君の小水が飲みたい

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13、タマゴからひよこ

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「ゲリ、フレキ、一旦ヴァルハラに戻って、コモンさんに謝ってから、散歩だからな。勝手に出てきちゃったら、心配かけるだろ? 行くぞ!」

「おん!」「ゲフッ!」

 ゲリ、お返事可愛いじゃねえか! だが反省の色は全く無いな!
 ……。フレキ、お前の返事、ソレ、ゲップだよな?!
 オレの飲んでゲップで返事してんじゃねえよ!

「ハア~」

 オレはグリさんとフッラさんに『行ってきます』の挨拶をしてクロネコ亭の裏口から出た。
 こんなデカイ狼が二頭も店から出て来たらお客さんが驚いちまう。

「「ウオン!」」「うわあ!」

 あ、前から騎士団の人達が騎獣に跨がって走って来る!
 止めてくれ! このままじゃ正面衝突するぅ~!

 ズザー! ザザザザッー! タスン。ポス。
 
 ヒイイイイイッ! ゲリ、フレキ、なんで騎獣が急ブレーキで止まってくれるのに、追い越しちゃうんだよ?!
 しかも、飛び越えなくても良くね?!
 ゲリもオレを乗せてるんだからな?!
 はじに寄ればいいんじゃね?!

「待て! お前達!」

「ゲリ、ゲリ! 止まって! うわあ~! なんで走るんだよ~?!」

 げえ~?! 追いかけて来る?!
 恐いよ! なんで?!
 てか、ゲリとフレキ、お前ら、なんで振り切るんだよ~!

「ゼエ、ゼエ、ゼエ、ゲリ、ゼエ、フレキ、勘弁しろよ~」

 二頭は騎士達を振り切ってヴァルハラに着いてしまった。
 コモンさんと三人の騎士。オレはどう説明すりゃあ良いんだよ?!
 コモンさん曰く、ゲリとフレキが逃げ出したので、騎士団に連絡して探してもらったってさ。
 騎士団員が捜索中に二頭を発見して、制止を促し、逃走されて捕獲失敗。
 ダメじゃん!
 オレ、レイグンマスターとして雇われてるけど、狼のゲリとフレキも基本的にオレが世話してるんだよ?
 普段は結構言うこと聞いてくれるのにどうして?
 何で今日はオレの制止を振り切った?

「大烏が帰って来たぞ。アレ、はフギンの方か?」

 コモンさんが見上げる方向に遠近感ガン無視の黒い影が見える。

 バサバサバサバサバサバサ!

「カア~ア!」 ポトッ。

「あ、はいそうですね。フギンお帰り。お土産、何時もありがとうな」

手の平に落とされた丸い光り物を握り、お礼を言う。

「カア!」

 大烏のフギン。イイお返事だ。
 オレが話しをすると首をクリンッってかしげる仕草がバリ可愛いんだよ!
 デカイけど。
 で、オーディン様の仕事を手伝って跳び回っているんだけど、何時もオレに土産をくれるんだ。
 烏ってさ、光り物が好きみたいで、大抵こんな感じの手の平に納まるサイズのキラキラしたモノをくれる。
 で、今日のキラキラモノは……。

「おい。リック、それは、金のタマゴだろう?!」

「タマゴですかね? やっぱり……。コレ、どうするのが正解っすか?」

「へえ~。君、ソレ、取得すると、横領じゃないかなぁ?」

 げ?! 三人の騎士で一番美形の男。
 オレの手の平にあるタマゴに手を伸ばす。
 
「止めろ!」

 カブン!

 あああ~。コモンさんの声は、どちらに向けての発言だったか、わからないけど。
 噛んでるよね?
 噛まれたよね?

「フギン。大丈夫だよ? ほら、取られてないからね? 離そうか?」

「ガア! ガア!」

「おい! お前! どうしてくれる?!」

 うわあ。ガントレットがへこんでる。
 でも、手を出したのはこの騎士の方だよね?
 コモンさんの方を見る。

「ロキ、フギンがリックに渡した物は、横領にならない。手を出したお前が悪い」

「金のタマゴだぞ?! オーディン様の物だろう!」

「フギンはオーディン様に渡していない。リックに渡したんだ。横取りするんじゃない!」

「クッ、この!」

 切られる?!

「ガア!」「ヴオンッ!」「ヴ~!」「「「止めろ!」」」

 バサバサバサバサバサバサ!

「あ、ありがとうな、ムニン。お前、ケガは無いか?!」

 ちょうど飛んで帰って来たムニンが守ってくれた。
 からだをはって。
 羽根が落ちていないので、ロキの抜いた剣には当たってなさそうだ。

「ロキ、いい加減にしろ。オーディン様の大烏に怪我などさせたら殺されるぞ?」

「トールの言う通りだ。俺達はゲリとフレキの捜索を依頼されたんだ。無事、見つかったんだから行くぞ」

「リック君? ロキが悪かったね。じゃあね」

「クソッ! 行くぞ! トールッ、オーティヌスッ!」

「で、結局、このタマゴは?」

「この騒動でタマゴの心配かリック。大丈夫か?」

「いや、みんなで守って貰ったから。ありがとうございます。ムニンもありがとうな? でも武器の前に飛び込むのは止めてくれるかい? お前が怪我をしたら大変だろう?」

「かあ~!」
 
「ああ、良いお返事だ。いい子だな、可愛いぞ!」

 デカイけど。

「あ~、リック。お前は知っているかも知れんが、その、食べ物を渡す行為は、求愛行動だぞ?」

「え?! オレ、フギンに求愛されたの?!」

「カア~ン!」

「コモンさん。このタマゴ、益々、どうしましょう?」

 コツコツッ、パリッ!

 んえ? げ?! ひよこが生まれた。

「ひよ、ひよ、ひよ」

「コモンさん。こんなのが出て来ました」

「あ~、リック。手羽先確認してみろ」

「……。雌ですかね?」

「どれ。ああ、雌だな。コイツ多分、ソレを産むぞ?」

「え?! 冗談でしょう?!」

 コモンさんの言う『ソレ』は、オレの手の平にまだ乗っている。
 ひよこの入っていた殻。
 カチャカチャと金属音がする。
 『鑑定』してみる。
 《純金の殻》マジか。
 ついでにひよこを『鑑定』……。
 《金のタマゴを産むがちょうの雛》ですよね~。

「コモンさん、要る?」

 オレはトラブルの素はいらねー。
 モフモフはとても気になるが。

「リック、諦めろ。そいつの親はお前だ。刷り込みがされちまってるぞ?」

 ですよね~! ふわふわひよこゲットだぜ~!(ヤケクソ)
 こうしてオレは金のタマゴを産むがちょうを手に入れた。
 


 






 
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