神盤の操り人形(マリオネット)

遊庵

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甘味と誘惑

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神楽は、機械に銅鉱石をセットして、ギルドのプレートを水晶石に翳した。金属が焼ける臭いがする。暫くして、ギルド狐茶屋の刻印の入った銅のプレートが出てきた。神楽は、出てきたプレートを濡らした布に包み、冷ましていく。神楽は、銅のプレートを2枚作成すると次に鉄鉱石をセットする。再び、金属の焼ける臭いがする。だが、暫くしてもプレートが出て来なかった。神楽が機械を確認するが、原因がわからず、更に鉄鉱石を加えて様子を見る。結局、プレート3枚分の鉄鉱石を使用する事でプレートが出てきた。ようやく出てきたプレートを見て、神楽は、
「こんな事初めてです。永遠様が来てから初めて尽くしで、もぅ疲れました。」
と言って、ため息をついた。そして、オレ達に出来上がったプレートを渡すとプレートについて話し始めた。
「先ずは、プレートに血を一滴垂らして下さい。」
オレ達は、神楽に言われた通りプレートに血を垂らす。すると、撫子と桜のプレートは、黒文字でオレのプレートは、赤文字で名前が浮かび上がった。それを見た神楽は呆れた顔をして
「もぅ、あかん。永遠様は、例外中の例外や。本来、文字は黒しかでないの。はぁ。…まぁ、名前が刻まれたからいいのかな。」
と言って、プレートについての説明を続けた。
「プレートは、ギルドに限らず、色んな所での身分証明にもなるので無くさない様に注意して下さいね。本人以外に使用できない様になっていますが、再発行には手数料がかかりますから。それから、経験を積むとランクが上がると思います。プレートの書き換えは、登録したギルドなら無料で行えますが、他のギルドで行う時は、手数料がかかるので注意して下さい。」
それからギルドの掲示板の見方や登録者の依頼の受け方などを教えてもらった。またギルドは、仕事の斡旋所だけでなく、市街の案内所も兼ねている事が多いので、世界を旅するなら先ずギルドに立ち寄る事も勧められた。話が終わると神楽は、オレからプレートを受け取り、依頼料をプレートに振り込んだ。そして、幾らかの現金を用意してくれた。

ギルドの登録が終わり、狐茶屋を出ると外は夕刻になっていた。少し肌寒い風が吹き、撫子と桜が肌を寄せ合う。今更だったが、紅葉が赤くなり、舞い散っている。今は秋なのだろう。神殿に向かうオレ達の影が伸びていく。沈みゆく夕日に向かって桜が急に駆け出す。
「永遠ちゃん、此処、此処。前に言った甘味処。」
桜の声とともに甘い香りが漂ってくる。香りにつられて撫子がオレの手を引いて桜の元へと連れて行く。近づくにつれて感じる懐かしい香り。着くとそこにはたい焼きが売られていた。
「いらっしゃい、桜様。今日は撫子様もご一緒なんですね。」
甘い香りと一緒に長く可愛らしい耳をした人兎の娘が現れた。
「久しぶり、苺ちゃん。元気だった?」
桜の言葉に落ち着いた声で
「えぇ、お陰様で。桜様もお元気そうで何よりです。」
と答えた。苺の見た目は、桜よりも幼い感じだが、対応は大人だった。
「今日は何にいたしますか?桜様の大好きなクリームもありますよ。」
苺の言葉に桜の涎は決壊しそうだった。そして、オレの顔を円な瞳で見つめる。この瞳に勝てる訳がない。
「いいよ。好きなのを買って。」
オレがそう言うと桜は
「大好き、永遠ちゃん。」
と言って、抱きつき、そのままオレと撫子をたい焼きの並べられているショーケースへと連れて行った。桜も撫子も色々な味のたい焼きを見つめ、悩んでいる。
「永遠ちゃんは何にする?」
桜の言葉に
「桜のお勧めはクリームなんだろ。オレはそれにしようかな。桜は何にするんだ?」
と答えた。桜は、再びショーケースの中を眺めて
「クリームは1番なんだけど、定番のあんこも美味しんだよね。あとこの時期は、栗あんも…あっ、新作でチョコなんかもある。悩むなぁ」
と言って、またたい焼きに釘付けになった。
「それなら、一つずつ買って食べ比べたらどうだ。」
オレの提案に桜は目を輝かせる。
「いいの?永遠ちゃん。」
「桜が食べたいならいいよ。」
オレの返しに桜は子供のように喜んだ。そんな桜の姿を見て苺が
「桜様。その方が噂の婿様ですか?」
と聞いてきた。桜は、オレの腕に抱きつくと
「そうだよ。永遠ちゃん、すっごく優しいんだ。」
と答えた。桜の胸の感触に顔が赤くなる。苺は
「そのようですね。素敵な方と結婚できて羨ましいです。」
と言って、微笑んだ。それを桜も満面の笑みで返す。苺は、注文を聞くとショーケースの裏にたい焼きを取りに行った。その苺の後ろ姿には、白くて丸いモフモフが顔を出していた。唐突に現れた本物のバニーガールの尻尾を目が追ってしまう。
『痛っ』
急に手につねられた痛みが走る。痛みの先を見ると撫子が顔を膨らませてオレの手をつねっていた。オレが理由を聞こうとするとその前に撫子が
「永遠様。他の女性の尻尾を見るなんて…ここに私の尻尾があるのに。」
と言って、オレの目の前に自分の大きな尻尾をチラつかせた。その光景を見て桜が追い打ちをかける。
「永遠ちゃんのエッチ。」
何のことか分からないまま困惑するオレに後ろから来た不知火がトドメを刺す。
「永遠様、女性の尻尾を見つめるのは、『あの娘と仔作りしたいな』って事なんですよ。ましてや尻尾を揉むのは、『仔を作ろう』って意味もあるんですよ。」
不知火は、オレの耳元でそう囁くとクスクスと笑う。知らなかったとはいえ、恥ずかしさで顔が赤くなる。赤くなったオレの顔を撫子の尻尾が誘うように当たってくる。
「私の尻尾が1番ですよね。と・わ・さ・ま。」
撫子の言葉と睨みにNOの選択は無かった。
「う、うん」
オレの言葉に撫子の顔の強張りは取れたが、
「それでは、此処のお支払いは全て永遠様という事でよろしいですね。」
と言われ、狐茶屋で貰った金を早速使う事になってしまった。たい焼きの入った紙袋を渡されると我慢できずに桜がたい焼きを取り出す。オレ達は、温かく、甘いたい焼きを食べながら神殿に向かった。
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