4 / 14
菌編
赤い指?!
しおりを挟む「お二人は今どうしているのですか?」
「施設に入って治療中だ。長年の薬が体に染み込んでいるからね。簡単には体から抜けないみたいだ」
「そうですか……」
「カレン、今まですまなかった」
兄様は頭を深々と下げた。
「助け出してくれた時に謝罪は受け入れたわ。それにもう説明は要らないわ。ほとんどキャサリン様が説明してくれたもの」
兄様に前世の記憶の話はしていない。
と言うかどう説明したらいいのかわからないもの。
オスカー殿下がわたしの息子のミハインだったなんて……
彼は前世の記憶がある人をはっきり把握していた。わたしなんてあの場にいなければまだ思い出すこともなかっただろう。ただ王都はあまり居たくない場所で、飛び降りる夢はいつも見る悪夢でしかなかったはず……
頭の中はぐるぐる。考えがあっちに行ったりこっちに行ったりして、自分自身でもどうしていいのかわからない。
「俺は王太子殿下に相談していたんだ。両親の行動は異常過ぎた。さらにキャサリンの言動もおかしい。それに俺自身もキャサリンといるとカレンに対して悪感情が湧いてくる。
それで調べ始めたんだ、キャサリンの実家のことを……そしたら怪しい香油を外国から手に入れていたことがわかった」
「カレンの知らない両親の過去なんだーーー」
そう言って両親の『真実の愛』の話を語られた。
なんて馬鹿らしい話を聞かされるのだろう。そう思いながらも前世の記憶の陛下とセリーヌ様のことを思い出した。
お二人もまた『真実の愛』で結ばれていたのかもしれない。
「キャサリンは男爵家の養女なんだ。たぶん公爵家に出入りさせるために明るくて可愛らしい向上心の高い女の子を養女にしたんじゃないかと思っている」
「そう」
ーーーそんなこともうどうでもいいわ。
「ダルト男爵は大切な幼馴染を亡くしているんだ。それが父上の元婚約者なんだよ」
「それは?」
その言葉には驚いた。
ーーーあの二人は他人を不幸にしてまで結ばれていたの?
「王太子殿下に聞いたんだが両親の結婚は自殺者まで出しての結婚だったからその当時はかなり問題視されたらしい。それにその揉め事の中生まれたのが俺だったんだ。
男爵がどんな気持ちでそんなことをしたのかは今捕まえて取り調べているから後日わかると思う」
兄様は大きな溜息をついた。そして一口だけ紅茶を飲むと話を続けた。
「『魅了の香油』はあの二人にだけ効いたみたいなんだ。カレンに罪悪感を抱きながらも今更素直に娘と向き合えずにいたからつけ入りやすかったんだと思う」
「ふふっ、我が子に愛情すらかわかない親だから?産まれてきた我が子が嫌いな義母に似ているから可愛くなかったから?罪悪感を抱く?あり得ないわ」
「それは……確かにそうかもしれないが、なんとか修復しようとしてはいたと思うんだ……」
そして香油の話になり、
「その香油がこの国に出回ると困るから色々調べることになった。王太子殿下も協力してくれたんだ。カレンへの仕打ちは酷いものだったけど君が領地へ行ってくれたのでとりあえず要観察になったんだ。
それから俺は殿下の協力のもと、青い薔薇の香油について調べる事になった」
ーーー青い薔薇?
前世でも見たことがある。確か離宮でセリーヌ様が大切に育てていたわ。
「そして今年になってカレンは一年に一度だけ王都に来ていただけだったのに両親が王都の学校へ通わせると言い出した。
それは魅了されているからか、魅了が解けている時にそう思ったのかよくわからなかった。
俺はこの香油の魅了を解くための薬を探して回っていたから、屋敷にはあまり近寄らなかったんだ。
両親は長年の香油で、ほとんどキャサリンを愛して娘のように扱ってカレンを嫌っていた。
嫌っているのに会いたがり、嫌っているのにそばに置きたがる。完全に魅了されているわけではない。
キャサリンに会わない時には、カレンの写真をじっと見つめている姿を何度となく見ていたからね。だけどキャサリンに会うと、またカレンに対して憎悪が湧くようだった。
そんな二人を俺はどうすることもできなかった」
「兄様……キャサリン様の魅了の所為だけじゃないわよね?公爵夫婦はわたしが嫌いだった。そこが根底にあるから二人がわたしを嫌い疎んじた。それだけの話だと思います」
ーーー今更なのよ。
そして前世での青い薔薇の記憶も今更だわ。
あの青い薔薇はもう王城にはないのだろう。あれば王太子殿下も兄様も何か言ったはずだもの。
陛下はもしかしたら………魅了されていたの?
