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九尾の母乳
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「なっ、なぁちゃん。何するのっ」
撫子に突然胸を触られ、桜が戸惑う。だが、撫子の視線は真面目だ。
「桜、あなた前に言っていたわよね。気持ちが昂(たか)ぶると出ることがあるって。」
撫子の言葉に桜が何かを思い出して顔を赤らめる。
「な、ななっ何言ってるの。なぁちゃん。あれは、永遠ちゃんとしてた時にたまたま出ただけで。いつも出るわけじゃないし。そ、それに出たからって…」
桜が胸を隠して慌てるが、撫子の表情は、変わらない。
「桜は、忘れたの。12年前の事。」
撫子の言葉で桜に昔の記憶が甦(よみがえ)ってくる。そして、その記憶から、これから永遠に行う行為を想像して更に顔を真っ赤に染めた。
12年前 人孤の里
(バタバタバタバタッ)
稲荷神殿を急ぎ駆ける足音。
「不知火、不知火。何処だ。」
襖を開けながら長門の声が響き渡る。
「何よ、騒がしいわね。私は、此処よ。」
長門の呼び掛けに奥の部屋から不知火が答える。長門が奥の襖を荒々しく足で開けるとそこには、巫(かんなぎ)の仕事を終え、着替え途中の不知火がいた。
「ちょっと何入ってきてんのよ。此処には、入らない様に言ったわよね。」
着替えを覗かれ、怒る不知火の目に入ったのは、苦しそうな表情で体を痙攣させる娘達を抱き抱えた長門の姿だった。不知火は、撫子達の弱りきった姿に服を乱したまま近づき、
「撫子、桜。一体どうしたの。」
と言って、瀕死の撫子と桜を受け取った。不知火は、着替えを手伝っていた誾を環の元に向かわせると他の侍女に布団を敷かせ、撫子と桜を寝かせた。息が浅く、魘(うな)され続ける撫子と桜。声をかけても返事がない。長門は、息を整えるのも忘れて、頭を床につけると
「すまん。儂のせいだ。儂が目を離した隙に2人とも御白蛇(おはくだ)様にやられた。すまん。すまん、不知火。」
と謝り続けた。長門の言葉に不知火は一瞬言葉を失う。
「…御白蛇様に」
ようやく出た不知火の言葉に長門が経緯を話す。
「正確には、御白蛇様の子供だ。野兎を追いかけていた2人が遭遇して、咬まれた。近くに御白蛇様もいた為、対応は親父とおふくろに任せ、何とか逃げてきたんだが、途中で2人とも意識がなくなってしまった。本当にすまん。」
娘を危険に合わせてしまった父親として緩怠(かんたい)、そして、次代の里長候補を守れなかった人孤の里の防人として失態で頭を下げ続ける長門。だが、その長門も撫子達を助けた時に受けた傷で右腕が腫れ上がっている。不知火は、長門の顔を上げさせると
「頭を上げなさい、長門。撫子も桜も死なせはしないわ。貴方だってこんな傷を負って。早く湯治場に行って治療しなさい。」
と言って、侍女と一緒に退室させた。長門が居なくなると不知火は、撫子と桜に寄り添い、汗をかく額を手ぬぐいで拭くと
「撫子、桜。今、私が楽にしてあげるからね。」
と言って、懐から小刀を取り出した。そして、指を切ろうとした瞬間、襖が開き、環と誾が入ってきた。
「待ちなさい、不知火。」
環の言葉に不知火の小刀を持つ手が止まる。母の登場に張り詰めていた気持ちが解かれ、不知火の目から涙が溢れる。
「ですが、母上。」
不知火の戸惑いが言葉として漏れる。環は、魘されながらも必死に生きようとしている孫の顔を優しく触ると
「確かにそう時間はないようじゃな。」
と言って、不知火の前に座った。環は、不知火の乱れている服を脱がすと鎖骨下や肩甲骨、踝(くるぶし)の上辺りを押し始めた。
「母上、何を」
不知火が環に尋ねると同時に不知火の乳房が暖かくなっていった。そして、
