ストケシア

桧山 紗綺

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幸福な恋人たち

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  グレイ様は、ぐったりとソファに沈み込んでいる。
 「アイツはいつもそうだ。 トラブルを引き起こして涼しい顔をしている」
 「だいぶ、聞いていた印象とは違う方でした…」
  返すシアもだいぶ疲れていた。
 「ああ、身体は弱いがその他が元気すぎる。 口は達者だし、策謀をめぐらせることも上手い。 アイツが人並みに健康だったら俺が巻き込まれた揉め事は絶対に3倍以上に増えている」
  短い時間だったけれど、シアにもそれが身に染みた。
 「まあ、それでも今はずいぶんと良くなった。 それはうれしいんだが、こうトラブルを作られるとな…」
 「正直、お姉様とはお似合いだと思いました」
  アステリア様も小さいころはイタズラ好きだった。さすがに成長すれば立場もあるし、そんなことは出来なくなる。だから、今回のことはずいぶん楽しんだのだろう。
 「どっちなんだろうな…」
 「何が、ですか?」
 「自分たちが楽しむために噂を流したのか、俺たちに協力するためにやったのか」
 「……どっちもあったと思います」
 「やっぱりそう思うか……」
 「でも、わたしたちの幸せも本当に考えてくれていたと思いますよ。
  …ちょっと強引なやり方でしたけど」
  シアの言葉にグレイ様も笑う。
 「そうだな」
  そのおかげで、こうしてふたり寄り添っていられる。
 「あの、グレイ様?」
  シアは自分からグレイに身を寄せた。
 「大好きです。 これからも一緒にいれてうれしい…」
  恥ずかしがりながらも愛の告白をしてくれる可愛い恋人をグレイは抱きしめる。
  潤んだ瞳が閉じられ―――。
  そっと気持ちを伝えるくちびるに、ふたりは幸せを実感していた。
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