8 / 10
困った悪役令嬢。
しおりを挟む
私は未来が見つからなくて困っていた。
その日、私は侍女の中に明らかに異質な光を放つピンク髪の美少女を見つけた。絶対にヒロインだ。
眼鏡と帽子で隠しても頭が小さくてオーラがありシルエットだけでも美少女なのに、周囲から冴えない娘の様に粗末に扱われてる辺りヒロインっぽさが溢れている。
ここで私はずっと用意していた「日本語で書かれたノート」を取り出し、チラチラ見えるように広げてみた。転生に使う魔方陣も描いてあるから多少距離があっても意図は伝わるだろう。
それが視界に入ったらしいヒロインは「あっ!」と叫んで震えだした。間違いなく日本からの転生者だ。私も嬉しくて叫びそう!
なかなか会いに来てくれないから不安だった。
だって私この世界の設定何も思い当たるものがない!
最初こそ異世界に来たテンションで楽観的だったが、先の見えない不安で落ち着かず、一時の気の迷いでとんでもない事になってしまったと一人震えていた。
相手が転生者なら話は早い。何かこの乙女ゲームの情報をくれるか、さっさと王太子とハッピーエンドを迎えて私にちょうどいいポジションを用意してほしい。
しかしここで問題が起きた!護衛の近衛騎士がヒロインに攻撃魔法を放ったのだ!なんてことするんだ!!
咄嗟に庇うが間に合わない!ここでヒロインに死なれては困る!
とにかく必死だった私は、心で謝りながらも側にあったワゴンを引き寄せると少しでも遠くへ飛ぶようにヒロインにぶち当てた。
そしてヒロインはいなくなった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
私がいけなかったのだ。
せっかく会えたヒロインはワゴンにぶち当たりノートに描かれた魔方陣に着地し、また別の異世界へと転生してしまった。
図らずも転生の条件が揃ってしまった不幸な事故だった。生け贄が黒こげの七面鳥で大丈夫だったのか心配だ。ヒロインはちゃんと受肉できているだろうか。
計画がおじゃんになってしまい。脱力感からボーッと家で過ごしていると、王太子が気遣わしげに様子を見に通ってくる。
真面目に攻略してこなかったのにこの王太子は律儀である。
しかし王子とくっつけば女王教育頑張らなきゃだし
そもそも王子の他は攻略対象に出会えて無いので婚約破棄からの逆転狙いなら自分で事業なりなんなり生計たてるまで頑張らなきゃいけないし…
頑張らないでいいルートが消えてしまって頑張れない。
「…私って変わらないといけないのかな?」
今後の不安から思わずそう呟くと。
意外な事に「君は変わらなくて良い!」と即答で返ってきた。
王太子は真っ赤な顔でそのまま私への愛をなんやらかんやら叫びだす。その殆どはよく分からないけど、要約するとこのままの私の事が好きだから僕の側にいてくれって事らしい。
え!ラッキー!私って結構惚れられてるの!
なにもしなくていいなら助かる!!
何が良かったのかさっぱり分からないけど偶々「ちょっとおバカな手のかかる女子」がこの王太子の属性バッチリ好みドストライクとかそんなんだったんだろう。やったぜはっぴー!
とはならない。
私もそこまでバカではない。この人は良くても周囲が許さないだろう。大体この王子様は甘ちゃんだ。
自分の地位を危ういものだと認識しているが、そもそも質素倹約を重んじるこの王国、王はボロを来て粗食を食べ、国民に感謝して暮らす習わしがある。じゃあなんで他の王族は贅沢してるのか疑問だけど、それはそれ、これはこれ、建前上の問題だろう。とにかく、王族には「お小遣い」があっても、王は貧民に等しい生活を強いられると聞いている。外に出る事も稀だそうだ。これで誰が好き好んで面倒で自由の無い王位につきたがるというのだ。
王が副業をする事も禁じているため、王兄が盆栽事業を立ち上げるにあたって弟である今の王に頼み込んで王位を継承してもらった経緯もよくわかってないに違いない。第2王子も第3王子も王位なんか狙っておらず、体よく面倒事を押し付けられているだけなのに気付きもしない。父親に似て人が良いのだろう。
しかしこの王太子の私への愛を熱く語る姿は純真で可憐だ。守ってあげたくなってしまうとは正にこんなのだ。
この異世界は期待していたより甘さ控えめらしく、それなりに異世界らしい壮大な陰謀が渦巻いている。
女王陛下がにっこり笑って「この国ぶっ壊してみない?」と私に囁いた時さっさと逃げてしまえばよかったかもしれないがもう遅い。
私はこの甘ちゃん王子を守ってやらねばならないのだ。
これからは「悪役令嬢」として頑張ろうと思う。
その日、私は侍女の中に明らかに異質な光を放つピンク髪の美少女を見つけた。絶対にヒロインだ。
眼鏡と帽子で隠しても頭が小さくてオーラがありシルエットだけでも美少女なのに、周囲から冴えない娘の様に粗末に扱われてる辺りヒロインっぽさが溢れている。
ここで私はずっと用意していた「日本語で書かれたノート」を取り出し、チラチラ見えるように広げてみた。転生に使う魔方陣も描いてあるから多少距離があっても意図は伝わるだろう。
それが視界に入ったらしいヒロインは「あっ!」と叫んで震えだした。間違いなく日本からの転生者だ。私も嬉しくて叫びそう!
なかなか会いに来てくれないから不安だった。
だって私この世界の設定何も思い当たるものがない!
