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神殺しの人形
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一方的な攻撃が止み、安心したのも束の間。再び、精霊が輝き出す。オレは、精霊に剣を向けたまま動向を伺う。
(私に剣を向けるなんて殺されたいのかしら。神殺しの人形さん。)
『神殺しの人形?』
先程とは、違う声。だが、明らかにオレ達を威圧している。
(お前は、誰だ。さっきの精霊じゃないのか?それに神殺しの人形ってなんだ。)
精霊が小刻みに揺れる。
(ふふふっ。あなたも自分が何者か分かってないのね。あの娘と一緒…。そう言えば、まだ名乗っていなかったわね。私は、リリアナ。自然神と言ったら分かるかしら。)
リリアナの名前に撫子達は、すでに平伏(ひれふ)し、怯えている。
『自然神リリアナ!?まずい。一番敵対したくない神に剣を向けてしまった。』
(聞こえているわよ。)
リリアナがオレの考えている事を察知して答える。
(本当に面倒よね。念話(ねんわ)って。考えるだけで会話になる事があるから。だけど、安心しなさい。あなたと敵対するつもりはないから。それにこの風精霊(こ)じゃ、あなたに勝てないだろうし。)
リリアナの言葉にオレは、焦りを隠しつつ剣を納めたが、撫子達は、まだ平伏している。
(あの娘達は、萎縮しちゃってるわね。悪い事しちゃったかしら。その点、あなたは流石ね。神殺しの人形さん。)
オレは、撫子達を一度見るとリリアナに頭を下げて
(先ずは、リリアナ様に剣を向けた事を謝罪致します。申し訳ありませんでした。ですが、リリアナ様は、どうして此処に?いえ、そもそもその精霊は、リリアナ様なのですか?)
と尋ねた。リリアナは、オレの周りをぐるぐると回ると
(ふ~ん、本当に知らないのね。この風精霊(こ)は、私の分身だから、私と言えば私なのかしら。普段は、この精霊(こ)達に任せているんだけど、今回みたいな時には、本体の私と繋ぐの。うーん、なんて言ったらいいんだろう。オリバー君の神代共鳴技法だっけ?あれみたいなものだよ。私の本体ってもう動けないからね。)
と答えた。
『動けない?どういう事だろう?』
(それは来たら分かるわ。いつか機会があったら来なさい。世界樹の森に)
オレの考える事に答えるリリアナ。何かボロが出ない様にリリアナとの会話に集中した方が良さそうだ。
(それはそうと私ね、あなたに会いに来たの。)
(オレにですか?)
(そうよ。あなた、私の水精霊(スライム)食べたでしょ。)
リリアナの言葉に洞窟での事を思い出す。
(あっ、すみません。あれは不可抗力というか…)
オレの弁明にリリアナは、
(あはは、食べた事はいいのよ。あの娘との約束だったしね。本当は、あそこの水精霊と繋がって、あの娘の大切な人って言うあなたに会いたかったんだけど、あの娘の血のせいなのかな?あれからあそこの水精霊と繋げなくなったのよね。それで気になってたの。もしかして最後の1人かなって。)
と答えた。そして、またオレの周りぐるぐると回ると
(でも、零神子(オリジン)は…感じないわね。やっぱり、あなたも人形か。ほんと誰があなた達を造ったんだか……。)
と呟き加えた。
(リリアナ様。零神子とは何ですか?)
オレが更に尋ねるとリリアナは、
(あぁ、ごめん、ごめん。今のは、忘れて。それより、あなた達の主人って分かる。)
と返してきた。
(主人ですか?……どう答えたらいいか分からないのですが。)
オレの答えにリリアナは、
(そうだよね。あの娘も知らなかったみたいだし。)
と諦めた様に返した。そして、
(さてと、あなたには会えたし、私は、戻ろうかな。)
と言って、去ろうとした。
(ちょっと待ってください、リリアナ様。最後に教えて下さい。神殺しの人形って何ですか?それにあの娘って…もしかしてタノガミ ミクですか?)
オレは、消えようとするリリアナを引き止めると、気になっていた問いをぶつけた。リリアナは、輝きを戻すと
(タノガミ ミク?あの娘、そんな名だったかしら?ずっと前の事だから忘れちゃったよ。ただ、あの狂竜、リアムの奴を倒した娘だよ。そういえば、巷では竜の巫女なんて呼ばれてたっけ。でも、あの能力…あれは、竜の巫女なんかで称されるものじゃない。あの娘は、神が神を殺す為に神の能力を写し造った存在。知っているだろうけど、神約によって、創造神は、創造神を殺せないからね。別にあなた達に悪意をもっている訳じゃないけど、私達にとって、あなた達は、神殺しの人形、それ以外の形容はないわ。)
と返した。オレ達兄妹を人殺し呼ばわりされている様で心に刺さるものがあったが、オレは、続けてリリアナに尋ねる。
(リリアナ様は、その娘が今どこにいるか知りませんか?)
オレの問いにリリアナは、少し考えると
(あの娘の居場所か…あの時から会ってないから分からないけど、おそらくフレイヴェールじゃないかな。ソフィアちゃんと一緒にいたし。でも、あそこってソフィアちゃんの結界があるし、私でも特定できないんだよね。)
と答えた。
『フレイヴェールは、リリアナ様でも分からない場所なのか』
(しょうがないでしょ。私は、オリバー君と違って全てを知る者じゃないんだから。)
オレの考えを察してリリアナが反論する。オレは、慌てて頭を下げると
(すみません。そんなつもりはなくて。寧ろ色々と教えて下さり、ありがとうございます。)
と感謝を述べた。リリアナは、オレの目の前に浮かぶと
(まあ、いいわ。あの娘には、世話になったし、今回の件も含めて許してあげる。それじゃあ、私は、本体に戻るけど、此処の始末は、この風精霊(こ)と一緒によろしくね。)
と言って、再び沈黙した。
(私に剣を向けるなんて殺されたいのかしら。神殺しの人形さん。)
『神殺しの人形?』
先程とは、違う声。だが、明らかにオレ達を威圧している。
(お前は、誰だ。さっきの精霊じゃないのか?それに神殺しの人形ってなんだ。)
精霊が小刻みに揺れる。
(ふふふっ。あなたも自分が何者か分かってないのね。あの娘と一緒…。そう言えば、まだ名乗っていなかったわね。私は、リリアナ。自然神と言ったら分かるかしら。)
リリアナの名前に撫子達は、すでに平伏(ひれふ)し、怯えている。
『自然神リリアナ!?まずい。一番敵対したくない神に剣を向けてしまった。』
(聞こえているわよ。)
リリアナがオレの考えている事を察知して答える。
(本当に面倒よね。念話(ねんわ)って。考えるだけで会話になる事があるから。だけど、安心しなさい。あなたと敵対するつもりはないから。それにこの風精霊(こ)じゃ、あなたに勝てないだろうし。)
リリアナの言葉にオレは、焦りを隠しつつ剣を納めたが、撫子達は、まだ平伏している。
(あの娘達は、萎縮しちゃってるわね。悪い事しちゃったかしら。その点、あなたは流石ね。神殺しの人形さん。)
オレは、撫子達を一度見るとリリアナに頭を下げて
(先ずは、リリアナ様に剣を向けた事を謝罪致します。申し訳ありませんでした。ですが、リリアナ様は、どうして此処に?いえ、そもそもその精霊は、リリアナ様なのですか?)