もう今になってはわからない。ただの憶測でしかないわ。
兄様の話は最後の方はうわの空で聞いていた。
キャサリン様のしたことはもうどうでもいい。もちろんマキナ様としては考えないといけないかもしれないけど。
それよりも……ううん、もう前世のこと。今更なのよ。
だけど、わたしはこれからどう生きたらいいのだろう。
カレンとして生きてきた。前世なんて関係ない?そうは思えない。だってずっと北の塔のこと夢で見てきたもの。この王都にいるのが嫌だったのも前世の記憶の所為だったし。
エマが心配して何度か部屋を覗いてくれた。
「心配しないで」
わたしはそう言って作り笑いで返すしかなかった。
明日の学校、セルジオとオスカー殿下に会いに行こう。
そう決心して眠れぬ夜を過ごした。
「施設に入って治療中だ。長年の薬が体に染み込んでいるからね。簡単には体から抜けないみたいだ」
「そうですか……」
「カレン、今まですまなかった」
兄様は頭を深々と下げた。
「助け出してくれた時に謝罪は受け入れたわ。それにもう説明は要らないわ。ほとんどキャサリン様が説明してくれたもの」
兄様に前世の記憶の話はしていない。
と言うかどう説明したらいいのかわからないもの。
オスカー殿下がわたしの息子のミハインだったなんて……
彼は前世の記憶がある人をはっきり把握していた。わたしなんてあの場にいなければまだ思い出すこともなかっただろう。ただ王都はあまり居たくない場所で、飛び降りる夢はいつも見る悪夢でしかなかったはず……
頭の中はぐるぐる。考えがあっちに行ったりこっちに行ったりして、自分自身でもどうしていいのかわからない。
「俺は王太子殿下に相談していたんだ。両親の行動は異常過ぎた。さらにキャサリンの言動もおかしい。それに俺自身もキャサリンといるとカレンに対して悪感情が湧いてくる。
それで調べ始めたんだ、キャサリンの実家のことを……そしたら怪しい香油を外国から手に入れていたことがわかった」
「カレンの知らない両親の過去なんだーーー」
そう言って両親の『真実の愛』の話を語られた。
なんて馬鹿らしい話を聞かされるのだろう。そう思いながらも前世の記憶の陛下とセリーヌ様のことを思い出した。
お二人もまた『真実の愛』で結ばれていたのかもしれない。
「キャサリンは男爵家の養女なんだ。たぶん公爵家に出入りさせるために明るくて可愛らしい向上心の高い女の子を養女にしたんじゃないかと思っている」
「そう」
ーーーそんなこともうどうでもいいわ。
「ダルト男爵は大切な幼馴染を亡くしているんだ。それが父上の元婚約者なんだよ」
「それは?」
その言葉には驚いた。
ーーーあの二人は他人を不幸にしてまで結ばれていたの?
「王太子殿下に聞いたんだが両親の結婚は自殺者まで出しての結婚だったからその当時はかなり問題視されたらしい。それにその揉め事の中生まれたのが俺だったんだ。
男爵がどんな気持ちでそんなことをしたのかは今捕まえて取り調べているから後日わかると思う」
兄様は大きな溜息をついた。そして一口だけ紅茶を飲むと話を続けた。
「『魅了の香油』はあの二人にだけ効いたみたいなんだ。カレンに罪悪感を抱きながらも今更素直に娘と向き合えずにいたからつけ入りやすかったんだと思う」
「ふふっ、我が子に愛情すらかわかない親だから?産まれてきた我が子が嫌いな義母に似ているから可愛くなかったから?罪悪感を抱く?あり得ないわ」
「それは……確かにそうかもしれないが、なんとか修復しようとしてはいたと思うんだ……」
そして香油の話になり、
「その香油がこの国に出回ると困るから色々調べることになった。王太子殿下も協力してくれたんだ。カレンへの仕打ちは酷いものだったけど君が領地へ行ってくれたのでとりあえず要観察になったんだ。
それから俺は殿下の協力のもと、青い薔薇の香油について調べる事になった」
ーーー青い薔薇?
前世でも見たことがある。確か離宮でセリーヌ様が大切に育てていたわ。
「そして今年になってカレンは一年に一度だけ王都に来ていただけだったのに両親が王都の学校へ通わせると言い出した。
それは魅了されているからか、魅了が解けている時にそう思ったのかよくわからなかった。
俺はこの香油の魅了を解くための薬を探して回っていたから、屋敷にはあまり近寄らなかったんだ。
両親は長年の香油で、ほとんどキャサリンを愛して娘のように扱ってカレンを嫌っていた。
嫌っているのに会いたがり、嫌っているのにそばに置きたがる。完全に魅了されているわけではない。
キャサリンに会わない時には、カレンの写真をじっと見つめている姿を何度となく見ていたからね。だけどキャサリンに会うと、またカレンに対して憎悪が湧くようだった。
そんな二人を俺はどうすることもできなかった」
「兄様……キャサリン様の魅了の所為だけじゃないわよね?公爵夫婦はわたしが嫌いだった。そこが根底にあるから二人がわたしを嫌い疎んじた。それだけの話だと思います」
ーーー今更なのよ。
そして前世での青い薔薇の記憶も今更だわ。
あの青い薔薇はもう王城にはないのだろう。あれば王太子殿下も兄様も何か言ったはずだもの。
陛下はもしかしたら………魅了されていたの?
もう今になってはわからない。ただの憶測でしかないわ。
兄様の話は最後の方はうわの空で聞いていた。
キャサリン様のしたことはもうどうでもいい。もちろんマキナ様としては考えないといけないかもしれないけど。
それよりも……ううん、もう前世のこと。今更なのよ。
だけど、わたしはこれからどう生きたらいいのだろう。
カレンとして生きてきた。前世なんて関係ない?そうは思えない。だってずっと北の塔のこと夢で見てきたもの。この王都にいるのが嫌だったのも前世の記憶の所為だったし。
エマが心配して何度か部屋を覗いてくれた。
「心配しないで」
わたしはそう言って作り笑いで返すしかなかった。
明日の学校、セルジオとオスカー殿下に会いに行こう。
そう決心して眠れぬ夜を過ごした。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
母から娘へ
はなこ
児童書・童話
最愛なる娘に
贈るつもり。
出産を夫にわかってもらうより。
この素晴らしさ
我が子に伝えたい。
出産が痛い訳ない
そう言わなければ
いたわってもらえない。
それは、母子の危機だから。
痛いだけだったら?
出産は、何かの罪?
おんなと子
その子というのは、
後に、男にもなる訳で。
それは、みんなの秘密。
こんなに衝撃的に
逝くことは
出産以外ないもの。
医学がこれだけ発達した現代でも
おんなは、普通に
命がけで挑む。
絶対に引き返せない。
子と自分。
どちらかたとえ無くなったとしても
産む。

【完結】王の顔が違っても気づかなかった。
BBやっこ
児童書・童話
賭けをした
国民に手を振る王の顔が違っても、気づかないと。
王妃、王子、そしてなり代わった男。
王冠とマントを羽織る、王が国の繁栄を祝った。
興が乗った遊び?国の乗っ取り?
どうなったとしても、国は平穏に祭りで賑わったのだった。
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
【総集編】日本昔話 パロディ短編集
Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。
今まで発表した
日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。
朝ドラの総集編のような物です笑
読みやすくなっているので、
⭐️して、何度もお読み下さい。
読んだ方も、読んでない方も、
新しい発見があるはず!
是非お楽しみ下さい😄
⭐︎登録、コメント待ってます。
児童絵本館のオオカミ
火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる