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クウガのけじめと日本神話
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「がおぉぉぉっ!!」
クウガの雄叫びが空彼方へと鳴り響く。
「これで此奴らの部下達も引き返すはずだ。」
クウガは、獣人族達の手当てを受けながら言った。そして、凍傷で痺れる腕を息で温めると何かを思い出すかの様に目を瞑った。
25年前 東蒼の里近くの河川敷
幼きクウガは、鮭取りに夢中になって、いつの間にか人里まで下りてしまっていた。
「おい、早く人を集めろ。あれは、フォレストベアーだ。子供だからって油断するな。」
東蒼の兵士達がクウガを見つけ、続々と集まってくる。騒々しい空気にようやくクウガが自分の状況に気付く。初めて見る人族の群れ。最初は、何故人族が自分を見ているのか理解できなかった。だが、
「あいつが成長したら大きな災害になる。今のうちに殺した方が良い。」
そう言って、武器を構える兵士達の殺意に恐怖と共に怒りが込み上げてきた。自分が何をしたというのだ。
「グルルルっ」
クウガは、唸りをあげ、毛を逆立てるが、自分と同じ位の人族が怯む事はなく、武器を向けてくる。一方的に殺意を向ける人族達の姿に死の恐怖が徐々にクウガの身体を支配していく。いつも守ってくれる親はいない。威勢が怯えに変わり、威嚇が震えに変わる。その時だった。
「怖がらないで、大丈夫。」
そう言って、怯えるクウガに優しく触れる少女。
「どうして、姫様があんなところに??」
「姫様、危ないです。逃げて下さい。」
慌てる兵士達と対照的に微笑む少女にクウガの恐怖は薄れていく。
「私の言葉は分かるかしら。…あの人達もね、怖いのよ。あなたの事が分からないから。でも、安心して。私が側にいたら攻撃してこないから。」
自分の心を見透かすかの様な少女の言葉に心は、落ち着きを取り戻し、同時に身体は少女に逆らえなくなっていた。
「がおぉぉぉ。」
対岸から聞こえる父親の声にクウガが反応する。
「家族が迎えに来てくれたのね。でも、あなたの家族がここに来たら大変な事になっちゃう。ねえ、あなた。私を乗せて対岸まで行ける?」
少女にそう言われ、クウガは、言われるがまま少女を背に乗せると対岸へと進み始めた。獣族が人族を背に乗せる。その異様な光景に何処からか
「……あれは、神話の…」
と呟く声が聞こえる。目を疑う光景だったが、一国の姫が獣族に攫われたという現実に戻ると兵士達は、慌てて川に入り、クウガと少女を追った。だが、川の流れが早い。獣族の様な強靭な足腰をもたない人族では、なかなか進む事ができない。兵士達がもたついているうちにクウガと少女は、悠々と対岸へと辿り着いた。
「そこで止まれ。」
クウガが対岸に着くと直ぐに森の奥から声がした。姿は見えない。だが、クウガは、その声に従って止まると少女を背から降ろした。
「人の仔よ。我が仔を庇ってくれた事、感謝する。だが、其方は、人族。我らは、獣族だ。相容れぬ存在である以上、此処より先に進ませるわけには行かぬ。其方は、そこで迎えを待つのだ。我が仔よ、森に戻るぞ。」
クウガは、その言葉に逆らう事ができず、ゆっくりと森の中に入っていった。徐々に森へと消えていくクウガに少女は、声をかけようとしたが、森の奥から感じる威圧がそれを許してくれなかった。俯く少女。そんな少女の姿を見る事もできず、クウガは、複雑な感情を抱いたまま森の奥へと消えた。
「永遠よ、事は急ぐのであろう。ワシの背に乗れ。」
クウガの言葉に獣人族達が耳を疑う。
「何を言っているのですか、クウガ様。偉大なる森の王が人族を背に乗せるなど聞いた事がありません。」
クウガを窘(たしな)める獣人族に対してクウガは、
