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神代技師
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オレ達は、愛里須に案内されて巨人の里の商業施設に来た。商業施設は、里に住む巨人族や人族、亜人族で運営されているが、入里が認められた行商人であれば露店を出す事ができるようになっていた。そのため路上は様々な種族の商人が行き来をしていた。商人達の活気のある声が聞こえてくる。撫子と桜は、見た事のない装飾品や食べ物に目を輝かせ、興奮しているのか尻尾を揺らしていた。
「永遠ちゃん、見に行ってきていい?」
桜の言葉にオレが
「いいよ。」
と答えると桜は、
「やったぁ。なぁちゃん、あそこに行こう。」
と言って、撫子の手を引いて、いい匂い漂わせる屋台へと足早に向かった。
「どう?珍しいでしょ。」
辺りを見渡すオレに愛里須が声をかけてきた。
「巨人の里は、多種族集落なの。オリバー様の意志の元、種族を問わず救い、欲するものを与えてきたから、あらゆる種族が集まってきたのよ。まぁ、おかげでこの里で手に入らない素材とか情報とかも入ってきているんだけどね。」
穏やかな光景に疑問がよぎる。
「愛里須さん。すごく平和に感じるんですが、種族間のいざこざとかはないんですか?」
オレの疑問に愛里須は、
「あるわよ。でも、いざこざなんて同族間でもある事でしょ。巨人の里のルールは、一つ。求める者は、受け入れ、助ける。でも、奪う者は、追放する。里の中で故意に命を奪った者、物を奪った者、技術を奪った者、知識を奪った者は、里から永久追放されて、立ち入りを禁止されるのよ。だから、いざこざはあっても殺し等の事件は滅多に起きないの。まぁ、どうしても相容れない種族もいるから、里の外で争ったりはあるんだけどね。その都度、虎徹が仲裁に行ってたわ。」
と答えた。オレがその答えに納得すると愛里須は思い出したかのように
「そういえば、聞いたわよ。貴方達、この里に国宝級の武具のリメイクに来たんだって。」
と聞いてきた。オレが
「はい、ここなら作り直せると聞いたので。」
と返すと愛里須は、
「この前、歐雷君と見せてもらったけど、あれをリメイクするのは、相当なお金と時間がかかるわよ。お金は、問題ないけど、時間は大丈夫なの?」
と返してきた。オレが
「どのくらいかかるんですか?」
と聞き返すと愛里須は、
「実際は、技師長に直で見てもらわないと分からないけど、数日では無理ね。歐雷君は、少なくとも数ヶ月はかかるって言っていたわ。それに国宝級の武具のリメイクとなると技師長にしかできないから、回復の程度を考えるともっと時間がかかるかもしれないわね。」
と返してきた。
『年明け…いや、半年はみた方がいいのか?だが、今回の戦いの様な事を考えると装備は整えておきたい。特に撫子と桜は。』
オレは、少し考えた後に
「それでもお願いしたいです。依頼は、どちらにしたらいいんでしょうか?」
と聞いた。愛里須は、
「それなら私から直接、技師長にお願いしとくわ。技師長も貴方達の依頼なら受けてくれるはずだから。」
と答えた。オレが
「ありがとうございます。」
と礼を言うと愛里須は笑顔で返してきた。撫子と桜が屋台から串焼きを購入してこちらに向かってくる。
「そう言えば、愛里須さんは、何故、宗睦さんを技師長って呼ぶんですか?」
オレは、撫子達の姿に気が緩んでしまったのか、唐突に愛里須に対しプライベートな質問をしてしまった。それに気づいたが、もう言葉は戻せなかった。愛里須は、慌てるオレを笑いながら
「そんな事気になっていたの?貴方って本当に変な人ね。私が父さんを技師長って呼ぶのは、まだ未熟だからよ。私は、まだ医療部の神代技師になれていない。だから技師長は、私にとって先生なの。父さんって呼んだら甘えてしまいそうでしょ。だから技師長って呼んでいるのよ。それと宗睦の姓は、代々里長に襲名されるの。里長の子は、配偶者の姓を名乗るから苗字が違うのよね。ややこしいでしょ。」
と答えてくれた。オレは、
「そうなんですね。変な事聞いてしまって、すみません。でも、おかげでスッキリしました。」
と笑い返した。その微笑ましい光景を見て、撫子が串焼きをオレの口に突っ込む。
