神盤の操り人形(マリオネット)

遊庵

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偽りの女王様

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広間に着くと中で長門、大和、神楽が待っていた。
「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。」
染みついた長年の風習せいか、3人の顔を見た瞬間に反射的に言葉が出る。オレの言葉に3人とも頭を下げて
「明けましておめでとうございます、永遠殿。」
「こちらこそ、よろしくお願い申します。」
「よろしくお願いします、永遠様。」
と返した。長門と大和の前には、お酒が用意されていたが、今日は、神楽にしっかり監視されており、まだ手をつけていないようだった。無事に年を越し、談笑していると障子戸が開き、髪を結った3人の美女が入ってきた。男性陣の視線が一斉に注がれる。湯上がりのせいか、肌がいつもより白く透きとおり、浴衣がとても似合っている。3人は、中に入ると正座し、頭を下げる。そして
「皆様、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。」
と挨拶をした。その精錬された所作に広間にいた皆が一同に頭を下げる。挨拶が終わるといつもの様にオレの隣に撫子と桜が座る。桜は、先程の事もあり、オレから距離をとってモジモジしている。その分、撫子の距離が近い。そして、視線が鋭い。撫子は、オレの足を触ると
「永遠様、分かっておりますよね。」
と一言オレに伝える。
『分かっているとは』
オレは、言葉を発せず、とりあえず頷いた。オレの焦りを不知火は、相変わらず楽しんでいる様に見える。意地が悪い。不知火は、ニコニコしながら手を叩き
「はい。それじゃあ、みんな集まったみたいだし、誾、用意してちょうだい。」
と誾に声をかけた。誾の指示で侍女達が各々の前に蕎麦を用意する。年越し蕎麦だ。鴨出汁のきいた蕎麦つゆの香りが部屋に広がっていく。へぎに入った蕎麦。懐かしい。
『そう言えば、年越し蕎麦は、大晦日に食べるって聞いて驚いたっけ。こっちでは、年明けてからだったからな。』
そんな思いに耽(ふけ)っていると撫子が蕎麦を勧めてくる。
「永遠様、早く蕎麦を食べて下さい。」
撫子が急かされ、久方ぶりの蕎麦を汁につける。
(ずずずっ)
蕎麦独特の喉ごし。口の中に広がる鴨出汁。顔がほっこりする。
「永遠ちゃん、蕎麦ってね。長ぁく生きるって意味と末長く側(そば)にいましょうねって意味があるんだって。」
桜が惚気(のろけ)ながらオレに話す。撫子と桜の尻尾がオレの背中で動いているのが分かるが、揺れ方が違う。明らかに撫子の尻尾が激しく動いている。撫子のプレッシャーが強い。
「撫子、あの…」
オレが言い切る前に撫子の視線と言葉が返ってくる。
「なんですか?と・わ・さ・ま。」
ある意味、天使と悪魔。オレは、
「何でもないです……。」
と言って、言おうとした言葉と一緒に蕎麦を飲み込んだ。
一足早く食べ終えたオレと撫子。オレが蕎麦茶で一息つくと腕に柔らかい膨らみがあたり、オレを立ち上がらせる。
「お母様、皆様。今宵は、お先に失礼させていただきますわ。皆様は、御ゆるりと過ごして下さいませ。桜もゆっくりでいいからね。さあ、永遠様。」
撫子は、そう言って、オレを腕ごと部屋の外へと連れて行った。オレは、蕎麦茶の入った湯呑みを近くにいた咲に渡すと
「ご馳走様でした。お先に失礼します。」
と何とか挨拶を済ませ、撫子と一緒に広間を出た。撫子に腕を引かれ、足早に廊下を進む。オレの呼びかけは虚しく静かな外庭に消えて行く。寝室に着くと撫子が障子戸を荒々しく開き、オレを中へと誘い込む。
「………。」