「よいのだ。ワシは、此奴に負けた。強者が敗者の上に立つのは、当たり前であろう。それにな。ワシは、既に人族を背に乗せた事があるのだ。その娘は、気丈に、そして、優しくワシに接していたが、その手は常に震えていた。本当は怖かったのだろう。だが、ワシを救う為にその手を決して離さなかった。ワシは、力ではない、その信念と勇気に負かされたのだ。此奴の手助けをするのも、そして、背に乗せるのもワシのけじめだ。許せ、お前達。」
と言って、頭(こうべ)を垂れた。威厳を顧(かえり)みないクウガの姿に獣人族達は、首を振ると
「分かりました。クウガ様がお決めになったのでしたら、我らは、もう何も言いませぬ。御気の済むままになさいませ。」
と答えた。その言葉にクウガは、頷くとオレを背に乗せ、砦へと走り出した。
水帝の砦
「永遠様…」
撫子が桜の側で永遠の無事を祈っていると朱李が慌てて近寄ってきた。
「撫子さん、ブラックフォレストベアーがこっちに向かって来ます。早く隠れて下さい。」
朱李の言葉に最悪の結末が過ぎった撫子は、
「嘘でしょ…永遠様。」
と言って、朱李の制止を振り切って、その場を離れた。信じられない気持ちで一心不乱に走る。だが、直ぐにその足が止まる。
「危ない!撫子さん、逃げて!!」
後ろから朱李の叫び声が聞こえる。心が張り裂けそうになる撫子の目に映ったのは、自分を見下ろすブラックフォレストベアーの姿だった。
「美味そうな、雌だな。」
圧倒的な強者。更に永遠を失ったかもしれない絶望感に言葉を失い、膝をつく撫子。
「おい、オレの家族に手を出したら切るって言ったよな。」
「・・・・!とわさま?」
ブラックフォレストベアーの後ろから聞こえる永遠の声に撫子の目に光が戻る。
「?何だ。この雌は、人獣だぞ。」
「だから何だ。彼女は、オレの奥さんだ。次に手を出そうとしたら、絶対に切るからな。」
「分かった。分かったから、その剣を納めろ。」
クウガは、そう言うとオレを背から降ろした。オレは、地面に降りると
「撫子、大丈夫か?」
と言って、撫子に手を伸ばした。獣族と行動を共にしている永遠の姿に何が起こっているのか分からなかったが、撫子は、急に立ち上がると
「永遠様のばかぁ!いっぱい、いっぱい心配させて…」
と言って、オレの胸を叩いた。そして、大粒の涙を流すと
「…うぇぇん。もう何処にも行かないって言ったのに…ホントにバカぁ…」
と言って、もう離さないと言わんばかりに強く、強くオレを抱きしめた。朱李の言葉が頭を過ぎる。オレは、優しく撫子の頭を撫でると
「ごめんな、撫子。いつも心配かけて。」
と言って、抱きしめ返した。余程心配したのか撫子は、なかなか離してくれない。それを見かねてクウガがオレの頭を触る。
「永遠よ、再会を喜ぶのは良いが、先を急ぐのではなかったか?」
クウガの言葉にオレが撫子を落ち着かせているとようやく桜が目を覚ました。
「うーん、なぁちゃん・・・」
寝ぼけながら、開いたら桜の眼に映ったのは、新たな巨躯の獣族だった。信じられない光景に桜から
「えっ!?何??どうなってるの??」
と心の声が漏れ出てしまう。最悪な目覚めになった桜だったが、永遠や撫子の姿を見つけると緊迫した状況ではない事にほっとし、心を落ち着かせた。そして、目の前で棒立ちになっている朱李に近寄ると
「朱李ちゃん、何がどうなってるの?」
と聞いた。だが、桜の言葉は朱李の耳に届かない。棒立ちでクウガと永遠を見つめる朱李は
「…金太郎様。」
と呟いて、目を輝かせていた。桜は、ため息をつくと
「ねぇ、朱李ちゃん。」
と改めて声をかけた。その言葉で桜に気づいた朱李は、急に振り返り、桜の両肩を掴んで押し倒すと
「桜!永遠様って金太郎様の子孫なの?」
と聞いてきた。朱李の興奮した様子に圧倒された桜が
