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プロローグ
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頭を襲う鈍痛で目を覚ますと、そこは異世界だった。
「……気がついたかい?」
視界に広がる青空の端で、白皙の少女がこちらを覗いている。端正な顔の赤い瞳が俺を覗き、銀色の髪がそよそよと揺らめいている。
「……ここは?」
痛みに戸惑いながら身体を起こすと、俺には見覚えのない景色が広がっていた。
上空より身を照らす太陽光、肌を撫ぜるそよ風、ズボンとパンツ越しの芝生の感触、そして白皙の少女。
最後の一つを除いていずれも過去に見たり感じたことのあるものばかりであるはずなのだが、それらが俺の記憶に全く照合しないのだ。
「……まさか、キミ、ここがわからないの?」
ぐつぐつと煮えたぎる何が入っているのか想像もしたくない闇鍋をかき混ぜる、おそらく万人が想像するであろう魔女のような黒いローブを身に纏う美少女は首を傾げた。
「……ああ、全くわからない」
「変わった格好をしているようだけど、どこの国の出身なんだい?」
「……日本だ」
「ニッポン? 変わった名前の国だね……あっ!」
対俺への一問一答の結果にむむむと悩む美少女は、すらりとした顎に当てていた手で突然俺の右手を引っ掴んだ。
「この紋章!」
美少女は自らの手の中の俺の右手の甲へ熱視線を送った。そこには大きなアザが不思議な形を作っており、それはこの世界と同じく、俺の記憶と照合しない。
「これ、ドラゴンの騎士の証だよ!」
美少女は赤い目を煌めかせ、両手で俺の右手を取ってぐいっと迫った。爛々とした笑顔が可愛い。いよいよ異世界ものっぽくなってきやがった。
「ドラゴンの騎士?そんな資格取った覚えないけどな……」
「運転免許証の話をしているわけではないのだよ、少年」
得意げにふふんと鼻を鳴らす美少女の張る胸は、大きな果実が黒いローブを押し除けてその輪郭を露わにしていた。
でかい上に揺れている。形も申し分ない。
「……話聞いてる?」
「もちろんだ。しっかり聞いているぞ」
「……このドラゴンの騎士の証は、僕らの世界が危機に瀕している時に現れる救世主さまにしか発現しないんだ」
手の甲のアザを改めて眺めてみる。こんなアザ元々なかったのになぁ。おそらく異世界に転生した際に、救世主となった俺に発現したものなのだろう。
「まさか、伝承の通りだったとは……」
それにしたって、このアザがドラゴンの紋章か。ドラゴンというよりは……ウシ? ヤギ? とにかく農牧っぽい顔にしか見えんのだが……もうちょいカッコいいデザインがあっただろうに……
「……話、聞いてる?」
「もちろんだ。俺の地獄耳を舐めてもらっちゃあ困る」
「……ともかく、キミにはこの世界を救ってもらうよ」
ジロリと俺を一瞥する美少女。スネているらしい。かわいい。
「僕はジータ。救世主さまの忠実な僕となることを約束された、一族の末裔さ」
よろしくね、と伸ばした白い手を右手で握った。救世主の証である、ドラゴンのアザがきらりと光る。
「俺の名前はカズキだ。よろしくな」
あれよあれよという間に、救世主となって美少女魔導師ジータと旅をすることとなった俺、カズキ。
さてはて、これからどうなることやら……
「おい! いたぞ‼︎」
そろそろ話をまとめようとしている俺の気遣いを台無しにしやがるのは、遠くでこちらを指差す筋骨隆々のガラの悪い男だった。
「あっちゃー、バレちゃったか」
しまった、とばかりに額に手を当て天を仰ぐジータ。
「……バレちゃった、といいますと?」
「……言わなきゃだめ?」
「……異世界から来た根無草の俺が、救世主としてこの世界を救うためのパートナーを選ぶ上では、信頼関係ってのは大切だと思うがね」
「……これです」
右手で見に纏うローブを広げると、そこには無数の貴金属がひしめいていた。燦々とした日の光が乱反射し、思わず目を細めた。
二人で咄嗟にしゃがみ込む。作戦タイム。
「……購入した、わけではなさそうだな」
「欲しいものは、自らの手で手に入れるものなんだよ」
「そういうセリフを吐いていいのは、夢とか希望とかもっと概念的なものに対してだからね?」
「てへっ」
「かわいいっ!」
しゃがみ込んでの作戦タイム、終わり。
腹を括って立ち上がり、向かってくる男たちの方へ向き直る。謝ろう。誠心誠意謝れば、人は分かり合えるものだ。
ここは異世界だが、怒りの表情で走り迫ってくるあの男だって人間だ。言語も、俺が聞き取れた時点で共通のものであることは間違いない。男の手に握られた拳銃のようなものの銃口がこちらに向いていようとも、言葉で伝えればわかりあえるのだ。言葉は力。ラングウィッジイズパワー。英語あってる?
