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5、死者の国ヘルヘイム
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この世界はユグドラシルという世界樹から出来ている。
ユグドラシルの第一層には、アース神族の国、アースガルズ。
妖精の国、アルフヘイム。
ヴァン神族の国、ヴァナヘイムの三国。
第二層には、小人の国、ダニヴェリール。
黒い妖精の国、スヴァルトアールヴヘイム。
人間の国、ミズガルズ。
巨人の合衆国、ヨトゥンヘイム。
そして私がいるのは最深層。
第三層にある死者の国ヘルヘイム。
私の名はヤマ。仕事はヘルヘイムにやって来る死者達を、氷の国ニグルヘイムに送るか、炎の国ムスペルヘイムへ送るのかを決める事だ。
だが、死者の国で死んだ者達はヘルヘイムに埋葬される。
今日、預言のシャーマンであった、巫女オルガが亡くなった。
彼女の亡骸は、氷の国ニグルヘイムと炎の国ムスペルヘイムの間、ギンヌンガに埋めてやろうと思う。
氷の国と炎の国の間に出来た深い裂け目ギンヌンガガプ。
ニグルヘイムの冷気とムスペルヘイムの熱気によって毒の霧が立ち込め、滴る猛毒の露でこのギンヌンガは死者の国で最も危険な土地である。
「《予言の巫女》オルガよ。この地で誰にも邪魔されることなく、静かに永遠の眠りにつくがよい」
「ん? なんだお前は?! 何故、猛毒の露を嘗めている?!」
「ぅんも~お~!」
「うるさい……。牛か? お前が連れているのは巨人の赤子ではないか? 何故此処にいるのだ?!」
「ぶも~お」
「あ、止めろ、私にそんなモノを押し付けるな! あ、こら! 待たんか! 置いて行くんじゃない!」
「ぶも?」
「くそっ! しかたない。お前も連れて来た責任をとって、私とこの赤子を一緒に育てるのだぞ!」
「も~お!」
「はあ~。その赤子を連れて私に着いて来なさい」
私は赤子の名をユミル、牛の名をアウズンブラと名付けて育てることにした。
「ほんぎゃ~!、ほんぎゃ~!」
「ユミル。うるさい赤子だ。もう腹が減ったのか? いくら巨人でも大きくなりすぎるぞ?」
ブャー!
「アウズンブラ、ユミルの授乳時間なのはわかったから、散乳を止めろ! 私の家が乳臭くてかなわん!」
ユミルは巨人である。
だが規格外の大きさに育ってしまった。
猛毒の露を嘗めていたアウズンブラの乳を飲んで育った為に、どんな毒も効かない丈夫な巨人に育った。
これ以上は、物理的に私の家で育てられなくなったので、そろそろヨトゥンヘイムへ連れて行こう。
父のヴィヴァスヴァットと母サラニューはこのヘルヘイムを治める国王夫妻だ。
私がこの国を出るには、王権を放棄する必要がある。
死者の国の国王など、面倒なモノに私はなりたくなかったので丁度良い。
ユミルの為にアウズンブラを連れて第一層のヨトゥンヘイムへ行くとしよう。
「くっ! お兄様! 逃げましたわね?!」
「ヴィヴァス? あなたヤミーを女王になさるおつもりですの?」
「ああサラニュー。ヤマには地獄の番人となって貰う。ヤミー。お前がこのヘルヘイムの国王になるのだよ」
「お父様?! くっ! お兄様、覚えてらっしゃいませ!」
「ん?! なんだか背中がぞくぞくしたぞ?! ユミル、アウズンブラ。今日はもうこの辺に泊まろう」
ユグドラシルの第一層には、アース神族の国、アースガルズ。
妖精の国、アルフヘイム。
ヴァン神族の国、ヴァナヘイムの三国。
第二層には、小人の国、ダニヴェリール。
黒い妖精の国、スヴァルトアールヴヘイム。
人間の国、ミズガルズ。
巨人の合衆国、ヨトゥンヘイム。
そして私がいるのは最深層。
第三層にある死者の国ヘルヘイム。
私の名はヤマ。仕事はヘルヘイムにやって来る死者達を、氷の国ニグルヘイムに送るか、炎の国ムスペルヘイムへ送るのかを決める事だ。
だが、死者の国で死んだ者達はヘルヘイムに埋葬される。
今日、預言のシャーマンであった、巫女オルガが亡くなった。
彼女の亡骸は、氷の国ニグルヘイムと炎の国ムスペルヘイムの間、ギンヌンガに埋めてやろうと思う。
氷の国と炎の国の間に出来た深い裂け目ギンヌンガガプ。
ニグルヘイムの冷気とムスペルヘイムの熱気によって毒の霧が立ち込め、滴る猛毒の露でこのギンヌンガは死者の国で最も危険な土地である。
「《予言の巫女》オルガよ。この地で誰にも邪魔されることなく、静かに永遠の眠りにつくがよい」
「ん? なんだお前は?! 何故、猛毒の露を嘗めている?!」
「ぅんも~お~!」
「うるさい……。牛か? お前が連れているのは巨人の赤子ではないか? 何故此処にいるのだ?!」
「ぶも~お」
「あ、止めろ、私にそんなモノを押し付けるな! あ、こら! 待たんか! 置いて行くんじゃない!」
「ぶも?」
「くそっ! しかたない。お前も連れて来た責任をとって、私とこの赤子を一緒に育てるのだぞ!」
「も~お!」
「はあ~。その赤子を連れて私に着いて来なさい」
私は赤子の名をユミル、牛の名をアウズンブラと名付けて育てることにした。
「ほんぎゃ~!、ほんぎゃ~!」
「ユミル。うるさい赤子だ。もう腹が減ったのか? いくら巨人でも大きくなりすぎるぞ?」
ブャー!
「アウズンブラ、ユミルの授乳時間なのはわかったから、散乳を止めろ! 私の家が乳臭くてかなわん!」
ユミルは巨人である。
だが規格外の大きさに育ってしまった。
猛毒の露を嘗めていたアウズンブラの乳を飲んで育った為に、どんな毒も効かない丈夫な巨人に育った。
これ以上は、物理的に私の家で育てられなくなったので、そろそろヨトゥンヘイムへ連れて行こう。
父のヴィヴァスヴァットと母サラニューはこのヘルヘイムを治める国王夫妻だ。
私がこの国を出るには、王権を放棄する必要がある。
死者の国の国王など、面倒なモノに私はなりたくなかったので丁度良い。
ユミルの為にアウズンブラを連れて第一層のヨトゥンヘイムへ行くとしよう。
「くっ! お兄様! 逃げましたわね?!」
「ヴィヴァス? あなたヤミーを女王になさるおつもりですの?」
「ああサラニュー。ヤマには地獄の番人となって貰う。ヤミー。お前がこのヘルヘイムの国王になるのだよ」
「お父様?! くっ! お兄様、覚えてらっしゃいませ!」
「ん?! なんだか背中がぞくぞくしたぞ?! ユミル、アウズンブラ。今日はもうこの辺に泊まろう」
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