神盤の操り人形(マリオネット)

遊庵

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求められる者と求める者

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障子戸の隙間から朝日が差し込む。肌寒い。オレは、下敷きになっていた寝巻きを探し出し、着直した。
「う~ん。永遠さまぁ。」
撫子の寝言が聞こえる。反対側からは
「尻尾はダメだょ。ん~、尻尾はぁ。」
桜が寝言を言いつつ、自分の尻尾をハムハムしていた。色っぽい声色が、寝起きの頭に優しく響く。再び、夢の世界に誘(いざ)なわれそうになる。だが、オレの目は、閉ざされる事はなかった。それは、撫子も桜もほぼ脱げかけている下着姿のまま、布団からその白肌をはだけさせていたからだ。朝日を浴びて露わになる美しい裸体。性の虜になってしまう。オレは、首を激しく振って、撫子と桜に布団を掛け直した。掛け直した手を撫子が握る。何かに安堵する。オレは、2人の頭を撫でた。幸せそうな寝顔に心が安らぐ。
(・・・・・・)
何か視線を感じる。振り返ると障子戸の隙間から不知火がこちらを覗いていた。
「何してるんですか?」
オレの問いに障子戸を開け、不知火が入ってくる。
「その様子だと昨晩は楽しまれた様ですね。」
不知火は、目を細め、手を口に添えて笑みを漏らしている。不知火の言葉に夜の事が頭に浮かぶ。動揺を隠せない。
「な、何言ってるんですか。そっ、それに撫子達のこの格こぅ…」
撫子達の下着姿が再び脳裏に浮かんで言葉にできなくなる。不知火は、その様子を楽しむかの様に
「あら、永遠様は、あの様な下着はお嫌いでしたか。」
と言葉をかけてくれる。
「き、嫌いじゃないですけど…。」
動揺から本音が漏れてしまう。
『はっ』
我に返って赤面してしまう。何とか取り繕うとするが、言葉が出てこない。不知火は、クスクス笑っている。
「永遠様が満足されたなら結構ですわ。2人には、私の秘蔵のコレクションを授けますので、これからも存分に楽しんで下さいね。」
不知火は、そう言うとオレに近づき、オレの前で屈(かが)んだ。撫子達と同じ甘い香りがほのかに漂い、不知火の大きな胸がオレの目の前に現れる。オレが恥ずかしさから目を背けると、不知火は、その艶やかな唇をオレの耳元に近づけた。
「何でしたら、私もお相手しますわよ。」
不知火の甘い囁きに誘惑されそうになる。オレは、耳を赤くしたまま
「冗談ですよね。」
と聞くと、不知火は、立ち上がり、
「ふふっ」
と笑い、
「そうですわね。…娘達の旦那様でなければ、分かりませんでしたけど。」
と言って、部屋を出ようとした。苦笑いが止まらない。不知火の後ろ姿から声が聞こえる。
「永遠様。この世界において、能力のある者の仔を授かる事は、栄誉な事なのですよ。我ら九尾は、能力が有るが故に求められる事はあっても求める事はありませんでした。…本当に娘達が羨ましいですわ。」
不知火の言葉に哀愁を感じる。のは、一瞬だった。
「なので、これからも娘達と私の秘蔵コレクションを堪能して下さいね。」
不知火のニヤけ顔が目に浮かぶ。不知火は、その言葉を残して部屋を出ていった。起きたばかりなのにどっと疲れた。オレは、再び布団の上に仰向けになる。撫子と桜は、まだ熟睡している。これからもこの2人の美女と不知火の秘蔵コレクションに誘惑されるかと思うと、興奮すると共に理性が崩壊しないかと心配になった。そんなオレの気持ちを知ってか知らずか寝返りをうった桜の尻尾がオレを誘惑する。オレの顔に当たる桜のモフモフが昨日の夜の事を妄想させる。オレは、桜の誘惑を何とか我慢し、尻尾を布団に戻そうと掴んだ。
「んっっ。」
桜の甘い声と共に尻尾がビクンっと震える。
「もぅ…永遠ちゃんのえっち。」
桜が頬を赤らめながらオレを見ている。オレは、慌てて桜の尻尾を離した。桜の尻尾が布団に入っていく。桜は、尻尾を自分で抱きしめると横目でオレを見て
「……。したい…?」
と聞いてきた。欲求に逆らえない。愛らしいその姿にオレの手が伸びる。桜も抱きしめていた尻尾を離し、オレに手を伸ばす。恥ずかしいのか、桜は頬を赤らめたまま、目を閉じている。唇が近づくにつれて3つの息が徐々に荒くなっていく。
『3つ…?』
オレは、桜に近づけた唇を止め、後ろを振り返る。
『撫子は熟睡している。もしかして不知火さん。』
オレが障子戸の方を見るとそこには誾の姿があった。驚きと共に声が出る。
「誾さんっ」
オレの声に桜は、目を開き、伸ばした手を布団に隠す。誾は、一度咳払いをすると
「失礼致しました。朝食の御用意ができましたので呼びにきたのですが………、その…まだ仔作りの最中とはつい知らず。まぁ、新婚ですし、大切な事ですから…」
普段ではあり得ない歯切れの悪い返答がきた。誾の声に撫子が目を覚ます。撫子は、まだ寝惚けているのか、はだけた下着のまま、オレに抱きついてきた。
「おはようございます、永遠さまぁ」
撫子の柔らかい胸がオレの腕に当たる。その姿に誾が絶句する。誰もが言葉を失っている状況にも関わらず、撫子は、オレの首筋に口づけをし、戯れ続けた。その様子に耐え切れず、誾は、
「失礼致します。」
と一言言って、少し開いていた障子戸を閉め、足早に去って行った。その音に撫子も状況を察したようだ。撫子は、顔を真っ赤にして布団に潜り込む。気まずい空気に肌寒さが増していく。桜がオレの寝巻きの裾を引っ張り声をかける。
「永遠ちゃん、私たちの浴衣取ってきてくれない?」
桜の言葉にオレは障子戸の近くに脱ぎ置かれたままの浴衣を取りに行った。撫子と桜は、布団に包まりながら、顔と尻尾を出して、オレからの浴衣を待っている。それは、妖艶だった姿から想像できない可愛らしい姿だった。オレがその姿にほっこりしていると
「永遠様、これから着替えますので、その…外で待ってていただけますか?」
と撫子がモジモジしながら声をかけてきた。可愛らしい姿になっているが、布団の中は、卑猥な下着姿。オレは、2人に浴衣を渡すと部屋の外へと出た。
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