52 / 368
セレスタ 帰還編
ショッピング 3
しおりを挟む
ようやく落ち着いた美菜さんにアクセサリーを売っているお店を聞く。
「アクセサリー? 専門店もあるけどバックや洋服を売ってるお店にも置いてあるし、髪につけるものならまた別の店だけど…」
言葉を切った美菜さんが意味ありげに笑う。
「二人で探しに来たならペアリングでしょう?」
「ええ、まあ…」
どうせバレバレなんだから全部正直に話してしまえばいいと思うのに羞恥からか曖昧な返事しか出来ずにいると美菜さんが笑った。
「マリナちゃんかわいいっ」
ぎゅっと抱きしめられたときに香水らしき香りがした。珍しい。
バイト先では飲食店だから着けなかっただけなのかもしれないけれど、美菜さんから香水の香りがしたのは初めてだった。
「でもこういうところのアクセサリーショップは恋人同士でペアリングを買うのが目的なんだからどこのお店でもあると思うよ」
美菜さんが笑って言う。
それが常識なのかそれとも偏見なのかマリナたちにはわからない。
うーん、何故か笑顔の美菜さんから怒りのオーラが見える気がする。
彼氏と何かあったのかな、と思うけれど怖くて聞けない。
「後は好みじゃないかな」
好みと言われるとより難しくなる。
マリナも特別装飾品に詳しいわけじゃないしヴォルフは言わずもがな。
「実際に見るしかないって! 行こ!」
悩んでいると美菜さんに手を引かれる。
「まずは私のお気に入りのところを案内してあげる!」
ぐいぐい引っ張る美菜さんにマリナたちはついて行くだけだった。
「もーうっ! まだ決められないの? 5軒目だよ?」
中々決められないマリナたちに美菜さんが口を尖らせる。
「すみません、どれも素敵だと思うんですけど…」
店頭にある装飾品はどれも素敵だと思うのは本当なんだけど、何かしっくりこない。
ヴォルフも同意見なのか何も言わずに後ろを歩いてくる。
「さっきのなんかマリナちゃんにとっても似合ってたのにな」
少し頬を膨らませて美菜さんが言う。
真剣に案内してくれるのに申し訳ない。
でもあれは可愛すぎて好みじゃないんです、ごめんなさい。
「もう、彼氏さんも似合ってたと思いますよねえ?」
「確かに似合ってはいたがマリナらしくはないな」
「えー? 駄目ですか?」
美菜さんが嘆くけれど、そもそもペアリングなんだからマリナにだけ似合っていてもしかたがないと思う。
そう思っていると美菜さんが何か閃いたように目を瞬いて笑った。
「マリナちゃん、彼氏さん、私ちょっと席を外すので二人で見ててください!」
言うが早いか美菜さんは走って何処かへ行ってしまう。
合流出来なくなるんじゃないかと一瞬思ったが、進路上に進んで行けばマリナたちを見つけられるだろうと思い直す。
道を逸れないように気をつけよう。
「行ってしまったな」
「そうね」
とりあえず道なりに適当に歩いて行こうと言うとヴォルフが小さく笑った。
「お前もこっちの世界だと普通の子供みたいだな」
「む」
セレスタでは弱く見られないよう、侮られないよういつも気を張っている。
この世界でただの子供として扱われるのも心地よいと知ってしまっているから少しだけ甘えてしまう。
「だってこっちでは気を遣わなくていいんだもの」
「いや、珍しいものが見れておもしろい」
からかっているのかと思ったけれど、ヴォルフの顔はどことなく嬉しそうでそれ以上は追及出来なかった。
「アクセサリー? 専門店もあるけどバックや洋服を売ってるお店にも置いてあるし、髪につけるものならまた別の店だけど…」
言葉を切った美菜さんが意味ありげに笑う。
「二人で探しに来たならペアリングでしょう?」
「ええ、まあ…」
どうせバレバレなんだから全部正直に話してしまえばいいと思うのに羞恥からか曖昧な返事しか出来ずにいると美菜さんが笑った。
「マリナちゃんかわいいっ」
ぎゅっと抱きしめられたときに香水らしき香りがした。珍しい。
バイト先では飲食店だから着けなかっただけなのかもしれないけれど、美菜さんから香水の香りがしたのは初めてだった。
「でもこういうところのアクセサリーショップは恋人同士でペアリングを買うのが目的なんだからどこのお店でもあると思うよ」
美菜さんが笑って言う。
それが常識なのかそれとも偏見なのかマリナたちにはわからない。
うーん、何故か笑顔の美菜さんから怒りのオーラが見える気がする。
彼氏と何かあったのかな、と思うけれど怖くて聞けない。
「後は好みじゃないかな」
好みと言われるとより難しくなる。
マリナも特別装飾品に詳しいわけじゃないしヴォルフは言わずもがな。
「実際に見るしかないって! 行こ!」
悩んでいると美菜さんに手を引かれる。
「まずは私のお気に入りのところを案内してあげる!」
ぐいぐい引っ張る美菜さんにマリナたちはついて行くだけだった。
「もーうっ! まだ決められないの? 5軒目だよ?」
中々決められないマリナたちに美菜さんが口を尖らせる。
「すみません、どれも素敵だと思うんですけど…」
店頭にある装飾品はどれも素敵だと思うのは本当なんだけど、何かしっくりこない。