「き、金太郎様?あの日本神話の?」
と返すと朱李は更に興奮して
「そう。あの強くて優しい金太郎様。森の王熊を従えて、悪党を懲らしめる全国行脚をした。『この鉞(まさかり)が目に入らぬか』の金太郎様よ。」
と答えた。朱李の興奮がおさまらない。桜は、朱李から目を逸らすと
「うーん、永遠ちゃんは、金太郎様の子孫では無いかな。」
と答えたが、朱李は、首を振ると
「うんうん、絶対に金太郎様の子孫よ。」
と言って、納得しなかった。朱李の目は、ギラギラして、息が荒い。
「貴方達、何してるのよ。」
ようやく落ち着いた撫子が桜達に声をかける。
「助けて、なぁちゃん。」
寝起きで服の乱れた桜に興奮した朱李が覆いかぶさる様に跨(またが)っている。
「朱李。貴方って…いえ、人の癖(へき)をどうこうは言わないわ。男性も女性も愛せる人がいるって聞いた事あるし。でもね、朱李。桜も永遠様の妻なの。流石に異性に妻を寝取られたら…。」
撫子の話は続いているが、朱李の耳には届いていない様だ。
「なぁ、永遠よ。」
クウガがため息混じりに聞いてくる。
「彼女もオレの奥さんだ。もう1人は、オレの従者だから手を出すなよ。それと今、準備させるから門の所で待っててくれ。」
オレの言葉にクウガは、腕を振りながら急げよと合図をして、入り口前で待つ獣人族達の所へと向かった。
「朱李、そろそろ桜から離れてくれ。クウガが蓮華の救出を助けてくれる事になったんだ。直ぐに準備をしてくれ。」
「クウガ…救出の手助け…」
朱李は、オレの言葉にそう呟くと
「あのブラックフォレストベアーが永遠様に従って、蓮華さんを助けに行く。まさに…分かりました。直ぐに準備致します。金太郎様。」
と言って、意気揚々に準備を始めた。
「金太郎様?」
朱李の意味不明な言動に困惑したが、オレは、朱李に押し倒された桜を抱き起こすと
「大丈夫か?桜。」
と言って、桜の無事を確認した。桜は、頷くと何かを噛み締める様にオレに抱きついた。
クウガの雄叫びが空彼方へと鳴り響く。
「これで此奴らの部下達も引き返すはずだ。」
クウガは、獣人族達の手当てを受けながら言った。そして、凍傷で痺れる腕を息で温めると何かを思い出すかの様に目を瞑った。
25年前 東蒼の里近くの河川敷
幼きクウガは、鮭取りに夢中になって、いつの間にか人里まで下りてしまっていた。
「おい、早く人を集めろ。あれは、フォレストベアーだ。子供だからって油断するな。」
東蒼の兵士達がクウガを見つけ、続々と集まってくる。騒々しい空気にようやくクウガが自分の状況に気付く。初めて見る人族の群れ。最初は、何故人族が自分を見ているのか理解できなかった。だが、
「あいつが成長したら大きな災害になる。今のうちに殺した方が良い。」
そう言って、武器を構える兵士達の殺意に恐怖と共に怒りが込み上げてきた。自分が何をしたというのだ。
「グルルルっ」
クウガは、唸りをあげ、毛を逆立てるが、自分と同じ位の人族が怯む事はなく、武器を向けてくる。一方的に殺意を向ける人族達の姿に死の恐怖が徐々にクウガの身体を支配していく。いつも守ってくれる親はいない。威勢が怯えに変わり、威嚇が震えに変わる。その時だった。
「怖がらないで、大丈夫。」
そう言って、怯えるクウガに優しく触れる少女。
「どうして、姫様があんなところに??」
「姫様、危ないです。逃げて下さい。」
慌てる兵士達と対照的に微笑む少女にクウガの恐怖は薄れていく。
「私の言葉は分かるかしら。…あの人達もね、怖いのよ。あなたの事が分からないから。でも、安心して。私が側にいたら攻撃してこないから。」
自分の心を見透かすかの様な少女の言葉に心は、落ち着きを取り戻し、同時に身体は少女に逆らえなくなっていた。
「がおぉぉぉ。」
対岸から聞こえる父親の声にクウガが反応する。
