自信過剰

ともえどん

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自信過剰

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 幼いころより、容姿や才に恵まれていなかった。答案用紙のマルの数、かけっこの順位。一番はおろか、二番にすらなることはなかった。天は、私に二物どころか、一物すらも与えてはくれなかった。
 こんなふうに悲観する私を、世の中、強いては成功者たちは糾弾する。環境のせいにするな、自己責任、だ。自己責任とは、なんだ。自己とは、今ものを申しているお前のことではないのか。それでは、他者責任ではないか。他人のせいにしているのは、お前ではないのか。
「でも、好きなんだろう?」
 しゃがれた男の声がした。
「次は、〇〇駅、〇〇駅です」
 じめっとした車内に車掌の声が漂った。四方八方、人だらけの車内で、このままぶちゅっと潰れて、ほんの少し、他人のスーツを汚してしまうほどの迷惑で、消えてしまいたかった。
 男の吐息が耳にかかる。荒い。生ぬるい背中に、見知った感触。腹に回った汗ばんだ手が、男の渇望を肉体へ供述した。こういうことは、好きではない。好きではないけれど、私が消えることなく現存してしまっているのは、こういった不貞な男の需要を感じることで、己の存在の輪郭をぼんやりとではあるが、感じることが、できてしまう、からだ。
 景色が止まった。雪崩れる人に混じって、外に出た。藍色のスカートに、白い線が滲んでいた。私は泣いた。大人は誰も気付かない。ほっとした。でも、また泣いた。
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