「また2人で楽しそうに。何を話してたんですか?」
撫子は、そう言いながら串焼きを押し込む。串焼きのせいで、返す言葉が出てこない。
「なぁちゃん、永遠ちゃんが苦しそうだよ。」
桜の言葉に我に戻った撫子がオレの口から串焼きを抜き取る。そして
「すみません、永遠様。大丈夫ですか?」
と慌てて、オレを介抱する。その姿を見て、愛里須はクスッと笑い、
「本当に撫子ちゃんは、ヤキモチ妬きね。大丈夫よ、永遠さんを取ったりはしないから。」
とチャチャを入れる。撫子の頬が膨れる。その気持ちを表すかの様に今度はオレを強く抱きしめる。
『…苦しい』
串焼きの後に撫子の胸で窒息し始めるオレを桜が再び助ける。再三の失敗に撫子の顔が赤くなる。その光景にオレ達の顔が笑顔に変わると撫子は外方(そっぽ)を向いて
「永遠様のいじわる。もう知りません。」
と言っていじけてしまった。オレ達は、撫子の機嫌をとりながら、撫子達の買ってきてくれた串焼きを食べた。ようやく撫子の機嫌が直ったところで、オレは愛里須の話を整理する。
『医療部の神代技師という事は、各部門で神代技師がいるという事か。となると、神代技師は、大学でいう教授みたいな者かな。そして、神代技師達を統括しているのが、神代技師長 宗睦 鳳来という事だな。』
オレが頭の整理をしていると再び愛里須が話しかけてきた。
「ねぇ、話は戻るけど、あの武具のリメイクって誰に合わせて作るの?」
愛里須の質問にオレが
「もちろん撫子と桜を優先に作ってもらうつもりです。残れば、オレの装備にまわしてもらえれば…」
と答えると撫子が口を挟む。
「ダメです。あれは、永遠様の戦利品です。永遠様の装備を優先して下さい。」
撫子の言葉に桜も頷く。オレは撫子の頭を撫でると
「ありがとう、撫子、桜。あれは、確かにオレの戦利品かもしれないけど、今はオレ達の所有物なんだ。だって、オレ達は、家族になったんだから。それにオレは、今回の戦利品が大切な人を守る為の装備に変わるなら、それが良いと思っているんだ。」
と答えた。オレの言葉に撫子と桜は、素直に従い、自分の気持ちを答えるかの様にオレに寄り添った。その状況を見ていた愛里須は呆れたように
「はいはい、貴方達がいかに愛し合っているか良く分かりました。」
と言って、顔を手で仰いだ。そして、
「それなら、撫子ちゃんと桜ちゃんの身体の採寸は終わっているから、今回は、細かい所を測定しましょうか。」
と言って、オレ達の手を引いた。
「永遠ちゃん、見に行ってきていい?」
桜の言葉にオレが
「いいよ。」
と答えると桜は、
「やったぁ。なぁちゃん、あそこに行こう。」
と言って、撫子の手を引いて、いい匂い漂わせる屋台へと足早に向かった。
「どう?珍しいでしょ。」
辺りを見渡すオレに愛里須が声をかけてきた。
「巨人の里は、多種族集落なの。オリバー様の意志の元、種族を問わず救い、欲するものを与えてきたから、あらゆる種族が集まってきたのよ。まぁ、おかげでこの里で手に入らない素材とか情報とかも入ってきているんだけどね。」
穏やかな光景に疑問がよぎる。
「愛里須さん。すごく平和に感じるんですが、種族間のいざこざとかはないんですか?」
オレの疑問に愛里須は、
「あるわよ。でも、いざこざなんて同族間でもある事でしょ。巨人の里のルールは、一つ。求める者は、受け入れ、助ける。でも、奪う者は、追放する。里の中で故意に命を奪った者、物を奪った者、技術を奪った者、知識を奪った者は、里から永久追放されて、立ち入りを禁止されるのよ。だから、いざこざはあっても殺し等の事件は滅多に起きないの。まぁ、どうしても相容れない種族もいるから、里の外で争ったりはあるんだけどね。その都度、虎徹が仲裁に行ってたわ。」
と答えた。オレがその答えに納得すると愛里須は思い出したかのように
「そういえば、聞いたわよ。貴方達、この里に国宝級の武具のリメイクに来たんだって。」
と聞いてきた。オレが
「はい、ここなら作り直せると聞いたので。」
と返すと愛里須は、
「この前、歐雷君と見せてもらったけど、あれをリメイクするのは、相当なお金と時間がかかるわよ。お金は、問題ないけど、時間は大丈夫なの?」
と返してきた。オレが
「どのくらいかかるんですか?」
と聞き返すと愛里須は、