と尋ねた。リリアナは、オレの周りをぐるぐると回ると
(ふ~ん、本当に知らないのね。この風精霊(こ)は、私の分身だから、私と言えば私なのかしら。普段は、この精霊(こ)達に任せているんだけど、今回みたいな時には、本体の私と繋ぐの。うーん、なんて言ったらいいんだろう。オリバー君の神代共鳴技法だっけ?あれみたいなものだよ。私の本体ってもう動けないからね。)
と答えた。
『動けない?どういう事だろう?』
(それは来たら分かるわ。いつか機会があったら来なさい。世界樹の森に)
オレの考える事に答えるリリアナ。何かボロが出ない様にリリアナとの会話に集中した方が良さそうだ。
(それはそうと私ね、あなたに会いに来たの。)
(オレにですか?)
(そうよ。あなた、私の水精霊(スライム)食べたでしょ。)
リリアナの言葉に洞窟での事を思い出す。
(あっ、すみません。あれは不可抗力というか…)
オレの弁明にリリアナは、
(あはは、食べた事はいいのよ。あの娘との約束だったしね。本当は、あそこの水精霊と繋がって、あの娘の大切な人って言うあなたに会いたかったんだけど、あの娘の血のせいなのかな?あれからあそこの水精霊と繋げなくなったのよね。それで気になってたの。もしかして最後の1人かなって。)
と答えた。そして、またオレの周りぐるぐると回ると
(でも、零神子(オリジン)は…感じないわね。やっぱり、あなたも人形か。ほんと誰があなた達を造ったんだか……。)
と呟き加えた。
(リリアナ様。零神子とは何ですか?)
オレが更に尋ねるとリリアナは、
(あぁ、ごめん、ごめん。今のは、忘れて。それより、あなた達の主人って分かる。)
と返してきた。
(主人ですか?……どう答えたらいいか分からないのですが。)
オレの答えにリリアナは、
(そうだよね。あの娘も知らなかったみたいだし。)
と諦めた様に返した。そして、
(さてと、あなたには会えたし、私は、戻ろうかな。)
と言って、去ろうとした。
(ちょっと待ってください、リリアナ様。最後に教えて下さい。神殺しの人形って何ですか?それにあの娘って…もしかしてタノガミ ミクですか?)
オレは、消えようとするリリアナを引き止めると、気になっていた問いをぶつけた。リリアナは、輝きを戻すと
(タノガミ ミク?あの娘、そんな名だったかしら?ずっと前の事だから忘れちゃったよ。ただ、あの狂竜、リアムの奴を倒した娘だよ。そういえば、巷では竜の巫女なんて呼ばれてたっけ。でも、あの能力…あれは、竜の巫女なんかで称されるものじゃない。あの娘は、神が神を殺す為に神の能力を写し造った存在。知っているだろうけど、神約によって、創造神は、創造神を殺せないからね。別にあなた達に悪意をもっている訳じゃないけど、私達にとって、あなた達は、神殺しの人形、それ以外の形容はないわ。)
と返した。オレ達兄妹を人殺し呼ばわりされている様で心に刺さるものがあったが、オレは、続けてリリアナに尋ねる。
(リリアナ様は、その娘が今どこにいるか知りませんか?)
オレの問いにリリアナは、少し考えると
(あの娘の居場所か…あの時から会ってないから分からないけど、おそらくフレイヴェールじゃないかな。ソフィアちゃんと一緒にいたし。でも、あそこってソフィアちゃんの結界があるし、私でも特定できないんだよね。)
と答えた。
『フレイヴェールは、リリアナ様でも分からない場所なのか』
(しょうがないでしょ。私は、オリバー君と違って全てを知る者じゃないんだから。)
オレの考えを察してリリアナが反論する。オレは、慌てて頭を下げると
(すみません。そんなつもりはなくて。寧ろ色々と教えて下さり、ありがとうございます。)
と感謝を述べた。リリアナは、オレの目の前に浮かぶと
(まあ、いいわ。あの娘には、世話になったし、今回の件も含めて許してあげる。それじゃあ、私は、本体に戻るけど、此処の始末は、この風精霊(こ)と一緒によろしくね。)
と言って、再び沈黙した。
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