バァン!
銃声と共に、俺の頬に血の線が描かれた。前言撤回。
「……逃ぃげろぉおおおおおおおおおお‼︎」
「ですよねー」
脇目も振らずに漢カズキ、全力ダッシュ。この世界に来たときの頭の鈍痛なんて忘れて、一心不乱に走る。
バァン! バァン!
やばい。めちゃくちゃ撃ってきてる。この小説がギャグテイストでなけりゃ、早々に弾が当たってジ・エンドだ。主人公補正というものは、存在するんだな。
……ん? 待てよ。
「あのさ、ジータ」
「全力疾走の最中にどうしたんだいカズキ」
「今バンバン撃たれてるあれって何?」
えらく近代的な兵器で攻撃されている現状に、疑問を持った俺。
「……あれは魔銃だね」
「魔銃?」
「魔法で作られた、この世界の武器さ。あの男はおそらく低級だろうから、物理的に弾を撃つことしかできないけど、私くらい上級になると魔力を込めて撃つこともできるんだよ」
「……なるほど、ところでジータさん」
「なんだいカズキさん」
「……なんで空飛んでるの?」
俺がぜえぜえ息を切らして必死で逃げている中、全く息を乱すことなく魔銃の説明をするジータを訝しんでみると、ローブをはためかせながら宙に浮いている。
「僕は魔導師だよ? 空を飛ぶことくらい安いものさ」
「そりゃあっ!」
俺は、低空飛行を続けるジータに飛びついた!
「きゃあっ! 急にどうしたのさっ!」
「お前ばっかり楽してズルいぞ。俺も一緒に飛ばせ!」
ジータの腰回りに抱きつく。ジータの体温が顔に伝わり、女の子特有のいい匂いが鼻をくすぐる。俺の重みでバランスを崩す中、しっかりとその絹のような太ももを撫ぜることも忘れない。不可抗力というやつだ。
「わかった! わかったから、変なところ触るのをやめたまえよぉ!」
顔を赤らめながら黄色い声を出すジータは一転、抱きつく俺の右手に手を当て何かを念じ始めた。
「……数多の風の精たちよ。現世に降り立った救世主に風の御加護を与えたまえ」
それっぽい詠唱と共に、俺の右手のアザが緑色に光った。瞬間、俺の身体が軽くなった。
「もう大丈夫。精霊の加護がカズキを風に乗せてくれるよ」
「……本当だ、浮いてる」
ジータに抱きつくのをやめてみると、低空ではあるが、自分の身体が宙に浮いている。先程全力疾走していた俺に並走していたジータと同じスピードで、俺も空中を並走していた。いよいよ、本当に異世界ファンタジーっぽくなってきやがったな。
バァン! バァン!
変わらず追手が背後から魔銃で撃ってくる。
「カズキさん」
「なんだいジータさん」
「後ろから来てる奴、倒しちゃってもいい?」
貴金属を強奪しておきながら、追手を倒すと言い出したよこの子。発想が悪魔的だ。
「謝っても許してくれなさそうだし、あの追手の元締めが、魔王軍の幹部なんだよ」
ジータはくるりと向き直った。釣られる形で俺も向き直る。
「……魔王軍?」
「ああ、この世界を混沌に陥れている、悪の元凶さ」
地面に降り立つと、渦巻く魔力の余りの強さから、可視化されたバチバチといった魔力の奔流がジータを纏った。パタパタと、身に纏ったローブが舞い上がり、貴金属がジャラジャラと音をたてる。ローブに隠れていた大きな胸がはっきりと露わとなり、俺の目は揺れるそれに釘付けとなった。
「カズキはおっぱいばっかりだね……やあっ!」
ゴォオオオオオオ!!!
