼と私のためにリングを選んでくれていただけですが」
そう言って指輪を示す。
マリナとヴォルフが着けている揃いのリングを見て彼氏さんが青褪める。
「ごめ…」
「いいかげんにしなさいよ! この馬鹿!!」
美菜さんの怒りが爆発する。
怒る美菜さんに彼氏さんは平謝りだった。
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