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異世界<日本>編
チャンネル争い
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家にいるときのマリナたちの娯楽といえばテレビのみ。
だから、こんな争いが起きるのも当然いえば当然だった。
「俺はこっちが見たい」
「嫌よ、人が殴り合ってるの見て何が楽しいのよ」
見世物としての殴り合いなんて別におもしろくない。
これがもっと戦闘技術として興味深いものだったら参考に見てもいいけど、はっきり言ってそこまで高尚なものには見えなかった。
「お前が見たがってる歌番組より意味があるものだろうが!」
どこが、と心で毒づく。
「かわいいじゃない」
女の子の集団が揃いの衣装で踊りながら歌う様は見てるだけでも楽しい。
向こうの常識から言うと少々服の裾が短すぎるけれど、それでもかわいい。
「こっちの文化として見てておもしろいわよ」
ヴォルフと束の間睨み合う。
ちなみにテレビに録画機能は付いていない。
「…しかたないわね、譲ってあげるわ」
ヴォルフが見たがっているのは今日しかないみたいだし、歌番組はまた来週やるだろう。希少度を考えて快く譲ってあげた。
ヴォルフが嬉々としてチャンネルを変える。どうやったんだ。
仕方ないのでマリナはノートを取り出して何かすることにした。
イヤホンを携帯に付けて入っている曲を大きめの音で流す。いかつい男たちのうめき声なんて聞きたくないし。
ノートを開いて真っ白なページを見つめる。
「…」
ペン先をノートに近づけながら頭の中でイメージする。はっきりと魔法陣が浮かんだ瞬間ノートにペンを走らせた。
中央に文字と図形を描き、曲線を伸ばし円を描く。円に沿って描く紋様は精緻なもの、インクを擦らないように注意しながら一気に描いていく。
「お前、よくそんな細かい物が描けるな」
ヴォルフのそんな声にマリナはペンを持ったまま顔を上げた。
いつの間にか番組は終わっていたらしい。
テーブルの向こうの顔がうんざりするように歪んでいるのを見て苦笑する。
「これができなきゃ魔術師なんて名乗れないわよ」
魔法陣を書くのは初歩の初歩だ。
得手不得手はあるものの誰もが習い、使える。
マリナも別に魔法陣を描くのが好きなわけではないけれど、苦にはしていない。
「それにこうして形にするのは意味のあることだし」
実際に魔法陣を見ることで普段使っている魔法の矛盾点や無駄を見つける助けになる。
より効率良く威力の高い魔法を使おうと思ったらほぼ必須の技能だ。
今マリナが描いているのはそのためのものではないけれど。
「無心で没頭してると新しいことを閃きそうにならない?」
ヴォルフだってよく訓練をしていた。それと似たようなものだと思う。
そう言うと微妙な顔をしながらも納得した。
「自分を高めるために同じ型を繰り返すのは剣術にもあるしな」
剣、ね。ヴォルフもこんなに長く剣を握っていないのは初めてだろう。
時間があるときはいつも訓練をしていた。
「ヴォルフも今は普通の訓練ができないけど瞑想とかはしてるでしょう?」
朝起きた後それらしいことをしているのを見ている。
「ああ、最低限それだけでもしないとな」
「やっぱり?」
マリナも実際に魔力を使うことは出来ないけれど同じようなことはしていた。
日々の積み重ねが物を言うのはのは剣術でも魔術でも同じだ。
大切なことなんだけど…。
元の姿に戻ったらアパートの敷地とか公園で訓練をしそうだ。すっごく目立つ上に不審者として通報されそうな予感がする。
ギリギリまで姿は戻さないようにしようかとちょっとだけ考えた。
だから、こんな争いが起きるのも当然いえば当然だった。
「俺はこっちが見たい」
「嫌よ、人が殴り合ってるの見て何が楽しいのよ」
見世物としての殴り合いなんて別におもしろくない。
これがもっと戦闘技術として興味深いものだったら参考に見てもいいけど、はっきり言ってそこまで高尚なものには見えなかった。
「お前が見たがってる歌番組より意味があるものだろうが!」
どこが、と心で毒づく。
「かわいいじゃない」
女の子の集団が揃いの衣装で踊りながら歌う様は見てるだけでも楽しい。
向こうの常識から言うと少々服の裾が短すぎるけれど、それでもかわいい。
「こっちの文化として見てておもしろいわよ」
ヴォルフと束の間睨み合う。
ちなみにテレビに録画機能は付いていない。
「…しかたないわね、譲ってあげるわ」
ヴォルフが見たがっているのは今日しかないみたいだし、歌番組はまた来週やるだろう。希少度を考えて快く譲ってあげた。
ヴォルフが嬉々としてチャンネルを変える。どうやったんだ。
仕方ないのでマリナはノートを取り出して何かすることにした。
イヤホンを携帯に付けて入っている曲を大きめの音で流す。いかつい男たちのうめき声なんて聞きたくないし。
ノートを開いて真っ白なページを見つめる。
「…」
ペン先をノートに近づけながら頭の中でイメージする。はっきりと魔法陣が浮かんだ瞬間ノートにペンを走らせた。
中央に文字と図形を描き、曲線を伸ばし円を描く。円に沿って描く紋様は精緻なもの、インクを擦らないように注意しながら一気に描いていく。
「お前、よくそんな細かい物が描けるな」
ヴォルフのそんな声にマリナはペンを持ったまま顔を上げた。
いつの間にか番組は終わっていたらしい。
テーブルの向こうの顔がうんざりするように歪んでいるのを見て苦笑する。
「これができなきゃ魔術師なんて名乗れないわよ」
魔法陣を書くのは初歩の初歩だ。
得手不得手はあるものの誰もが習い、使える。
マリナも別に魔法陣を描くのが好きなわけではないけれど、苦にはしていない。
「それにこうして形にするのは意味のあることだし」
実際に魔法陣を見ることで普段使っている魔法の矛盾点や無駄を見つける助けになる。
より効率良く威力の高い魔法を使おうと思ったらほぼ必須の技能だ。
今マリナが描いているのはそのためのものではないけれど。
「無心で没頭してると新しいことを閃きそうにならない?」
ヴォルフだってよく訓練をしていた。それと似たようなものだと思う。
そう言うと微妙な顔をしながらも納得した。
「自分を高めるために同じ型を繰り返すのは剣術にもあるしな」
剣、ね。ヴォルフもこんなに長く剣を握っていないのは初めてだろう。
時間があるときはいつも訓練をしていた。
「ヴォルフも今は普通の訓練ができないけど瞑想とかはしてるでしょう?」
朝起きた後それらしいことをしているのを見ている。
「ああ、最低限それだけでもしないとな」
「やっぱり?」
マリナも実際に魔力を使うことは出来ないけれど同じようなことはしていた。
日々の積み重ねが物を言うのはのは剣術でも魔術でも同じだ。
大切なことなんだけど…。
元の姿に戻ったらアパートの敷地とか公園で訓練をしそうだ。すっごく目立つ上に不審者として通報されそうな予感がする。
ギリギリまで姿は戻さないようにしようかとちょっとだけ考えた。
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