呆れ顔のままジータは叫んだ。眼前に挙げた両手が一瞬光ったかと思うと、橙色の閃光が魔銃を構えて迫る男の元へ奔る。一瞬の静寂の後、轟音と共に火柱が昇り、断末魔をも許さぬうちに追手は消炭となった。
開いた口が塞がらなかった。
「ま、ざっとこんなもんかな」
両手を払うように打ちつけるジータの煌めく笑顔は、地面になおも燃え残る炎によって赤く揺らめいていた。
こっわ。
「ところで、カズキは本当に僕のおっぱいが好きだねぇ」
「……はっ、いや、そりゃ大好きだが、それは男の子のワールドスタンダードというか」
この子が、俺の視線によるセクハラにもし怒ったら、間違いなく殺される。
「不可抗力なので、なんとか許していただければよろしいでござらんことば孤児を得ずと言いますか」
「別に怒ってないよ」
にっこり笑うジータ。
「救世主さまのモチベーションになるのなら、安いものさ」
自分で自分の胸を持ち上げるジータ。潰れて揺れるその様があまりにも扇情的すぎやしませんか……
「そうだ……この世界を救った暁には、僕の身体を好きにしていいよん」
「ヘアァッ!」
とんでもなく魅力的な提案に円谷さんちの巨大ヒーローのような鳴き声をあげてしまう。
この身体を、好きに? あんなことやこんなことをこの俺ができるというのか? 素晴らしい。実に素晴らしい。金銀財宝貰うよりもよっぽど素晴らしい。
「……では、世界を救った暁には、君のおっぱいをいただこう」
「……いいだろう」
漢カズキ。美少女のおっぱいの為に、世界を救うことを決意。
(……身体と聞いて、"おっぱい"としか言わないところが、童貞臭くてかわいいなぁ)
「……? 俺の顔に何かついてるか?」
「……なんにも」
ジータは笑った。
「……気がついたかい?」
視界に広がる青空の端で、白皙の少女がこちらを覗いている。端正な顔の赤い瞳が俺を覗き、銀色の髪がそよそよと揺らめいている。
「……ここは?」
痛みに戸惑いながら身体を起こすと、俺には見覚えのない景色が広がっていた。
上空より身を照らす太陽光、肌を撫ぜるそよ風、ズボンとパンツ越しの芝生の感触、そして白皙の少女。
最後の一つを除いていずれも過去に見たり感じたことのあるものばかりであるはずなのだが、それらが俺の記憶に全く照合しないのだ。
「……まさか、キミ、ここがわからないの?」
ぐつぐつと煮えたぎる何が入っているのか想像もしたくない闇鍋をかき混ぜる、おそらく万人が想像するであろう魔女のような黒いローブを身に纏う美少女は首を傾げた。
「……ああ、全くわからない」
「変わった格好をしているようだけど、どこの国の出身なんだい?」
「……日本だ」
「ニッポン? 変わった名前の国だね……あっ!」
対俺への一問一答の結果にむむむと悩む美少女は、すらりとした顎に当てていた手で突然俺の右手を引っ掴んだ。
「この紋章!」
美少女は自らの手の中の俺の右手の甲へ熱視線を送った。そこには大きなアザが不思議な形を作っており、それはこの世界と同じく、俺の記憶と照合しない。
「これ、ドラゴンの騎士の証だよ!」
美少女は赤い目を煌めかせ、両手で俺の右手を取ってぐいっと迫った。爛々とした笑顔が可愛い。いよいよ異世界ものっぽくなってきやがった。
「ドラゴンの騎士?そんな資格取った覚えないけどな……」
「運転免許証の話をしているわけではないのだよ、少年」
得意げにふふんと鼻を鳴らす美少女の張る胸は、大きな果実が黒いローブを押し除けてその輪郭を露わにしていた。
でかい上に揺れている。形も申し分ない。
「……話聞いてる?」
「もちろんだ。しっかり聞いているぞ」
「……このドラゴンの騎士の証は、僕らの世界が危機に瀕している時に現れる救世主さまにしか発現しないんだ」
