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異世界<日本>編
似た者同士
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自室に戻ろうと王宮内を歩いていると向こうから一人の青年が歩いてくる。
その顔を見てマリナは避けようかと一瞬迷う。
その迷いの間に青年はまっすぐマリナの下に向かってきて目の前で立ち止まった。
「お久しぶりです。 お元気そうでなにより」
皮肉なのかどうか彼の表情からは読み取れない。
マリナも適当に返すことにした。
「おかげさまで戻って来れたわ。 ありがとう」
青年の顔がわずかに引き攣る。
「皮肉ですか、それは」
「わざわざヴォルフに助言をしてくれたみたいだから、お礼は言っておいたほうが良いかとおもって」
話には聞いた。ヴォルフが師匠のところに行ったときに彼がマリナのことについて色々話してくれたと。
勝手に人の心情を喋ったことについては文句を言いたくて仕方ないが、おかげで帰ってきただけに文句を言うのも憚られた。
彼がヴォルフに話をしなければ今ここにいられなかったかもしれないと思うと、感謝したいような罵倒したいような複雑な気分だ。
「ああ、あまりに彼が鈍かったので少し腹が立ちまして、全部ぶちまけてやりたくなったんです」
らしくなく乱暴な口調を使う彼に苦笑で答える。
「まあ、あれがヴォルフの普通だから」
察しがいいヴォルフとか別の生き物だと思う。
「私もあなたにとって良い相手だと思いますけれどねえ」
彼がそんな戯言を口にする。
「しがない男爵家の男ですが、あなたに相応しいほどの能力は備えていると自負していますし」
「代わりに双翼の地位と能力を以て男爵家の家格を上げてほしい、でしょう」
わかりやすいストレートな求婚理由だけどどうかと思う。
丁度いい相手というのは間違っていないけれど。
文句が出るほど不相応な相手でもなく、お互いに利益のある関係。
悪くないとマリナも思う。
頷くかどうかは別の問題だけど。
真っ向から条件を提示してぶつかって来てくれたのはわかりやすくて良かった。
ただ理性だけで肯けるほどマリナは大人じゃない。
「私なりに貴女のことを想っておりましたよ」
「それは知ってる」
打算だけでないのはマリナもわかっている。それでもダメだった。
ヴォルフのことしか考えられなかった。
「やっぱりこういうのは正攻法でなければ駄目でしたかね」
「そういう反省してる時点で違うと思うけど」
次に生かそうとすぐに振り返って反省点を考えてるくせに想っていたとか言われても。
「おや、反省点を見つけ改善するのは仕事でも大事ではありませんか?」
「仕事ではね」
それなりに好かれていたのはわかるし彼のことも嫌いじゃない。
でもマリナは諦めようとしても諦められずにいた。
ヴォルフのことを嫌いになれたらと何度思ったか知れない。
それでも心は全く自由にならず、叶うことがないと思っていても想いを捨てられなかった。
「結構似合っていると思ったんですがねえ。 私たちは」
「似合ってるじゃなくて似ているの間違いなんじゃない? それ」
思考の向きは似ている気がする。
私がヴォルフと出会わず、何にも心を動かされずに育ったら彼のような人間に育ったと思う。
「レイン」
似て非なる存在に今できる最高の笑顔を送る。
「ありがとう」
マリナの笑顔を見て僅かに痛むような顔をしたレインはすぐに笑みを浮かべてみせた。
「せいぜい感謝してください」
「うん、レインが恋をしたときは全力で手伝ってあげるわ」
わざとふざけた調子で言うとレインも同じように返してくる。
「止めてください。 貴女に手伝ってもらわなくても欲しいと思った人なら自分で手に入れます」
くるっとマリナに背を向けて、レインは憎らしい笑みを浮かべて去って行く。
その顔を見てレインにそんな日がきたら、嫌がらせ半分、おせっかい半分絶対に手を出すと心に決めた。
その顔を見てマリナは避けようかと一瞬迷う。
その迷いの間に青年はまっすぐマリナの下に向かってきて目の前で立ち止まった。
「お久しぶりです。 お元気そうでなにより」
皮肉なのかどうか彼の表情からは読み取れない。
マリナも適当に返すことにした。
「おかげさまで戻って来れたわ。 ありがとう」
青年の顔がわずかに引き攣る。
「皮肉ですか、それは」
「わざわざヴォルフに助言をしてくれたみたいだから、お礼は言っておいたほうが良いかとおもって」
話には聞いた。ヴォルフが師匠のところに行ったときに彼がマリナのことについて色々話してくれたと。
勝手に人の心情を喋ったことについては文句を言いたくて仕方ないが、おかげで帰ってきただけに文句を言うのも憚られた。
彼がヴォルフに話をしなければ今ここにいられなかったかもしれないと思うと、感謝したいような罵倒したいような複雑な気分だ。
「ああ、あまりに彼が鈍かったので少し腹が立ちまして、全部ぶちまけてやりたくなったんです」
らしくなく乱暴な口調を使う彼に苦笑で答える。
「まあ、あれがヴォルフの普通だから」
察しがいいヴォルフとか別の生き物だと思う。
「私もあなたにとって良い相手だと思いますけれどねえ」
彼がそんな戯言を口にする。
「しがない男爵家の男ですが、あなたに相応しいほどの能力は備えていると自負していますし」
「代わりに双翼の地位と能力を以て男爵家の家格を上げてほしい、でしょう」
わかりやすいストレートな求婚理由だけどどうかと思う。
丁度いい相手というのは間違っていないけれど。
文句が出るほど不相応な相手でもなく、お互いに利益のある関係。
悪くないとマリナも思う。
頷くかどうかは別の問題だけど。
真っ向から条件を提示してぶつかって来てくれたのはわかりやすくて良かった。
ただ理性だけで肯けるほどマリナは大人じゃない。
「私なりに貴女のことを想っておりましたよ」
「それは知ってる」
打算だけでないのはマリナもわかっている。それでもダメだった。
ヴォルフのことしか考えられなかった。
「やっぱりこういうのは正攻法でなければ駄目でしたかね」
「そういう反省してる時点で違うと思うけど」
次に生かそうとすぐに振り返って反省点を考えてるくせに想っていたとか言われても。
「おや、反省点を見つけ改善するのは仕事でも大事ではありませんか?」
「仕事ではね」
それなりに好かれていたのはわかるし彼のことも嫌いじゃない。
でもマリナは諦めようとしても諦められずにいた。
ヴォルフのことを嫌いになれたらと何度思ったか知れない。
それでも心は全く自由にならず、叶うことがないと思っていても想いを捨てられなかった。
「結構似合っていると思ったんですがねえ。 私たちは」
「似合ってるじゃなくて似ているの間違いなんじゃない? それ」
思考の向きは似ている気がする。
私がヴォルフと出会わず、何にも心を動かされずに育ったら彼のような人間に育ったと思う。
「レイン」
似て非なる存在に今できる最高の笑顔を送る。
「ありがとう」
マリナの笑顔を見て僅かに痛むような顔をしたレインはすぐに笑みを浮かべてみせた。
「せいぜい感謝してください」
「うん、レインが恋をしたときは全力で手伝ってあげるわ」
わざとふざけた調子で言うとレインも同じように返してくる。
「止めてください。 貴女に手伝ってもらわなくても欲しいと思った人なら自分で手に入れます」
くるっとマリナに背を向けて、レインは憎らしい笑みを浮かべて去って行く。
その顔を見てレインにそんな日がきたら、嫌がらせ半分、おせっかい半分絶対に手を出すと心に決めた。
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