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しおりを挟む唇が離れていった。
そんなに触れていなかったのに、その一瞬だけ時間が止まったような感じさえした。
俺はゆっくりと目を開けると、悪魔と目が合う。
・・・・抵抗する事も出来た筈なのに・・・
何故かそれに期待していた。
本当に俺の体はどうしてしまったのだろうか。
こんな嫌な相手からのキスなのに・・・
・・・違う、そんなんじゃ・・・そんなんじゃ・・・ないってば・・・・
悪魔は俺をお姫様抱っこのような形で抱き上げる。
蒼「え、ちょっとっ」
有「歩けないんだろ、これくらいさせろ」
蒼「・・・・・」
悪魔は俺にそう言うと、俺をベッドまで連れて行き、ゆっくりと俺をベッドに座らせた。
悪魔は俺の横に腰掛けると、しばらく二人の間には沈黙が流れた。
有「俺は・・・感情表現が苦手なんだ。」
悪魔はポツリとそう言うと、俺の返事を待たずに そのまま喋り始めた。
有「俺の親父は最悪な父親で俺が幼い時も自分勝手な人だった。殆ど家には帰って来ず、帰ってきたと思えばお袋に怒鳴り散らす。家事や俺の教育事はお袋に任せっきり。俺はまだ幼かったからそれがどんなに大変かも分からなかった。俺が小学校に上がった頃、家に帰ると珍しく親父が帰って来ていた。幼かった俺は、親父に甘えたかったのかもしれない。俺は久々に会った親父に会えて嬉しくて遊ぼうと せがんだらしいんだ。親父はそんな俺に手をあげた。殴られた俺を庇う様にしてお袋は俺の目の前に立った。そして親父はお袋を怒鳴り付けた。」
「子供の面倒はお前の仕事だろ!家にしか居ないのに何故子供の教育が出来ないんだ!」
有「親父はそう言うと お袋に手をあげた。俺が余計な事をしたばっかりに・・・それから間もなく両親は離婚した。後から知った話だが、親父は俺が生まれた辺りから不倫をしていたらしい。お袋は知っていたらしいが、生まれたばかりの俺の事を考えて我慢していたそうだ。そして離婚後にお袋が変わった。」
「あんたを見てると・・・憎いあの人を思い出すわ・・・あんたなんか・・・あんたなんか産むんじゃなかった!!!」
有「どんどん成長するにつれて親父に似てくる俺の顔を見てるのが辛いと お袋はヒステリックに泣き喚いて俺を叩いた。それから間もなくお袋は鬱病になった。家事とお袋の面倒は俺が全部看た。食事を持って行っても食べない日がほとんどで、感情の浮き沈みが激しい時は、とても話しかけられる状態じゃなかった。日に日に弱っていくお袋を俺はそうやって見ている事しか出来なかった。ある日いつものように学校から帰ってきた俺は、お袋の様子を見に行こうと部屋に行った・・・・・・・・・・お袋は、俺が居ない間に首を吊って自殺していた。」
蒼「うそ・・・・・そんなことってっ・・・」
思いもよらない壮絶なエピソードに俺は無意識に涙が溢れる。
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