手の甲のアザを改めて眺めてみる。こんなアザ元々なかったのになぁ。おそらく異世界に転生した際に、救世主となった俺に発現したものなのだろう。
「まさか、伝承の通りだったとは……」
それにしたって、このアザがドラゴンの紋章か。ドラゴンというよりは……ウシ? ヤギ? とにかく農牧っぽい顔にしか見えんのだが……もうちょいカッコいいデザインがあっただろうに……
「……話、聞いてる?」
「もちろんだ。俺の地獄耳を舐めてもらっちゃあ困る」
「……ともかく、キミにはこの世界を救ってもらうよ」
ジロリと俺を一瞥する美少女。スネているらしい。かわいい。
「僕はジータ。救世主さまの忠実な僕となることを約束された、一族の末裔さ」
よろしくね、と伸ばした白い手を右手で握った。救世主の証である、ドラゴンのアザがきらりと光る。
「俺の名前はカズキだ。よろしくな」
あれよあれよという間に、救世主となって美少女魔導師ジータと旅をすることとなった俺、カズキ。
さてはて、これからどうなることやら……
「おい! いたぞ‼︎」
そろそろ話をまとめようとしている俺の気遣いを台無しにしやがるのは、遠くでこちらを指差す筋骨隆々のガラの悪い男だった。
「あっちゃー、バレちゃったか」
しまった、とばかりに額に手を当て天を仰ぐジータ。
「……バレちゃった、といいますと?」
「……言わなきゃだめ?」
「……異世界から来た根無草の俺が、救世主としてこの世界を救うためのパートナーを選ぶ上では、信頼関係ってのは大切だと思うがね」
「……これです」
右手で見に纏うローブを広げると、そこには無数の貴金属がひしめいていた。燦々とした日の光が乱反射し、思わず目を細めた。
二人で咄嗟にしゃがみ込む。作戦タイム。
「……購入した、わけではなさそうだな」
「欲しいものは、自らの手で手に入れるものなんだよ」
「そういうセリフを吐いていいのは、夢とか希望とかもっと概念的なものに対してだからね?」
「てへっ」
「かわいいっ!」
しゃがみ込んでの作戦タイム、終わり。
腹を括って立ち上がり、向かってくる男たちの方へ向き直る。謝ろう。誠心誠意謝れば、人は分かり合えるものだ。
ここは異世界だが、怒りの表情で走り迫ってくるあの男だって人間だ。言語も、俺が聞き取れた時点で共通のものであることは間違いない。男の手に握られた拳銃のようなものの銃口がこちらに向いていようとも、言葉で伝えればわかりあえるのだ。言葉は力。ラングウィッジイズパワー。英語あってる?
バァン!
銃声と共に、俺の頬に血の線が描かれた。前言撤回。
「……逃ぃげろぉおおおおおおおおおお‼︎」
「ですよねー」
脇目も振らずに漢カズキ、全力ダッシュ。この世界に来たときの頭の鈍痛なんて忘れて、一心不乱に走る。
バァン! バァン!
やばい。めちゃくちゃ撃ってきてる。この小説がギャグテイストでなけりゃ、早々に弾が当たってジ・エンドだ。主人公補正というものは、存在するんだな。
……ん? 待てよ。
「あのさ、ジータ」
「全力疾走の最中にどうしたんだいカズキ」
「今バンバン撃たれてるあれって何?」
えらく近代的な兵器で攻撃されている現状に、疑問を持った俺。
「……あれは魔銃だね」
「魔銃?」
「魔法で作られた、この世界の武器さ。あの男はおそらく低級だろうから、物理的に弾を撃つことしかできないけど、私くらい上級になると魔力を込めて撃つこともできるんだよ」
「……なるほど、ところでジータさん」
「なんだいカズキさん」
「……なんで空飛んでるの?」
俺がぜえぜえ息を切らして必死で逃げている中、全く息を乱すことなく魔銃の説明をするジータを訝しんでみると、ローブをはためかせながら宙に浮いている。
「僕は魔導師だよ? 空を飛ぶことくらい安いものさ」
「そりゃあっ!」
俺は、低空飛行を続けるジータに飛びついた!