「家族が迎えに来てくれたのね。でも、あなたの家族がここに来たら大変な事になっちゃう。ねえ、あなた。私を乗せて対岸まで行ける?」
少女にそう言われ、クウガは、言われるがまま少女を背に乗せると対岸へと進み始めた。獣族が人族を背に乗せる。その異様な光景に何処からか
「……あれは、神話の…」
と呟く声が聞こえる。目を疑う光景だったが、一国の姫が獣族に攫われたという現実に戻ると兵士達は、慌てて川に入り、クウガと少女を追った。だが、川の流れが早い。獣族の様な強靭な足腰をもたない人族では、なかなか進む事ができない。兵士達がもたついているうちにクウガと少女は、悠々と対岸へと辿り着いた。
「そこで止まれ。」
クウガが対岸に着くと直ぐに森の奥から声がした。姿は見えない。だが、クウガは、その声に従って止まると少女を背から降ろした。
「人の仔よ。我が仔を庇ってくれた事、感謝する。だが、其方は、人族。我らは、獣族だ。相容れぬ存在である以上、此処より先に進ませるわけには行かぬ。其方は、そこで迎えを待つのだ。我が仔よ、森に戻るぞ。」
クウガは、その言葉に逆らう事ができず、ゆっくりと森の中に入っていった。徐々に森へと消えていくクウガに少女は、声をかけようとしたが、森の奥から感じる威圧がそれを許してくれなかった。俯く少女。そんな少女の姿を見る事もできず、クウガは、複雑な感情を抱いたまま森の奥へと消えた。
「永遠よ、事は急ぐのであろう。ワシの背に乗れ。」
クウガの言葉に獣人族達が耳を疑う。
「何を言っているのですか、クウガ様。偉大なる森の王が人族を背に乗せるなど聞いた事がありません。」
クウガを窘(たしな)める獣人族に対してクウガは、
「よいのだ。ワシは、此奴に負けた。強者が敗者の上に立つのは、当たり前であろう。それにな。ワシは、既に人族を背に乗せた事があるのだ。その娘は、気丈に、そして、優しくワシに接していたが、その手は常に震えていた。本当は怖かったのだろう。だが、ワシを救う為にその手を決して離さなかった。ワシは、力ではない、その信念と勇気に負かされたのだ。此奴の手助けをするのも、そして、背に乗せるのもワシのけじめだ。許せ、お前達。」
と言って、頭(こうべ)を垂れた。威厳を顧(かえり)みないクウガの姿に獣人族達は、首を振ると
「分かりました。クウガ様がお決めになったのでしたら、我らは、もう何も言いませぬ。御気の済むままになさいませ。」
と答えた。その言葉にクウガは、頷くとオレを背に乗せ、砦へと走り出した。
水帝の砦
「永遠様…」
撫子が桜の側で永遠の無事を祈っていると朱李が慌てて近寄ってきた。
「撫子さん、ブラックフォレストベアーがこっちに向かって来ます。早く隠れて下さい。」
朱李の言葉に最悪の結末が過ぎった撫子は、
「嘘でしょ…永遠様。」
と言って、朱李の制止を振り切って、その場を離れた。信じられない気持ちで一心不乱に走る。だが、直ぐにその足が止まる。
「危ない!撫子さん、逃げて!!」
後ろから朱李の叫び声が聞こえる。心が張り裂けそうになる撫子の目に映ったのは、自分を見下ろすブラックフォレストベアーの姿だった。
「美味そうな、雌だな。」
圧倒的な強者。更に永遠を失ったかもしれない絶望感に言葉を失い、膝をつく撫子。
「おい、オレの家族に手を出したら切るって言ったよな。」
「・・・・!とわさま?」
ブラックフォレストベアーの後ろから聞こえる永遠の声に撫子の目に光が戻る。
「?何だ。この雌は、人獣だぞ。」
「だから何だ。彼女は、オレの奥さんだ。次に手を出そうとしたら、絶対に切るからな。」
「分かった。分かったから、その剣を納めろ。」
クウガは、そう言うとオレを背から降ろした。オレは、地面に降りると
「撫子、大丈夫か?」
