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第一章:ギルド加入編

#13.狐司VSジャドー

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 え、一つになるってどゆ事?

 「お前の中に我を取り込むのだ。そうすれば、お前の能力は飛脚的にアップし我のスキルも使えるから、かなり有利に戦えるだろう」

 なるほど、そういうことか。
 ん?でもそうすると……

 「待って。そうするとグランヴァルツは……」
 「気にするな。元々、我の命は残り少ない。だが、このまま奴を残して二匹とも死ぬわけにはいかんだろう?それに、仲間を想うお前の中で生きるのも悪くはない。」

 そっか……
 たしかに、このままだと僕達は殺される。ヴァンの身体で。
 そんなのゴメンだ。
 もうグランヴァルツに会えなくはなるけど……致し方ない……か。

 「会えてよかったよ、グランヴァルツ。遅れたけど、僕は狐司」
 「ああ、我もだ」

 体格差がある僕達だけど、拳を合わせる。
 すると、その合わせた拳から光が発し、目と閉じたけどグランヴァルツが僕の中へ入っていくのを感じた。
 しばらくして目を開けるとグランヴァルツの姿はなく、今の光で目がくらんだのかうろたえている。
 少し話しただけだけど、寂しさがあった。
 でも、感じるんだ。
 僕の中でグランヴァルツが感じる。僕の中で生きている。
 そして、今までにない力を感じるんだ。
 ありがとう、グランヴァルツ……

 「お、おのれ……妙なスキルを使いおって……」
 「ここからは僕とグランヴァルツが相手だ!」
 「く……言ってろ……どちらにせよ、お前たちはここで終わりだ!!」

 ジャドーは片目を閉じて見えにくそうにしているから、チャンスだね!
 まずはどのくらい攻撃力が上がったのか試さないと。
 ジャドーの攻撃をかわして、腹部にパンチを入れる。
 すると、ジャドー……っていうかヴァンの身体が吹っ飛んで遠くの壁に叩きつけられた。
 うっわ……ものすっごい。
 これがドラゴンのグランヴァルツが加わったことで得た力……
 使い方を間違えればひどい事になりそうだ……

 「おのれ……ちょこざいな……」

 とはいっても、さすがに一発じゃ無理か……
 やりすぎると元に戻した時のヴァンの身体がひどい事になるから、うまくコントロールしないと。
 さて、行くか。
 血を蹴ってジャドーに突っ込む……はずが、あまりの脚力にジャドーを通り過ぎ、壁に激突した。しかも顔面から。
 痛い……と思ったけど、防御も上がったからか痛くなかった。
 おおう……なんかすごい身体になったなぁ……

 「クックック……自爆とはな」
 「うるさいな……まだ慣れてないんだから」

 とにかく、実践で慣らしていくしかないか。
 その間にヴァンの身体が壊れないといいけど。
 いや、壊すわけにはいかない。集中するんだ。

 「くらえ、真空壁ウィンドウォール

 風の壁が僕の周りで渦巻く。
 風でたなびいた服と毛が切り裂かれていく。
 これ、風の刃の渦だ!
 まずい、このままじゃ身体がバラバラに切り裂かれる!

 「このまま切り裂かれろ!」

 言ってくれる……なんて言ってる間に渦がどんどん迫ってるし。
 ぶっつけ本番だけどやってみるしかないな。
 右腕を上に上げると魔力のオーラがドラゴンの腕と爪になる。

 「竜の鉤爪ドラゴニッククロー!」

 それを振り下ろし、風の渦を切り裂き脱出した。

 「なんだと!?」

 ふい~……あぶないあぶない。
 改めて見るとヴァンのスキルはすっごいや。
 剣だとヴァンの身体が二つに切られちゃうかもだし、剣は使わない方がいいね。
 剣を鞘に納める。

 「このガキ……いったい何者だ!」
 「あ~……たしかにただの獣人の子供じゃないね。転生してるし、ドラゴンであるグランヴァルツをこの身に取り込んじゃってるし」

 でも、僕が僕であることに変わらない。

 「グランヴァルツの代わりにお前を倒してヴァンを助ける!この意思は変わらないけどね!」
 「ガキが……やってみろ。お前を倒せばグランヴァルツを殺したことには変わらん!」

 剣に風……いや、真空を纏って突っ込んでくる。けど、さっきまでと違って動きが単調だから簡単に避けられる。
 焦ってる?
 そりゃ、誰だって弱かった奴がいきなり目の前で強くなったら焦りが出る。
 でも、頭には少し冷静さが残ってるらしく、足に風を纏って素早さを上げてきた。
 っていうか、どんどん速くなってきてる!?
 やば、眼で追えなくなってきてる……
 そういえばたしか、前世の漫画のバトルで、目ではなく、気配で追うのがあったな。
 よし。
 眼を閉じ、集中する。
 しだいに奴の気配が感じるようになってきた。
 ……そこだ!
 竜の鉤爪ドラゴニッククローを放つと、剣で受け止められた。
 よく見ると腕にも風を纏っている。
 それ、まだスピードが上がるってことかな……スピードが上がるってことは攻撃力も上がるってことじゃん!
 うぅ……どうするか……ただでさえヴァンの身体を傷つけないためのハンデがあるのに。

