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第一章:ギルド加入編

#18.ギルドへ帰還!そして地獄絵図

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 まだ湿ってる服を再び着て、洞窟の中を進みだす。
 奥に進むにつれ雨の音が遠ざかり、辺りが暗く……ならない。というか、壁が緑色に光っていて、しっかりと周りも少し奥の方も見える。
 近づいて見てみると、光ってるのは苔のようなものだった。
 これは何なんだろう?

 「それは光苔(ヒカリゴケ)ってんだ。明るいとこじゃ普通の苔だが、暗いとこじゃそういう風に光を発して辺りを照らしてくれるんだ」

 へぇ、そんなのがあるんだ。向こうの世界じゃそんなのは存在しなかったからなぁ……まさにファンタジーだ。
 にしても結構歩くんだな……戦闘は苦手らしいし、もしかすると奥によって身を守ってるのかも。
 なんか、昨日に続いて暗いとこばっか歩いてるな。まぁ……そこは仕方ないか。
 お、長い通路が終わるようだ。
 通路を抜けると、そこはとっても広く、高さもある空洞だった。たくさん穴もあり、おそらくそこでそれぞれのコボルトの家族が暮らしてるんだろう。
 ここまで一緒に行動していたコボルトはピョンピョンと段差を越えていき、一番上の穴へ入っていく。
 僕とヴァンは顔を見合わせ、とりあえず上の方へ行ってみることにした。
 段差を登り、たくさんのコボルトが集まってる穴を覗いてみる。
 うん、コボルトばっか見えて奥が見えない。肝心の女王様は大丈夫なんだろうか?
 っていうか、ものすごい緊迫感だ。なんというか……期末テストの結果発表の時と似てる気がする。
 テスト結果は廊下のボードに張られ、全員の順位がまるわかり。自分はどのへんなのか……すごい気になった。
 でも今は、コボルトの女王様がちゃんと治るか……そういう緊迫感。
 あ、なんか僕までドキドキしてきた。
 ヴァンは冷静だなぁ。全然不安げな表情をしてない……と思ったけど、めっちゃ握り拳をしている!!
 毛皮の上からだからわからなかったけど、よく見ると眉間にシワを寄せている感じがする。
 そっか、ヴァンも心配なんだ。最初はモンスターは無視するか切っていくって言ってたのにね。
 突然「ワァッ」という盛り上がりが起こった。
 おそらく、女王様が治ったのだろう。よかったよかった。
 にしても、耳が痛くなるほどの歓声だ……嬉しいのがすごいよくわかる。
 ヴァンの顔も、なんというか……清々しい表情だ。
 これで、今回のクエストは終わったね。雨が止んでるといいけれど……いや、原因の女王様が治ったんなら、天気は快晴のはず。
 喜んでるコボルト達の巣を後にし、洞窟を抜けて外を確認しに行くと、懐かしく思えるほどの快晴だった。
 雨上がりだからか、ピチョンという雨雫が落ちる音が聞こえる。
 こんなに雨上がりに感動するなんて初めてだよ。とっても清々しい。
 うん、とっても気持ちがいい。

 「さ、ギルドへ帰るか。今からなら深夜までには着くだろ」

 げ、深夜!?
 うぅ……まぁ、別のクエストをやったんだし仕方ないか。
 もしコボルトを助けてなかったから雨の中を帰ることになるから、風邪をひいてたかもしれない。だけど、僕は『温度変化耐性』があるから雨で風邪をひくことはないかな?
 とにかく、早く帰ろう。

 「もう行くワン?」

 一緒に行動していたコボルトがいつの間にか後ろにいた。
 なんだか申し訳なさそうで……切なそうな表情をしている。

 「ああ、クエストは終わったんだ。それに、これは正式な依頼じゃねぇからな」
 「……ありがとう、助かったワン」
 「俺じゃなくてコイツに言え」

 コツンと僕の頭を叩いて言うヴァン。
 すると、コボルトが僕に頭を下げてお礼を言ってきた。
 なんだか……照れくさいや。

 「僕はコウジだよ。また何かあったら、教えてくれれば助けてあげるからね」

 コボルトの頭を撫でながら言うと、気持ちよさそうな表情で「クゥン」と鳴いた。やっぱり、犬型だなぁ。とっても可愛い。
 ヴァンに至っては、やれやれといった表情だ。声に出さなくてもわかる。うん、可愛くない。

 『熟練度が一定に到達……称号スキル《モンスターレスキュー》を獲得しました』

 あ、なんか新しいスキルを獲得した。称号スキルってなんぞ?ま、それはあとで聞けばいいや。帰ったらもう一回ステータス調べてもらうし。
 ……自分で調べられたら楽なのにな、ゲームみたいにステータス画面を開けるとか。
 そこはニノシルさんに聞いてみようっと。
 そしてコボルトと別れ、僕達はギルドへ向かって再び歩き出した。
 ビスコティアまで歩くのは辛いけど、この世界の空気はほんとに美味しい。向こうは車や工場の排気ガスとかで汚れてるからねー。
 地球温暖化も進んで北極だっけ?南極だっけ?の氷も溶けてるっていうしね。
 これから向こうは人類のせいで地球滅亡にならなければいいんだけど……ね。
 ヴァンとテキトーに話をしながら歩いていると、やっと街が見えてきた。しかも、空がもう赤く染まっているから、着くのは間違いなく夜だ。
 だけどもうひと頑張り。
 あれ?シールスを出たときはトレーニングとして走ったような……まぁでも、クエストで台風の中を山登りした後に走りたくはないよね。僕も今は走りたくはない。
 しかも、少しだけど腕の傷がズキズキする。ヴァンに隠しながらここまで来たけど、ほどけかけた包帯は血が染み込んでて赤くなっている。帰ったら包帯を変えないと、感染症になっちゃうかもしれない。
 こういう時は回復魔法が欲しいものだ。こう……某RPGのホイミとかケアルとか?
 やっとこさビスコティアに辿り着き、もう完全に夜だ。
 一応先にギルドに寄るらしく、僕達は夜の街を歩いていく。
 ……なんか視線を感じる。二つの感情を含めた感じがするけど、とりあえず気にしなくていいかな?別に殺気ってわけじゃないし。
 心なしか、ヴァンの歩くスピードが上がった気がする。表情も苦虫を噛みしめたような顔をしているけど……どうしたんだろね?
 ギルドに着き、ギィィという音を立てて扉を開くと安心感より先に、嫌な予感がした。
 なんだろう、この感じ?
 ヴァンは疲れた感じの深いため息を着くと、先にマスター室へ向かった。
 僕は嫌な感じがする場所を辿り、着いたのは食堂。ゆっくりと開けるとその衝撃的な光景に、全身の毛が逆立った。
 不快な匂いがする食堂、床やテーブルにひっくり返ってぐっちゃぐちゃになった食器やスープらしきモノや野菜たち。そして、死んだように倒れている仲間達。これはまさに地獄絵図だった。
 え……どうしてこんなことに?

 「マスター!シーナ!しっかりして!!……ん?」

 テーブルにうつぶせで倒れてるシーナの指元には何か書かれていた。
 スープで書いたみたいだけど……それを呼んだ瞬間、犯人と状況が完全に一致した。
 書かれていたのはバルト。おそらく、バルトの料理を食べてこうなったんだろう。
 しかし、なぜ食べたんだろうか?バルトの料理のマズさは知ってるはずなのに。そしてそのバルトがいないけど、どこへ行ったんだろうか?
 とりあえずヴァンを呼んで医務室に運ぶとするか。
 大声でヴァンを呼びつけ、この惨劇を見ると一歩後ずさった。うん、気持ちはわかるよ。
 僕はシーナを、ヴァンがマスターを医務室へ運んだ。
 ヴァンとマスターは体格が全然違うから、運びづらそうだった。
 セレナさんは仕事かな?気のいい人……もとい、獣人っぽいし、あの惨劇を見てそのままにしておくとは思わないしな……たぶん、ああなる前に出たんだろね。
 とにかく事情と仕事の報告は二人が目覚めてからだな。
 いつ起きるかはわからないし……ここはヴァンに任せてとりあえずキッチンの片づけをしておこうっと。あと、材料が残ってれば美味しいものでも作っといてあげよう。
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