「きゃあっ! 急にどうしたのさっ!」
「お前ばっかり楽してズルいぞ。俺も一緒に飛ばせ!」
ジータの腰回りに抱きつく。ジータの体温が顔に伝わり、女の子特有のいい匂いが鼻をくすぐる。俺の重みでバランスを崩す中、しっかりとその絹のような太ももを撫ぜることも忘れない。不可抗力というやつだ。
「わかった! わかったから、変なところ触るのをやめたまえよぉ!」
顔を赤らめながら黄色い声を出すジータは一転、抱きつく俺の右手に手を当て何かを念じ始めた。
「……数多の風の精たちよ。現世に降り立った救世主に風の御加護を与えたまえ」
それっぽい詠唱と共に、俺の右手のアザが緑色に光った。瞬間、俺の身体が軽くなった。
「もう大丈夫。精霊の加護がカズキを風に乗せてくれるよ」
「……本当だ、浮いてる」
ジータに抱きつくのをやめてみると、低空ではあるが、自分の身体が宙に浮いている。先程全力疾走していた俺に並走していたジータと同じスピードで、俺も空中を並走していた。いよいよ、本当に異世界ファンタジーっぽくなってきやがったな。
バァン! バァン!
変わらず追手が背後から魔銃で撃ってくる。
「カズキさん」
「なんだいジータさん」
「後ろから来てる奴、倒しちゃってもいい?」
貴金属を強奪しておきながら、追手を倒すと言い出したよこの子。発想が悪魔的だ。
「謝っても許してくれなさそうだし、あの追手の元締めが、魔王軍の幹部なんだよ」
ジータはくるりと向き直った。釣られる形で俺も向き直る。
「……魔王軍?」
「ああ、この世界を混沌に陥れている、悪の元凶さ」
地面に降り立つと、渦巻く魔力の余りの強さから、可視化されたバチバチといった魔力の奔流がジータを纏った。パタパタと、身に纏ったローブが舞い上がり、貴金属がジャラジャラと音をたてる。ローブに隠れていた大きな胸がはっきりと露わとなり、俺の目は揺れるそれに釘付けとなった。
「カズキはおっぱいばっかりだね……やあっ!」
ゴォオオオオオオ!!!
呆れ顔のままジータは叫んだ。眼前に挙げた両手が一瞬光ったかと思うと、橙色の閃光が魔銃を構えて迫る男の元へ奔る。一瞬の静寂の後、轟音と共に火柱が昇り、断末魔をも許さぬうちに追手は消炭となった。
開いた口が塞がらなかった。
「ま、ざっとこんなもんかな」
両手を払うように打ちつけるジータの煌めく笑顔は、地面になおも燃え残る炎によって赤く揺らめいていた。
こっわ。
「ところで、カズキは本当に僕のおっぱいが好きだねぇ」
「……はっ、いや、そりゃ大好きだが、それは男の子のワールドスタンダードというか」
この子が、俺の視線によるセクハラにもし怒ったら、間違いなく殺される。
「不可抗力なので、なんとか許していただければよろしいでござらんことば孤児を得ずと言いますか」
「別に怒ってないよ」
にっこり笑うジータ。
「救世主さまのモチベーションになるのなら、安いものさ」
自分で自分の胸を持ち上げるジータ。潰れて揺れるその様があまりにも扇情的すぎやしませんか……
「そうだ……この世界を救った暁には、僕の身体を好きにしていいよん」
「ヘアァッ!」
とんでもなく魅力的な提案に円谷さんちの巨大ヒーローのような鳴き声をあげてしまう。
この身体を、好きに? あんなことやこんなことをこの俺ができるというのか? 素晴らしい。実に素晴らしい。金銀財宝貰うよりもよっぽど素晴らしい。
「……では、世界を救った暁には、君のおっぱいをいただこう」
「……いいだろう」
漢カズキ。美少女のおっぱいの為に、世界を救うことを決意。
(……身体と聞いて、"おっぱい"としか言わないところが、童貞臭くてかわいいなぁ)
「……? 俺の顔に何かついてるか?」
「……なんにも」
ジータは笑った。
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