 「どうした?さっきまでの気合が小さく見えるが?」
 「うるさいな。絶対にお前を倒してその身体を取り戻すんだから!!」
 さて、やる気は取り戻したけど、素早さはあっちが上だし……どうするか。
 あれ、なんか振り返って走り出したよ?
 あっちは出口……まさか街に!?
 僕も追いかける。
 くっそ、いったいどのくらい離されてるんだろ。
 早くしないとヴァンの身体で災害なんてとんでもない!
 って、もう出ちゃったし!
 やばいやばい、完全に見失った!!
 とにかく走ってしらみつぶしで探すっきゃない!
 街へ入り、ぶつからないように走る。
 屋根へ跳んだりして探すけど、影すら見当たらない。
 くっそ、どこへ消えた?
 考えろ考えろ……僕が奴だったら……そうだ!

 「あら、タク……じゃなくてコウジじゃない。こんなとこでどうしたのよ?」

 後ろから声がして振り返るとシルフィーがいた。

 「シルフィー!この街で一番高いとこはどこ!?」
 「え、え、なによいきなり……」
 「早く答えて!!」
 「え、えっと……グリドルの塔だけど……ほら、あれ」

 シルフィーが指さした先にはたしかに塔があって、一番高そうだ。

 「ちょ、ちょっといったい何が……ってはや!」

 シルフィーが何か言ってたみたいだけどそれどころではない。
 奴がヴァンの身体で何かしでかす前に倒さないと!
 そのためには奴を身体から追い出す必要がある。
 一つあるけど、それはまともに打撃を当てるのが絶対条件だしなぁ……一瞬でも隙があればいいんだけど。
 塔の前に着くと、いろんな獣人が数人倒れていた。遅かったか。
 塔の中に入ると、階段が螺旋状に上まで伸びていて、上を見上げるとでかい何かが落ちてくる。
 あれは獣人!?
 なんとかキャッチして生死を確認する。
 うん、生きてる。よかった……どうやら気絶してるだけみたいだ。
 再び上を見上げると、ヴァンが邪悪そうな笑顔でこっちを見ているのが見えた。
 野郎……絶対に許さない!
 落ちてきた被害者である獣人を壁側で寝かせ、階段を駆け上がって奴の元へと急ぐ。
 頂上の扉を開けて外に出ると、奴が子供の獣人を抱えていた。つまり人質……いや、獣人質だ。今にも泣きそうな表情でこっちを見ている。
 見た感じ、さっき落ちてきた獣人の子供のようだ。

 「よくここがわかったじゃねぇか?」
 「そんなことより、その子は関係ないでしょ?放してよ!」
 「ああ?命令できる立場じゃねぇの理解してねぇのか?」

 このゲスが…… 今どきの魔王だって人質しないってのに。
 とにかく、今わかるのは……
 
 「なに?こんな子供相手に人質しなきゃならないほど勝つ自信ないの?」
 「ああ?んなわけ」
 「うわ、だっさい。しかも自分の力じゃなくて他人の力のみだもんねぇ」
 「んだとテメェ!!」

 あ、子供を投げた!!てか、落ちる!!
 僕は走り出して空中へ投げ出された子供を助けようとする。
 塔から落ちる中、何とかキャッチして竜の鉤爪ドラゴニッククローを壁にひっかけ、落下を止めた。
 ふぅ……ちょっと塔を削っちゃったけど、よかった。
 泣きわめく子供を抱えながら下へ降りて再び塔へ入る。
 子供は気絶していた獣人の元へ行き、お父さんと泣き叫んだ。
 やっぱり親子だったんだ。
 子供が涙目で僕を見てきたから、僕は優しく頭を撫でてあげた。
 再び階段を駆け上がり、扉を開けた瞬間、剣先が僕をめがけて伸びてきた。
 とっさに身体を後ろに曲げてかわしたけど、剣の側面がマズルで伸びた鼻をかすった。
 うおぉ……危ないな!刃が下側にあったら鼻が切れてたじゃん!
 心臓がバクバクいってるよ。

 「チ……かわしやがったか」
 「ちょ、不意打ちなんてズルくない!?」
 「テメェを殺す気なんだからズルいもへったくりもねぇよ」

 うわ、なんて奴だ。
 とにかく、今ここでコイツを倒さないと!!
 街に迷惑かけたくなかったけど……第二ラウンド開戦だ!
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