「実際は、技師長に直で見てもらわないと分からないけど、数日では無理ね。歐雷君は、少なくとも数ヶ月はかかるって言っていたわ。それに国宝級の武具のリメイクとなると技師長にしかできないから、回復の程度を考えるともっと時間がかかるかもしれないわね。」
と返してきた。
『年明け…いや、半年はみた方がいいのか?だが、今回の戦いの様な事を考えると装備は整えておきたい。特に撫子と桜は。』
オレは、少し考えた後に
「それでもお願いしたいです。依頼は、どちらにしたらいいんでしょうか?」
と聞いた。愛里須は、
「それなら私から直接、技師長にお願いしとくわ。技師長も貴方達の依頼なら受けてくれるはずだから。」
と答えた。オレが
「ありがとうございます。」
と礼を言うと愛里須は笑顔で返してきた。撫子と桜が屋台から串焼きを購入してこちらに向かってくる。
「そう言えば、愛里須さんは、何故、宗睦さんを技師長って呼ぶんですか?」
オレは、撫子達の姿に気が緩んでしまったのか、唐突に愛里須に対しプライベートな質問をしてしまった。それに気づいたが、もう言葉は戻せなかった。愛里須は、慌てるオレを笑いながら
「そんな事気になっていたの?貴方って本当に変な人ね。私が父さんを技師長って呼ぶのは、まだ未熟だからよ。私は、まだ医療部の神代技師になれていない。だから技師長は、私にとって先生なの。父さんって呼んだら甘えてしまいそうでしょ。だから技師長って呼んでいるのよ。それと宗睦の姓は、代々里長に襲名されるの。里長の子は、配偶者の姓を名乗るから苗字が違うのよね。ややこしいでしょ。」
と答えてくれた。オレは、
「そうなんですね。変な事聞いてしまって、すみません。でも、おかげでスッキリしました。」
と笑い返した。その微笑ましい光景を見て、撫子が串焼きをオレの口に突っ込む。
「また2人で楽しそうに。何を話してたんですか?」
撫子は、そう言いながら串焼きを押し込む。串焼きのせいで、返す言葉が出てこない。
「なぁちゃん、永遠ちゃんが苦しそうだよ。」
桜の言葉に我に戻った撫子がオレの口から串焼きを抜き取る。そして
「すみません、永遠様。大丈夫ですか?」
と慌てて、オレを介抱する。その姿を見て、愛里須はクスッと笑い、
「本当に撫子ちゃんは、ヤキモチ妬きね。大丈夫よ、永遠さんを取ったりはしないから。」
とチャチャを入れる。撫子の頬が膨れる。その気持ちを表すかの様に今度はオレを強く抱きしめる。
『…苦しい』
串焼きの後に撫子の胸で窒息し始めるオレを桜が再び助ける。再三の失敗に撫子の顔が赤くなる。その光景にオレ達の顔が笑顔に変わると撫子は外方(そっぽ)を向いて
「永遠様のいじわる。もう知りません。」
と言っていじけてしまった。オレ達は、撫子の機嫌をとりながら、撫子達の買ってきてくれた串焼きを食べた。ようやく撫子の機嫌が直ったところで、オレは愛里須の話を整理する。
『医療部の神代技師という事は、各部門で神代技師がいるという事か。となると、神代技師は、大学でいう教授みたいな者かな。そして、神代技師達を統括しているのが、神代技師長 宗睦 鳳来という事だな。』
オレが頭の整理をしていると再び愛里須が話しかけてきた。
「ねぇ、話は戻るけど、あの武具のリメイクって誰に合わせて作るの?」
愛里須の質問にオレが
「もちろん撫子と桜を優先に作ってもらうつもりです。残れば、オレの装備にまわしてもらえれば…」
と答えると撫子が口を挟む。
「ダメです。あれは、永遠様の戦利品です。永遠様の装備を優先して下さい。」
撫子の言葉に桜も頷く。オレは撫子の頭を撫でると
「ありがとう、撫子、桜。あれは、確かにオレの戦利品かもしれないけど、今はオレ達の所有物なんだ。だって、オレ達は、家族になったんだから。それにオレは、今回の戦利品が大切な人を守る為の装備に変わるなら、それが良いと思っているんだ。」
と答えた。オレの言葉に撫子と桜は、素直に従い、自分の気持ちを答えるかの様にオレに寄り添った。その状況を見ていた愛里須は呆れたように
「はいはい、貴方達がいかに愛し合っているか良く分かりました。」
と言って、顔を手で仰いだ。そして、
「それなら、撫子ちゃんと桜ちゃんの身体の採寸は終わっているから、今回は、細かい所を測定しましょうか。」
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