ヴォルフも同意見なのか何も言わずに後ろを歩いてくる。
「さっきのなんかマリナちゃんにとっても似合ってたのにな」
少し頬を膨らませて美菜さんが言う。
真剣に案内してくれるのに申し訳ない。
でもあれは可愛すぎて好みじゃないんです、ごめんなさい。
「もう、彼氏さんも似合ってたと思いますよねえ?」
「確かに似合ってはいたがマリナらしくはないな」
「えー? 駄目ですか?」
美菜さんが嘆くけれど、そもそもペアリングなんだからマリナにだけ似合っていてもしかたがないと思う。
そう思っていると美菜さんが何か閃いたように目を瞬いて笑った。
「マリナちゃん、彼氏さん、私ちょっと席を外すので二人で見ててください!」
言うが早いか美菜さんは走って何処かへ行ってしまう。
合流出来なくなるんじゃないかと一瞬思ったが、進路上に進んで行けばマリナたちを見つけられるだろうと思い直す。
道を逸れないように気をつけよう。
「行ってしまったな」
「そうね」
とりあえず道なりに適当に歩いて行こうと言うとヴォルフが小さく笑った。
「お前もこっちの世界だと普通の子供みたいだな」
「む」
セレスタでは弱く見られないよう、侮られないよういつも気を張っている。
この世界でただの子供として扱われるのも心地よいと知ってしまっているから少しだけ甘えてしまう。
「だってこっちでは気を遣わなくていいんだもの」
「いや、珍しいものが見れておもしろい」
からかっているのかと思ったけれど、ヴォルフの顔はどことなく嬉しそうでそれ以上は追及出来なかった。
0
お気に入りに追加
247
あなたにおすすめの小説

【書籍化・3/7取り下げ予定】あなたたちのことなんて知らない
gacchi
恋愛
母親と旅をしていたニナは精霊の愛し子だということが知られ、精霊教会に捕まってしまった。母親を人質にされ、この国にとどまることを国王に強要される。仕方なく侯爵家の養女ニネットとなったが、精霊の愛し子だとは知らない義母と義妹、そして婚約者の第三王子カミーユには愛人の子だと思われて嫌われていた。だが、ニネットに虐げられたと嘘をついた義妹のおかげで婚約は解消される。それでも精霊の愛し子を利用したい国王はニネットに新しい婚約者候補を用意した。そこで出会ったのは、ニネットの本当の姿が見える公爵令息ルシアンだった。書籍化予定です。取り下げになります。詳しい情報は決まり次第お知らせいたします。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】この胸が痛むのは
Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」
彼がそう言ったので。
私は縁組をお受けすることにしました。
そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。
亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。
殿下と出会ったのは私が先でしたのに。
幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです……
姉が亡くなって7年。
政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが
『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。
亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……
*****
サイドストーリー
『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。
こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。
読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです
* 他サイトで公開しています。
どうぞよろしくお願い致します。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
人体実験サークル
狼姿の化猫ゆっと
恋愛
人間に対する興味や好奇心が強い人達、ようこそ。ここは『人体実験サークル』です。お互いに実験し合って自由に過ごしましょう。
《注意事項》
・同意無しで相手の心身を傷つけてはならない
・散らかしたり汚したら片付けと掃除をする
[SM要素満載となっております。閲覧にはご注意ください。SとMであり、男と女ではありません。TL・BL・GL関係なしです。
ストーリー編以外はM視点とS視点の両方を載せています。
プロローグ以外はほぼフィクションです。あとがきもお楽しみください。]

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる