君の小水が飲みたい

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15、やっぱりギャラルホンじゃん

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「そうだ! アウズンブラのミルクをミーミルさんに届けてあげよう!」

「おん?」「ウオン!」

「ゲリ、ミーミルの泉に寄り道して帰ろうね?」

「おん」

 フレキはあの泉の水が好きだからご機嫌だ。
 でもゲリはなんだか気が進まない?
 珍しいことだ。二頭は大体、同じことを喜ぶのに。

「ミーミルさんだ! ゲリ、頼んだぞ、ミーミルさんの所まで行ってくれ」

「おん」

 フレキはさっさと先に行って泉に顔を突っ込んで水を飲んでる。
 ゲリはなんだかトボトボと歩いてオレを連れて泉の辺に腰をおろす。
 やっぱり元気が無い?

「ゲリ、リック。遊びに来たのか?」

「ミーミルさんこんにちは! 今日はアウズンブラのミルクを持って来ました」

「お?! そうか、そうか。よし、コレに入れてくれ」

 ゲリがなぜか前足で自分の両耳をおさえた。
 ミーミルさんの手には、何か大きな動物の角で出来た長い器。
 コップにするみたいだな、差し出されてるし。
 オレはそこにアウズンブラのミクルを注ぐ。
 ちょっと注ぎにくいぞ?!

「ゴクゴク、ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴク。こいつはえらく美味くなったな! もう一杯くれ!」

 オレが注ぐとまた飲んでいる……。けどね、息つぎしねえのかよ?! 一気飲みだよ。

「っかぁ~! 美味い! よし、礼だ! 泉の水を飲ませてやろう!」

 ミーミルさんはそう言って、ミルクを飲む時使った角のコップに泉の水をすくってくれた。

「ありがとうございます。いただきます」

 デカイオッサンと間接キスだよ~?!
 器は洗ってくれよ~!
 まあ、飲むけどさ。

「ごく。美味しいです。ゴクゴク、ゴクゴク。ゴクン。ごちそうさまです」

 ミルクが少し混ざっているせいか、前回飲んだ時と、味が違った。
 なんだかスッキリとした味だった。不思議。
 ……。
 おい。オイオイオイオイ!
 ミーミルの泉の水~! ナニ勝手に仕事してんだよ?!
 おうふ。
 原因判明。
 ミーミルさ~ん?! あなた、コレをこの泉で使わせちゃダメじゃん!
 オレが泉の水を飲んだ時に使った器。勝手に『鑑定』されてるぞ?!
 頼んで無いわ! 泉の水~!
 コレ、コップじゃなかった。《ギャラルホン》じゃん!
 ダメじゃん~! オレ、また賢くなっちゃたじゃん!

「ミーミルさん、コレ、ギャラルホンですよね?」

 オレは器……。《神器》って、おい。
 角笛をミーミルさんに渡しながらたずねた。
 そう、角笛。そりゃゲリが嫌がるわ!
 《鳴り響く》《叫ぶ》《ギャルの角笛》って出てるし!
 おい。オッサン! あさって向いてんじゃねえ!
 そして、あからさまに『しまった!』って顔をするんじゃねえ!

「リック。ギャラルホンはお互い見なかったことにしよう!」

 ぐ、確かに。《知恵》と《知識》で色々とヤバイ案件が、ズラリと渋滞を起こしている。
 よし、知らん、知らん、知らん! オレは何も見なかった!

「はい。何も見ませんでした! じゃあ、オレは帰ります!」

 ミーミルの泉。
 ギャラルホンで水をのむと……。
 《知恵》と《知識》の向上が半端ねえ。
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