言葉にせずともこれからする事は分かる。撫子は何も言わず、魔法で部屋の蝋燭に火をつけていく。部屋に蝋燭の灯りが広がり、暗闇から大きな布団が現れる。撫子達とは、あれから何度となく交わったが、いつになく緊張する。
(ぱたん)
撫子は、開けた障子戸を今度は静かに閉める。撫子は、ゆっくりとオレに近づく。そして、目の前に来るとオレを布団へと押し倒した。
『これって本来逆なのでは?』
撫子は、倒れ込んだオレに馬乗りになると寝衣を脱がし始めた。撫子の普段と違う乱暴な扱いにどうしたらいいか分からない。戸惑いが顔に出る。
『えっ…』
オレの上半身に落ちる涙。
「ちがう…違うの。こうじゃない……。私は」
か細く聴こえる撫子の声。さっきまでの撫子は何処にいったのか。そこには、迷子になった子供の様に涙を流す撫子がいた。オレと目が合った瞬間に撫子がオレの胸に顔を隠す。
「違うんです、永遠様。私は、こんな強引でエッチな女じゃないんです。ただ…ただ私は、永遠様が好きで…どうしようもなく好きで…どうしたらいいか分からなくて…桜に取られたみたいで怖くて……。こんなの私じゃない。」
胸から聞こえてくる撫子の言葉は、困惑しながらも嘘のない素直な気持ちだった。
「永遠様…嫌いにならないで下さい。」
薄暗い部屋の中、オレの顔色を窺(うかが)う様に撫子が見つめる。オレは、覆い被さる撫子を抱きしめると
「ならないよ。オレが撫子を嫌いになるわけないじゃないか。」
と返した。オレの言葉に撫子の表情が和らいでいく。オレが頭を撫でて、はにかむ撫子。
「永遠様は、いつもズルいです。…また私を好きにさせて」
撫子は、そう言うと再び馬乗りになって寝衣を脱ぎ始める。
「今夜は、永遠様を私だけのものにする為にお母様から特別な下着を頂いたんですが…」
『!?』
撫子が寝衣を脱ぎ捨てる。
「永遠様の好きにして下さい。」
『!!』
露わになったボンテージ姿の撫子。まさに女王様。エナメルの様な質感が見た目以上にエロさを醸し出す。妄想すら及ばなかったセクシーな姿に言葉が出ず、見入ってしまう。
「永遠様、はやく」
馬乗りになって急かす撫子。体勢は女王様だが、胸と陰部が露わになっているせいか、逆に拘束している感じがする。オレは、上半身を起こすと撫子に口づけをする。今までの気持ちを表すかの様に撫子が激しく舌を絡ませてくる。そして既に成長しきっているオレの肉棒を撫子の手が肉壺へと誘導する。
「あ、はっ…んっ、はぁはぁ」
肉壺が満たされると同時に絡みついてた舌が抜かれ、撫子から甘い吐息が漏れ出す。いつも以上に小刻みに動く腰にお互いの息が荒くなっていく。
「永遠様、わたし、もうイっちゃいます。」
撫子の下半身が痙攣し、絶頂のシグナルを伝える。同時にオレの肉棒が締めつけられ、子種が撫子へ注がれる。
「あぁぁぁ……はぁはぁはぁ。しあわせですわ、永遠様。」
そう言って、撫子が再び唇を合わせる。ボンテージのせいなのか、撫子が淫魔(サキュバス)の様に見えてくる。
「もっとぉ…もっと永遠様の子種を…私に注いで下さいませ。」
もうオレの肉棒の制御がきかない。オレは、再び撫子の秘部に入り込むと一心不乱に撫子との愛を確かめ合った。
どれだけの時が経ったのだろうか?疲れきった身体の傍には、気を失った様に眠る撫子がいる。
(じーっ)
何処からか視線を感じる。部屋の入り口を見ると障子戸の隙間から桜が覗いている。
「もぅ終わった?」
桜が小さな声で聞いてくる。オレが頷くと障子戸を静かに開けて中に入ってくる。そして、一緒の布団に潜り込むと
「なぁちゃんの機嫌直った?」
と聞いてきた。オレが
「たぶん。」
と答えると桜はニコリと笑みを見せ
「良かったぁ。じゃあ、私も寝るね。おやすみ、永遠ちゃん。」
と言って、オレの頬にキスをした。時々思う。桜って実は、撫子よりも大人なんじゃないかと。心地よい疲れと温かな癒しがオレを深い眠りへと連れて行く。今日はもう起きれそうにない。
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