君の小水が飲みたい

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9、ヘイムダルはビブレスト橋の番人からグァルハラの門番に転職したの?!

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 ユミルが生んだ子供は二人だった。
 まず、男の子ミーミルが生まれ、しばらくして女の子ベストラが生まれた。
 二人はユミルと同じ巨人で、神気を持っていた。
 ヤマはユグドラシルの根元に泉を見つけ、そこで暮らし始める。

「ユミル、この泉の水は素晴らしいよ? さあ飲んでご覧」

「あ、本当だ! 凄く美味しいね?! 誰にも汚されないように、息子のミーミルに見張らせようよ!」

「そうかい? ユミルの好きにすれば良い」

「うん。じゃあこの泉はミーミルの泉だね!」

 神気を持っていた巨人のミーミルは、泉に知恵と知識を隠していく。
 泉は、ミーミルが集めた知恵と知識で溢れている。
 だが、ただ掬って飲んでも知恵も知識も手に入らないようにミーミルは工夫をしていた。
 ミーミルが自身の賢さを高めるために、隠していた知恵と知識を掬って飲むための特別な器。
 それはギャラルホンと言う角笛で、彼はその角笛も泉に隠していた。
 実はこのギャラルホン。天山に住むヘイムダルの角笛だった。
 ビブレスト橋という、アースガルズと人間の国ミズガルズにかかる虹の橋がある。
 ヘイムダルはその橋の番人をしていた。
 ヘイムダルはとても耳が良く敵が攻めて来るのを角笛ギャラルホンを吹いて伝えていた。
 ビブレスト橋の袂はヘイムダルの住む天山ヒミョンビョルグの近く。
 ヘイムダルは寝る事もなく番人をする。
 ミーミルはそんなヘイムダルから角笛を奪い、泉に隠して、水飲みに使っていたのだ。
 角笛をなくしたヘイムダルはオーディンの薦めで、天山ヒミョンビョルグからアースガルズのグラズヘイム神殿にあるオーディンの住まい、グァルハラに引っ越して、門番となる。
 
 ところでミーミルの妹、ベストラはどうしているかと言うと。
 オーディンの父親、ボルと結婚してオーディンを生んでいた。
 つまりミーミルはオーディンの伯父さんにあたる。
 甥っ子可愛さにビブレスト橋の番人をオーディンの住まうグァルハラの門番に転職させた。という訳?!
 そんな事してイイのかミーミル?!
 ヤマは思ったが……。

「知らん、知らん、知らん! 私は何も見なかった!」

 なかった事にしたらしい。


「ヘイムダル、グァルハラの門番とビブレスト橋の門番を兼任してくれ」

「?! ははい?! オーディン様?!」

 たんにヘイムダルの仕事が増えただけだった。
 眠らない男ヘイムダル。
 今日も彼は冷水を浴びて目を覚まし、耳をそばだてて見張り番をしている。

 
 
 

 
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