と言って、撫子に手を伸ばした。獣族と行動を共にしている永遠の姿に何が起こっているのか分からなかったが、撫子は、急に立ち上がると
「永遠様のばかぁ!いっぱい、いっぱい心配させて…」
と言って、オレの胸を叩いた。そして、大粒の涙を流すと
「…うぇぇん。もう何処にも行かないって言ったのに…ホントにバカぁ…」
と言って、もう離さないと言わんばかりに強く、強くオレを抱きしめた。朱李の言葉が頭を過ぎる。オレは、優しく撫子の頭を撫でると
「ごめんな、撫子。いつも心配かけて。」
と言って、抱きしめ返した。余程心配したのか撫子は、なかなか離してくれない。それを見かねてクウガがオレの頭を触る。
「永遠よ、再会を喜ぶのは良いが、先を急ぐのではなかったか?」
クウガの言葉にオレが撫子を落ち着かせているとようやく桜が目を覚ました。
「うーん、なぁちゃん・・・」
寝ぼけながら、開いたら桜の眼に映ったのは、新たな巨躯の獣族だった。信じられない光景に桜から
「えっ!?何??どうなってるの??」
と心の声が漏れ出てしまう。最悪な目覚めになった桜だったが、永遠や撫子の姿を見つけると緊迫した状況ではない事にほっとし、心を落ち着かせた。そして、目の前で棒立ちになっている朱李に近寄ると
「朱李ちゃん、何がどうなってるの?」
と聞いた。だが、桜の言葉は朱李の耳に届かない。棒立ちでクウガと永遠を見つめる朱李は
「…金太郎様。」
と呟いて、目を輝かせていた。桜は、ため息をつくと
「ねぇ、朱李ちゃん。」
と改めて声をかけた。その言葉で桜に気づいた朱李は、急に振り返り、桜の両肩を掴んで押し倒すと
「桜!永遠様って金太郎様の子孫なの?」
と聞いてきた。朱李の興奮した様子に圧倒された桜が
「き、金太郎様?あの日本神話の?」
と返すと朱李は更に興奮して
「そう。あの強くて優しい金太郎様。森の王熊を従えて、悪党を懲らしめる全国行脚をした。『この鉞(まさかり)が目に入らぬか』の金太郎様よ。」
と答えた。朱李の興奮がおさまらない。桜は、朱李から目を逸らすと
「うーん、永遠ちゃんは、金太郎様の子孫では無いかな。」
と答えたが、朱李は、首を振ると
「うんうん、絶対に金太郎様の子孫よ。」
と言って、納得しなかった。朱李の目は、ギラギラして、息が荒い。
「貴方達、何してるのよ。」
ようやく落ち着いた撫子が桜達に声をかける。
「助けて、なぁちゃん。」
寝起きで服の乱れた桜に興奮した朱李が覆いかぶさる様に跨(またが)っている。
「朱李。貴方って…いえ、人の癖(へき)をどうこうは言わないわ。男性も女性も愛せる人がいるって聞いた事あるし。でもね、朱李。桜も永遠様の妻なの。流石に異性に妻を寝取られたら…。」
撫子の話は続いているが、朱李の耳には届いていない様だ。
「なぁ、永遠よ。」
クウガがため息混じりに聞いてくる。
「彼女もオレの奥さんだ。もう1人は、オレの従者だから手を出すなよ。それと今、準備させるから門の所で待っててくれ。」
オレの言葉にクウガは、腕を振りながら急げよと合図をして、入り口前で待つ獣人族達の所へと向かった。
「朱李、そろそろ桜から離れてくれ。クウガが蓮華の救出を助けてくれる事になったんだ。直ぐに準備をしてくれ。」
「クウガ…救出の手助け…」
朱李は、オレの言葉にそう呟くと
「あのブラックフォレストベアーが永遠様に従って、蓮華さんを助けに行く。まさに…分かりました。直ぐに準備致します。金太郎様。」
と言って、意気揚々に準備を始めた。
「金太郎様?」
朱李の意味不明な言動に困惑したが、オレは、朱李に押し倒された桜を抱き起こすと
「大丈夫か?桜。」
と言って、桜の無事を確認した。桜は、頷くと何かを噛み締める様にオレに抱きついた。
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