最初こそ異世界に来たテンションで楽観的だったが、先の見えない不安で落ち着かず、一時の気の迷いでとんでもない事になってしまったと一人震えていた。
相手が転生者なら話は早い。何かこの乙女ゲームの情報をくれるか、さっさと王太子とハッピーエンドを迎えて私にちょうどいいポジションを用意してほしい。
しかしここで問題が起きた!護衛の近衛騎士がヒロインに攻撃魔法を放ったのだ!なんてことするんだ!!
咄嗟に庇うが間に合わない!ここでヒロインに死なれては困る!
とにかく必死だった私は、心で謝りながらも側にあったワゴンを引き寄せると少しでも遠くへ飛ぶようにヒロインにぶち当てた。
そしてヒロインはいなくなった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
私がいけなかったのだ。
せっかく会えたヒロインはワゴンにぶち当たりノートに描かれた魔方陣に着地し、また別の異世界へと転生してしまった。
図らずも転生の条件が揃ってしまった不幸な事故だった。生け贄が黒こげの七面鳥で大丈夫だったのか心配だ。ヒロインはちゃんと受肉できているだろうか。
計画がおじゃんになってしまい。脱力感からボーッと家で過ごしていると、王太子が気遣わしげに様子を見に通ってくる。
真面目に攻略してこなかったのにこの王太子は律儀である。
しかし王子とくっつけば女王教育頑張らなきゃだし
そもそも王子の他は攻略対象に出会えて無いので婚約破棄からの逆転狙いなら自分で事業なりなんなり生計たてるまで頑張らなきゃいけないし…
頑張らないでいいルートが消えてしまって頑張れない。
「…私って変わらないといけないのかな?」
今後の不安から思わずそう呟くと。
意外な事に「君は変わらなくて良い!」と即答で返ってきた。
王太子は真っ赤な顔でそのまま私への愛をなんやらかんやら叫びだす。その殆どはよく分からないけど、要約するとこのままの私の事が好きだから僕の側にいてくれって事らしい。
え!ラッキー!私って結構惚れられてるの!
なにもしなくていいなら助かる!!
何が良かったのかさっぱり分からないけど偶々「ちょっとおバカな手のかかる女子」がこの王太子の属性バッチリ好みドストライクとかそんなんだったんだろう。やったぜはっぴー!
とはならない。
私もそこまでバカではない。この人は良くても周囲が許さないだろう。大体この王子様は甘ちゃんだ。
自分の地位を危ういものだと認識しているが、そもそも質素倹約を重んじるこの王国、王はボロを来て粗食を食べ、国民に感謝して暮らす習わしがある。じゃあなんで他の王族は贅沢してるのか疑問だけど、それはそれ、これはこれ、建前上の問題だろう。とにかく、王族には「お小遣い」があっても、王は貧民に等しい生活を強いられると聞いている。外に出る事も稀だそうだ。これで誰が好き好んで面倒で自由の無い王位につきたがるというのだ。
王が副業をする事も禁じているため、王兄が盆栽事業を立ち上げるにあたって弟である今の王に頼み込んで王位を継承してもらった経緯もよくわかってないに違いない。第2王子も第3王子も王位なんか狙っておらず、体よく面倒事を押し付けられているだけなのに気付きもしない。父親に似て人が良いのだろう。
しかしこの王太子の私への愛を熱く語る姿は純真で可憐だ。守ってあげたくなってしまうとは正にこんなのだ。
この異世界は期待していたより甘さ控えめらしく、それなりに異世界らしい壮大な陰謀が渦巻いている。
女王陛下がにっこり笑って「この国ぶっ壊してみない?」と私に囁いた時さっさと逃げてしまえばよかったかもしれないがもう遅い。
私はこの甘ちゃん王子を守ってやらねばならないのだ。
これからは「悪役令嬢」として頑張ろうと思う。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
このやってられない世界で
みなせ
ファンタジー
筋肉馬鹿にビンタをくらって、前世を思い出した。
悪役令嬢・キーラになったらしいけど、
そのフラグは初っ端に折れてしまった。
主人公のヒロインをそっちのけの、
よく分からなくなった乙女ゲームの世界で、
王子様に捕まってしまったキーラは
楽しく生き残ることができるのか。
とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
私はモブのはず
シュミー
恋愛
私はよくある乙女ゲーのモブに転生をした。
けど
モブなのに公爵家。そしてチート。さらには家族は美丈夫で、自慢じゃないけど、私もその内に入る。
モブじゃなかったっけ?しかも私のいる公爵家はちょっと特殊ときている。もう一度言おう。
私はモブじゃなかったっけ?
R-15は保険です。
ちょっと逆ハー気味かもしれない?の、かな?見る人によっては変わると思う。
注意:作者も注意しておりますが、誤字脱字が限りなく多い作品となっております。
転生したので猫被ってたら気がつけば逆ハーレムを築いてました
市森 唯
恋愛
前世では極々平凡ながらも良くも悪くもそれなりな人生を送っていた私。
……しかしある日突然キラキラとしたファンタジー要素満載の異世界へ転生してしまう。
それも平凡とは程遠い美少女に!!しかも貴族?!私中身は超絶平凡な一般人ですけど?!
上手くやっていけるわけ……あれ?意外と上手く猫被れてる?
このままやっていけるんじゃ……へ?婚約者?社交界?いや、やっぱり無理です!!
※小説家になろう様でも投稿しています
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ハイエルフの幼女に転生しました。
レイ♪♪
ファンタジー
ネグレクトで、死んでしまったレイカは
神様に転生させてもらって新しい世界で
たくさんの人や植物や精霊や獣に愛されていく
死んで、ハイエルフに転生した幼女の話し。
ゆっくり書いて行きます。
感想も待っています。
はげみになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる