27 / 29
26、オーディンの焦り
しおりを挟む
ヴァルハラの寝室に結界を張り、眠るリックを残して私はグラニに跨がり、死者の国、ヘルヘイムへと天を駆けた。
ミーミルの父親であるマヤ。
その妹、ヤミーが、女王ヘルとして治めている死者の国、ヘルヘイム。
リックが聞いたロキの企みが、この先、バルドルの悪夢が現実となって襲ってくるのかを巫女に占わせるためにやって来た。
此処が氷と炎が狭間の地、ギンヌンガガプだな。
「この地に眠りし、預言のシャーマン、巫女オルガよ! 主神オーディンが命ずる。よみがえり、我が異母弟の為にその能力をここに示せ!」
「……。この地に眠り安息を得たわたくしを呼び戻されたのは貴方様か?」
「巫女オルガ、我が異母弟、バルデルスの運命を占って貰う」
「……。光神バルデルス、不死身となれど、悪しき灰色狼の策略にて没する。光失いし世は大いなる冬を迎え戦乱の世となる。神々の死戦に終わりをもたらす者も、光神バルデルス。オーディン様、時が満ちフィンブルヴェドが終わったならば、貴方様ではなく、他の若君を御寄越し下さいませ。総ての者に慈愛の心を持つ若君を」
「バルドルの死は免れぬと言うか。我では救えぬと?」
「オーディン様は主であらせられる。また、これから始まるフィンブルヴェドに備えるのです。貴方様のお身内の者が犠牲となって神々の戦も終息致しましょう」
「……。犠牲となる者は我が血縁か?」
「左様にございます」
「フィンブルヴェドを回避することは出来ぬのか?」
「悪しき灰色狼が既に暗躍しております。光神バルデルス様の運命を変えることは出来ますまい」
「巫女オルガ。若き慈愛の者を寄越すまで、暫し眠るが良い」
「仰せのままに」
灰色狼とはロキのことであろう。
だがどうやって不死身となったバルドルを殺す?
光を失った世は冬をむかえよう。
バルドルの死によって戦乱の世が来ると言うのか!
既に暗躍済みということは、ロキではない者が手を貸すということか?
誓約により、何ものにも傷つけることが出来ぬバルドルを殺すだと?
いや! 誓約が出来ぬ者がいたではないか!
森の神ミーミルに預けられた幼きモノ、若木であったミスティルティンが!
急ぎ伯父上に会わねば!
「グラニ! ミーミルの泉に行くぞ! 急ぐのだ!」
裏切り者は伯父上か?!
いや、伯父上はバルドルの為に不死身となる知恵をバルドルの母、フリッグに与えた。
ならば、誰が?!
「ミーミル! 伯父上!」
「ん? オーディン? おお! リックは治療出来たのだな!」
「ミーミル伯父上! 私のことは良いのです! バルドルの命が危ない! 誓いを立てられぬ程に幼かったミスティルティンは、今、何処に?!」
「ん? ミスティルティンか? 確か黄金のヤドリギで槍を作るとか言って先程ロキが枝ごと持って行ったぞ?」
「伯父上?! ミスティルティンは誓約をしていない! 槍ならばバルドルを傷つけられるではないか!」
「いや、ロキなどバルドルにかすり傷一つ付けられぬぞ? 何を慌てておるのだ?」
「裏切り者がロキ一人ではないのです! 奸計に惑わされる者がバルドルの命を絶つのだ!」
「裏切り者が?! だが、何者もバルデルスを傷つけぬと誓約があったではないか?!」
「ロキはトリックスターです。何か方法を見つけたのだろう。急ぎバルドルの所に行くぞグラニ!」
何とか間に合うか?
「急ぐのだグラニ!」
ミーミルの父親であるマヤ。
その妹、ヤミーが、女王ヘルとして治めている死者の国、ヘルヘイム。
リックが聞いたロキの企みが、この先、バルドルの悪夢が現実となって襲ってくるのかを巫女に占わせるためにやって来た。
此処が氷と炎が狭間の地、ギンヌンガガプだな。
「この地に眠りし、預言のシャーマン、巫女オルガよ! 主神オーディンが命ずる。よみがえり、我が異母弟の為にその能力をここに示せ!」
「……。この地に眠り安息を得たわたくしを呼び戻されたのは貴方様か?」
「巫女オルガ、我が異母弟、バルデルスの運命を占って貰う」
「……。光神バルデルス、不死身となれど、悪しき灰色狼の策略にて没する。光失いし世は大いなる冬を迎え戦乱の世となる。神々の死戦に終わりをもたらす者も、光神バルデルス。オーディン様、時が満ちフィンブルヴェドが終わったならば、貴方様ではなく、他の若君を御寄越し下さいませ。総ての者に慈愛の心を持つ若君を」
「バルドルの死は免れぬと言うか。我では救えぬと?」
「オーディン様は主であらせられる。また、これから始まるフィンブルヴェドに備えるのです。貴方様のお身内の者が犠牲となって神々の戦も終息致しましょう」
「……。犠牲となる者は我が血縁か?」
「左様にございます」
「フィンブルヴェドを回避することは出来ぬのか?」
「悪しき灰色狼が既に暗躍しております。光神バルデルス様の運命を変えることは出来ますまい」
「巫女オルガ。若き慈愛の者を寄越すまで、暫し眠るが良い」
「仰せのままに」
灰色狼とはロキのことであろう。
だがどうやって不死身となったバルドルを殺す?
光を失った世は冬をむかえよう。
バルドルの死によって戦乱の世が来ると言うのか!
既に暗躍済みということは、ロキではない者が手を貸すということか?
誓約により、何ものにも傷つけることが出来ぬバルドルを殺すだと?
いや! 誓約が出来ぬ者がいたではないか!
森の神ミーミルに預けられた幼きモノ、若木であったミスティルティンが!
急ぎ伯父上に会わねば!
「グラニ! ミーミルの泉に行くぞ! 急ぐのだ!」
裏切り者は伯父上か?!
いや、伯父上はバルドルの為に不死身となる知恵をバルドルの母、フリッグに与えた。
ならば、誰が?!
「ミーミル! 伯父上!」
「ん? オーディン? おお! リックは治療出来たのだな!」
「ミーミル伯父上! 私のことは良いのです! バルドルの命が危ない! 誓いを立てられぬ程に幼かったミスティルティンは、今、何処に?!」
「ん? ミスティルティンか? 確か黄金のヤドリギで槍を作るとか言って先程ロキが枝ごと持って行ったぞ?」
「伯父上?! ミスティルティンは誓約をしていない! 槍ならばバルドルを傷つけられるではないか!」
「いや、ロキなどバルドルにかすり傷一つ付けられぬぞ? 何を慌てておるのだ?」
「裏切り者がロキ一人ではないのです! 奸計に惑わされる者がバルドルの命を絶つのだ!」
「裏切り者が?! だが、何者もバルデルスを傷つけぬと誓約があったではないか?!」
「ロキはトリックスターです。何か方法を見つけたのだろう。急ぎバルドルの所に行くぞグラニ!」
何とか間に合うか?
「急ぐのだグラニ!」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる