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「アーリアとジェラールが連れ去られた?」
騎士団宿舎に戻ってきたコーラルが団長室に辿り着くと中にはジェイドと、何故かアンネムがいた。
「そうですか、思い切ったことをしますね」
「まあ、悪くない。 元々そういうのが得意だしな」
二人が誘拐されたのは半分成り行きだ。
突然の事態に合わせて臨機応変に行動するだろうから、さして心配はしていない。
きっとこちらが想像する以上の成果を持って帰ってくる。
自分たちに出来ることは二人の撤退を援護できるように状況を整えることだ。
「ジェラールのヤツが捕まったのは何故だ?」
コーラルは態度や言葉こそ偉そうなものの、わからないことを素直に聞く可愛らしさも持ち合わせている。
「何故、とは?」
コーラルの質問の意味を捉えきれなかったジェイドが聞き返す。
「先に男たちはジェラールの方に近づいたんだ。 アイツならどうにかできたはずだろう。 なんで素直について行ったんだ?」
「そりゃ、その方が手っ取り早いからだろ?」
至極当然のようにアンネムが答える。
アンネムは自分が助け出された事件の概要から今回の任務を想像していた。
「今回も誘拐組織とかに潜入するつもりだったんだろ、だったら誘拐された方が詳しく内部のことがわかる。 危ない方法だと思うけどさ、あの二人ならある程度対処できるんじゃないかな」
「なんだと! そんな危ないことをするつもりなのか!!」
羽を開いて怒りを表すコーラルをジェイドが宥める。
「落ち着いてください、コーラル。 リアにそんな危ない方法は取らせません。
まして今回は二人だけでの潜入なので、無理はしないように厳命しています。
アーリアもジェラールもそんな無茶なことをするわけがない」
「だったらどうして抵抗しなかったんだ? あのくらいの人数なら逃げられただろうに」
コーラルの疑問に黙って聞いていた団長が口を開いた。
「夜会でどんな情報を得てきたのか…。 逃げるより飛び込んだ方がいいと判断した何かがあるんだろう」
「あの二人がそう判断したのならそうとう逼迫した状況なのでしょうね。 例えばすでに多くの被害が出ていた、とか」
「そういえばリアを攫った男、夜会でも見たな」
パーティ会場でコーラルが置物を装って観察していたとき、給仕に扮したリアに近づいた男と馬車でリアを攫っていった男は同じ顔だった。
「話し声は聞こえなかったがリアが困った顔をしていた」
「そいつって金髪ですっごい美形な奴?」
コーラルの説明にアンネムが口を挿む。
「顔はどうか知らんが確かに金髪だったな、いい服を着ていた」
「うーん、それが俺の知ってる奴と同じならリアがついてったのもわかるかも」
「なんだと!」
「俺が前に聞いた話だけど、身分の低い女の人ばっかりと付き合ってる男がいて、なんか相手の女の人がいなくなってるらしいんだよね」
部屋の空気が緊迫したものに変わる。
「それは…」
「誘拐されたって聞いたわけじゃないんだ。 女の人は仕事を辞めて素性がわからないって話だけで。
でも、俺みたいな人間からしたらさ…」
誘拐組織にいた経験からアンネムは何かしらの不審を感じていたらしい。
「そういった情報は入っていなかったのですが、今回二人が掴んだ情報の中にあったのかもしれません」
「身分違いの男と付き合って仕事辞めさせられたなんて外聞悪いし、次の仕事探すのも大変だろうしさ、住んでた街から姿を消してもおかしくはないんだよね」
「アンネム君の言った通りの男だとしたら、すでに相当の被害があるのかもしれません。
二人なら潜入しようとしてもおかしくないですね」
ジェイドが言ったことにアンネムが疑問を投げかける。
「あのさ、アーリアが強いのはわかるけど、ちょっと無茶じゃない?」
たった二人で誘拐組織に潜入する。アンネムが言うように無茶な話だ。
「それを可能にする能力がある、と思ったから行ったんだと思いますよ。 アーリアの方は命の危険はないでしょうしね」
「別の危険はあると思うけど…、アーリアはそれでいいのかな」
自分とパートナーの実力を信じていても、安全に絶対なんてことはない。
「どこまで承知しているのか、私は知りません。
ただ彼女が軽い気持ちで騎士団に居るわけでないのは知っています」
「アーリアのことはジェラールが守るさ」
何としてもな、と告げた団長の声には確信に満ちていた。