「えっ?」
驚きとともに不知火の乳首から乳濁色の液体が滴れてきた。環は、不知火の母乳を手に取ると
「ふむ、これなら良いじゃろ。早よう、撫子と桜に与えておやり。」
と不知火に指示した。不知火は、環の言う通りに撫子と桜の唇を自分の胸へと近づけると
「んっ、くちゅ、くちゅ。」
撫子も桜も生物の本能からか不知火の乳首に吸いつき、不知火の母乳を吸い続けた。その激しい吸いつきから不知火の口からも甘い吐息が漏れる。
「はぁ、はぁ、はぁ…。母上。これは。」
無意識に漏れてしまう甘味な声を抑えながら不知火が環に尋ねる。環は、顔色が良くなってきた撫子と桜を見ると
「これはって授乳じゃよ。」
と言って、説明する。
「本来、授乳は、仔への食事だけでなくて、免疫力を高める効果があるんじゃよ。ましてや我ら九尾の母乳ともなれば、その効果は、他の種の比にならない程にな。仔を産んでから数年しか出んから賭けではあったが、出て良かったわい。」
環は、そう言うと母乳を吸いながら健やかな眠りに着こうとしている愛しい孫娘達の頭を優しく撫でた。
その後、撫子と桜は、数日間寝続けたが、母乳の効果もあり、後遺症もなく回復した。長門もしばらく剣を振るう事ができなかったが、命に別状は無かった。唯一の犠牲は、長門の母親だった。御白蛇は、白蛇山を住処とする白い大蛇で普段は、山の源種を食して生活している。その為、里などに下りて来る事は滅多にないが、一度(ひとたび)襲われる事があれば、里を壊滅させるだけの力を持っていた。その畏敬の念から周囲の里から御白蛇様と呼ばれていた。その子供の初の獲物であった撫子と桜を逃した事で御白蛇が人孤の里へと下りようとしたのだ。それを阻止する為に大和は、御白蛇討伐を試みたが、叶うはずもなく、里を守る為に長門の母親が、身代わりとなって御白蛇の供物になったのだ。大和は、里の為とはいえ、妻を守れなかったことを悔い続け、この時を以て防人の任を降りた。
撫子に突然胸を触られ、桜が戸惑う。だが、撫子の視線は真面目だ。
「桜、あなた前に言っていたわよね。気持ちが昂(たか)ぶると出ることがあるって。」
撫子の言葉に桜が何かを思い出して顔を赤らめる。
「な、ななっ何言ってるの。なぁちゃん。あれは、永遠ちゃんとしてた時にたまたま出ただけで。いつも出るわけじゃないし。そ、それに出たからって…」
桜が胸を隠して慌てるが、撫子の表情は、変わらない。
「桜は、忘れたの。12年前の事。」
撫子の言葉で桜に昔の記憶が甦(よみがえ)ってくる。そして、その記憶から、これから永遠に行う行為を想像して更に顔を真っ赤に染めた。
12年前 人孤の里
(バタバタバタバタッ)
稲荷神殿を急ぎ駆ける足音。
「不知火、不知火。何処だ。」
襖を開けながら長門の声が響き渡る。
「何よ、騒がしいわね。私は、此処よ。」
長門の呼び掛けに奥の部屋から不知火が答える。長門が奥の襖を荒々しく足で開けるとそこには、巫(かんなぎ)の仕事を終え、着替え途中の不知火がいた。
「ちょっと何入ってきてんのよ。此処には、入らない様に言ったわよね。」
着替えを覗かれ、怒る不知火の目に入ったのは、苦しそうな表情で体を痙攣させる娘達を抱き抱えた長門の姿だった。不知火は、撫子達の弱りきった姿に服を乱したまま近づき、
「撫子、桜。一体どうしたの。」
と言って、瀕死の撫子と桜を受け取った。不知火は、着替えを手伝っていた誾を環の元に向かわせると他の侍女に布団を敷かせ、撫子と桜を寝かせた。息が浅く、魘(うな)され続ける撫子と桜。声をかけても返事がない。長門は、息を整えるのも忘れて、頭を床につけると
「すまん。儂のせいだ。儂が目を離した隙に2人とも御白蛇(おはくだ)様にやられた。すまん。すまん、不知火。」
と謝り続けた。長門の言葉に不知火は一瞬言葉を失う。
「…御白蛇様に」
ようやく出た不知火の言葉に長門が経緯を話す。
「正確には、御白蛇様の子供だ。野兎を追いかけていた2人が遭遇して、咬まれた。近くに御白蛇様もいた為、対応は親父とおふくろに任せ、何とか逃げてきたんだが、途中で2人とも意識がなくなってしまった。本当にすまん。」
娘を危険に合わせてしまった父親として緩怠(かんたい)、そして、次代の里長候補を守れなかった人孤の里の防人として失態で頭を下げ続ける長門。だが、その長門も撫子達を助けた時に受けた傷で右腕が腫れ上がっている。不知火は、長門の顔を上げさせると
「頭を上げなさい、長門。撫子も桜も死なせはしないわ。貴方だってこんな傷を負って。早く湯治場に行って治療しなさい。」
と言って、侍女と一緒に退室させた。長門が居なくなると不知火は、撫子と桜に寄り添い、汗をかく額を手ぬぐいで拭くと
「撫子、桜。今、私が楽にしてあげるからね。」
と言って、懐から小刀を取り出した。そして、指を切ろうとした瞬間、襖が開き、環と誾が入ってきた。
「待ちなさい、不知火。」
環の言葉に不知火の小刀を持つ手が止まる。母の登場に張り詰めていた気持ちが解かれ、不知火の目から涙が溢れる。
「ですが、母上。」
不知火の戸惑いが言葉として漏れる。環は、魘されながらも必死に生きようとしている孫の顔を優しく触ると
「確かにそう時間はないようじゃな。」
と言って、不知火の前に座った。環は、不知火の乱れている服を脱がすと鎖骨下や肩甲骨、踝(くるぶし)の上辺りを押し始めた。
「母上、何を」
不知火が環に尋ねると同時に不知火の乳房が暖かくなっていった。そして、
「えっ?」
驚きとともに不知火の乳首から乳濁色の液体が滴れてきた。環は、不知火の母乳を手に取ると
「ふむ、これなら良いじゃろ。早よう、撫子と桜に与えておやり。」
と不知火に指示した。不知火は、環の言う通りに撫子と桜の唇を自分の胸へと近づけると
「んっ、くちゅ、くちゅ。」
撫子も桜も生物の本能からか不知火の乳首に吸いつき、不知火の母乳を吸い続けた。その激しい吸いつきから不知火の口からも甘い吐息が漏れる。
「はぁ、はぁ、はぁ…。母上。これは。」
無意識に漏れてしまう甘味な声を抑えながら不知火が環に尋ねる。環は、顔色が良くなってきた撫子と桜を見ると
「これはって授乳じゃよ。」
と言って、説明する。
「本来、授乳は、仔への食事だけでなくて、免疫力を高める効果があるんじゃよ。ましてや我ら九尾の母乳ともなれば、その効果は、他の種の比にならない程にな。仔を産んでから数年しか出んから賭けではあったが、出て良かったわい。」
環は、そう言うと母乳を吸いながら健やかな眠りに着こうとしている愛しい孫娘達の頭を優しく撫でた。
その後、撫子と桜は、数日間寝続けたが、母乳の効果もあり、後遺症もなく回復した。長門もしばらく剣を振るう事ができなかったが、命に別状は無かった。唯一の犠牲は、長門の母親だった。御白蛇は、白蛇山を住処とする白い大蛇で普段は、山の源種を食して生活している。その為、里などに下りて来る事は滅多にないが、一度(ひとたび)襲われる事があれば、里を壊滅させるだけの力を持っていた。その畏敬の念から周囲の里から御白蛇様と呼ばれていた。その子供の初の獲物であった撫子と桜を逃した事で御白蛇が人孤の里へと下りようとしたのだ。それを阻止する為に大和は、御白蛇討伐を試みたが、叶うはずもなく、里を守る為に長門の母親が、身代わりとなって御白蛇の供物になったのだ。大和は、里の為とはいえ、妻を守れなかったことを悔い続け、この時を以て防人の任を降りた。
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