君、愛し 恋し

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君、愛し 恋し 淵

おでんの屋台で、ONE OUT

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「「「「お疲れ様でした~! ありがとうございました!」」」」
 
 先輩達が帰って、用具を片付けてから今日この後の計画を立てる愚連隊。
「晩ご飯は自分で好きに食べて良いんだ」
 妹達が修学旅行でいない。
 重なるように両親も出張でいない。
 人生で初めての一人だけの夜に会津兄弟が合流である。

「屋台に行こう! おでん! 赤ちょうちんがエロいだろ?」
(会津弟、赤ちょうちんに謝って。エロく無いよね?)
「僕も賛成~! 近所にサロンがあったから、仕事帰りのお姉さんに会えるかも~?」
(会津兄、欲望がはみ出してる。しまって、しまって)
「直之君と裕之君はおでんが食べたいんだね?」
 二人が同時にブンッ! と大きく頷いた。
 
 ブレザーを脱ぐと何故か悪ガキは大人っぽく見えるらしい。
 屋台で飲んでたおじいちゃんが完全にサラリーマンと勘違いしている。
「兄ちゃん達も大変だろ~? やっていけ!」
 一升瓶からグラスにドボドボと注がれた透明な良い香りの魅力に、まず双子が飛び付く。
「おっちゃん! ありがとう~!」
「「いっただきま~すっ!」」
 正一は、おでんの大根に辛子をすりつけてから、かじりつく。
 お酒には手を付けずにひたすら自分の好きなおでん制覇を目指す。
「こっちの兄ちゃん、飲まんかい!」
 絡み酒である。
「ありがとうございます。 僕は今好きな物を絶ち、願をかけております。ご厚意を受けられずにとても残念です」
 おじいちゃんがコップのお酒を下げてぽつりと言う。
「叶うと良いなぁ……。好きな酒、我慢はつらいのう」
「はい。ありがとうございます」
 おじいちゃんと世間話しや、早世してしまったおばあちゃんとの、のろけ話しを聞き出して正一だけ素面である。
 へべれけの双子を余所に、正一だけ素面で、聞き上手を発揮。
「おっちゃんが、支払いしたる!」
 とうとうご馳走になるまで気に入られていた。
「「ご馳になります!」」
 酔っいてもちゃっかりした双子である。

 お腹いっぱいの正一の真後ろに、腕を組んだ魔王が居る。
「何で、お疲れ様の私が飲まんのに、巨人族が酒盛りじゃあ!」
((そこじゃ無いよね?))
 彼女は、出張から帰って来たらしい。
 スーツケースが……。
 双子を襲う凶器に変わっている。
「柚さん、ブレイク、ブレイク!」
 スーツケースで仕留めた双子を締め落とそうとすると柚を孝一が止めに入った。
 こんな時、決して入ってはいけない。正一は学習している。
 伝家の宝刀を抜いた魔王に、三人仲良くタマツブシに、のたうつはめに陥っていた。
「正一、コイツらの親父に電話!」
 既にしている。
「きゃ~! 魔王様素敵~!」
 そして、母親の桜も、父親の保も既に到着済み。
 被害はやらかした双子ととばっちりの孝一のみ。
 双子の父親はやらかした息子達を両脇に、さっさと車に歩いていく。
 
 ちなみに一正、飲まなかったのは願掛けではなく、好みの問題だけ。
 心意気の酒がなかっただけの話し。

 
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