騎士団宿舎に戻ってきたコーラルが団長室に辿り着くと中にはジェイドと、何故かアンネムがいた。
「そうですか、思い切ったことをしますね」
「まあ、悪くない。 元々そういうのが得意だしな」
二人が誘拐されたのは半分成り行きだ。
突然の事態に合わせて臨機応変に行動するだろうから、さして心配はしていない。
きっとこちらが想像する以上の成果を持って帰ってくる。
自分たちに出来ることは二人の撤退を援護できるように状況を整えることだ。
「ジェラールのヤツが捕まったのは何故だ?」
コーラルは態度や言葉こそ偉そうなものの、わからないことを素直に聞く可愛らしさも持ち合わせている。
「何故、とは?」
コーラルの質問の意味を捉えきれなかったジェイドが聞き返す。
「先に男たちはジェラールの方に近づいたんだ。 アイツならどうにかできたはずだろう。 なんで素直について行ったんだ?」
「そりゃ、その方が手っ取り早いからだろ?」
至極当然のようにアンネムが答える。
アンネムは自分が助け出された事件の概要から今回の任務を想像していた。
「今回も誘拐組織とかに潜入するつもりだったんだろ、だったら誘拐された方が詳しく内部のことがわかる。 危ない方法だと思うけどさ、あの二人ならある程度対処できるんじゃないかな」
「なんだと! そんな危ないことをするつもりなのか!!」
羽を開いて怒りを表すコーラルをジェイドが宥める。
「落ち着いてください、コーラル。 リアにそんな危ない方法は取らせません。
まして今回は二人だけでの潜入なので、無理はしないように厳命しています。
アーリアもジェラールもそんな無茶なことをするわけがない」
「だったらどうして抵抗しなかったんだ? あのくらいの人数なら逃げられただろうに」
コーラルの疑問に黙って聞いていた団長が口を開いた。
「夜会でどんな情報を得てきたのか…。 逃げるより飛び込んだ方がいいと判断した何かがあるんだろう」
「あの二人がそう判断したのならそうとう逼迫した状況なのでしょうね。 例えばすでに多くの被害が出ていた、とか」
「そういえばリアを攫った男、夜会でも見たな」
パーティ会場でコーラルが置物を装って観察していたとき、給仕に扮したリアに近づいた男と馬車でリアを攫っていった男は同じ顔だった。
「話し声は聞こえなかったがリアが困った顔をしていた」
「そいつって金髪ですっごい美形な奴?」
コーラルの説明にアンネムが口を挿む。
「顔はどうか知らんが確かに金髪だったな、いい服を着ていた」
「うーん、それが俺の知ってる奴と同じならリアがついてったのもわかるかも」
「なんだと!」
「俺が前に聞いた話だけど、身分の低い女の人ばっかりと付き合ってる男がいて、なんか相手の女の人がいなくなってるらしいんだよね」
部屋の空気が緊迫したものに変わる。
「それは…」
「誘拐されたって聞いたわけじゃないんだ。 女の人は仕事を辞めて素性がわからないって話だけで。
でも、俺みたいな人間からしたらさ…」
誘拐組織にいた経験からアンネムは何かしらの不審を感じていたらしい。
「そういった情報は入っていなかったのですが、今回二人が掴んだ情報の中にあったのかもしれません」
「身分違いの男と付き合って仕事辞めさせられたなんて外聞悪いし、次の仕事探すのも大変だろうしさ、住んでた街から姿を消してもおかしくはないんだよね」
「アンネム君の言った通りの男だとしたら、すでに相当の被害があるのかもしれません。
二人なら潜入しようとしてもおかしくないですね」
ジェイドが言ったことにアンネムが疑問を投げかける。
「あのさ、アーリアが強いのはわかるけど、ちょっと無茶じゃない?」
たった二人で誘拐組織に潜入する。アンネムが言うように無茶な話だ。
「それを可能にする能力がある、と思ったから行ったんだと思いますよ。 アーリアの方は命の危険はないでしょうしね」
「別の危険はあると思うけど…、アーリアはそれでいいのかな」
自分とパートナーの実力を信じていても、安全に絶対なんてことはない。
「どこまで承知しているのか、私は知りません。
ただ彼女が軽い気持ちで騎士団に居るわけでないのは知っています」
「アーリアのことはジェラールが守るさ」
何としてもな、と告げた団長の声には確信に満ちていた。
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