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3 離婚
おぴちょん様
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その横には赤ちゃんが血を流して横たわっていた。
一美は頭部の打撲傷と肋骨骨折、強姦による陰部の擦過傷があったものの命に別状はなかった。
しかし、赤ちゃんは出血多量で危篤状態だ。
そして、驚くべきことが明らかになった。
輸血のために赤ちゃんの血液型を調べたところ、西田慶男とは親子関係が無いと判明した。
これには西田は頭を抱えた。
自分があれだけ愛し、両親も可愛がっていた赤ちゃんは我が子ではないのだ。
憐れなことに赤ちゃんは翌日に息を引き取った。
西田は一美を問い詰めた。
赤ちゃんの本当の父親は誰なのか?一体誰に強姦されたのか?
いくら問い続けても一美は、
「深夜に赤ちゃんを抱いて歩いていたらいきなり後ろから殴られて失神した、気が付いたら病院だった」
と言うだけである。
では、どうして深夜に人気のない場所を歩いていたのか?
どこへ向かっていたのか?誰に会うつもりだったのか?
行方不明の間はどこで何をしていたのか?
肝心な質問には一切答えない。病院のベッドで貝のように口を閉じたままである。
一美のきれいな顔が大理石のように冷たく見える。
西田は言いようもなく腹が立った、悲しく情けなかった。
しかし、西田がいくら問い質そうが一美はただ黙っているだけである。
その態度に西田は一人で怒り、悲しみ、嘆き、キリキリ舞いをして疲れ果てた。
そして、
「君がそんな態度ならもう別れよう」
と言い、離婚届を一美に見せた。
離婚を突きつけたら何か話してくれるのではないかと思ったが、相変わらず黙ったままだ。
一美はその夜に離婚届に署名捺印すると病院から消えた。
その数日後が大学の卒業式だったが、傷心の西田は式には出ずに故郷の岩原に帰ることにした。
ショックのあまり採用が決まっていた東京での就職もやめた。
修行のため大手の建設会社に勤めて経験を積んでから父の会社に入るつもりだったが、
こんなことがあってはとてもそんな気力が起きない。とにかく今は家に帰ってしばらく静養したいのだ。
西田慶男の戸籍には離婚と誰の子かも分からぬ「西田慶美」という長女の出生と死亡が載ってしまった、
これはもう消えることはない。
だが、あのかわいい赤ちゃんに罪はない、思い起こすたびに可哀そうでならない、ほんとうにかわいらしい子で、あの泣き声は今も耳に残っている。
西田は遺骨を引き取って西田家の墓に入れようとしたが両親には筋違いだとたしなめられた。
そこで岩原の昇竜院という寺の永代供養墓に入れ、その寺で父母と西田の3人だけの淋しいお弔いをした。
それから西田は東京に戻り、一美と暮らしたマンションを片付けた。
「一美は信用ならない。マンションが留守の間に侵入して悪さをするかもしれないから用心しろ」
と、父が言うので部屋の鍵を替えておいた、これでもう一美は部屋に入れない。
部屋に残る一美の持ち物の処分をどうしようかと西田は心配していたが、クローゼットにわずかな洋服があるだけで、たくさんあった宝石や貴金属は無くなっていた。
きっと帰るたびに少しずつ持ち出していたのだろう。
これに西田はかえってホッとした、高価な物があれば処分したお金をどうやって一美に渡したらいいかわからない。
本棚には一美が読んでいた女性雑誌が数冊残っていた。
「ああ、これも捨てなきゃな」
と西田が取り上げると雑誌の中からボトンと何か落ちた。拾い上げると小さな青いダイアリーだ。
開いてみると細かい文字がびっしりと書いてある。
一美の書いた文字だ。
チラッと「岩原 西田」の文字も見えたが、読むのが怖くなってすぐに閉じてしまった。
それで、ダイアリーは岩原に持ち帰り気持ちが落ち着いてから開くことにした。
西田はそれさえ出来ないほど気持ちが弱っているのだ。
一美は頭部の打撲傷と肋骨骨折、強姦による陰部の擦過傷があったものの命に別状はなかった。
しかし、赤ちゃんは出血多量で危篤状態だ。
そして、驚くべきことが明らかになった。
輸血のために赤ちゃんの血液型を調べたところ、西田慶男とは親子関係が無いと判明した。
これには西田は頭を抱えた。
自分があれだけ愛し、両親も可愛がっていた赤ちゃんは我が子ではないのだ。
憐れなことに赤ちゃんは翌日に息を引き取った。
西田は一美を問い詰めた。
赤ちゃんの本当の父親は誰なのか?一体誰に強姦されたのか?
いくら問い続けても一美は、
「深夜に赤ちゃんを抱いて歩いていたらいきなり後ろから殴られて失神した、気が付いたら病院だった」
と言うだけである。
では、どうして深夜に人気のない場所を歩いていたのか?
どこへ向かっていたのか?誰に会うつもりだったのか?
行方不明の間はどこで何をしていたのか?
肝心な質問には一切答えない。病院のベッドで貝のように口を閉じたままである。
一美のきれいな顔が大理石のように冷たく見える。
西田は言いようもなく腹が立った、悲しく情けなかった。
しかし、西田がいくら問い質そうが一美はただ黙っているだけである。
その態度に西田は一人で怒り、悲しみ、嘆き、キリキリ舞いをして疲れ果てた。
そして、
「君がそんな態度ならもう別れよう」
と言い、離婚届を一美に見せた。
離婚を突きつけたら何か話してくれるのではないかと思ったが、相変わらず黙ったままだ。
一美はその夜に離婚届に署名捺印すると病院から消えた。
その数日後が大学の卒業式だったが、傷心の西田は式には出ずに故郷の岩原に帰ることにした。
ショックのあまり採用が決まっていた東京での就職もやめた。
修行のため大手の建設会社に勤めて経験を積んでから父の会社に入るつもりだったが、
こんなことがあってはとてもそんな気力が起きない。とにかく今は家に帰ってしばらく静養したいのだ。
西田慶男の戸籍には離婚と誰の子かも分からぬ「西田慶美」という長女の出生と死亡が載ってしまった、
これはもう消えることはない。
だが、あのかわいい赤ちゃんに罪はない、思い起こすたびに可哀そうでならない、ほんとうにかわいらしい子で、あの泣き声は今も耳に残っている。
西田は遺骨を引き取って西田家の墓に入れようとしたが両親には筋違いだとたしなめられた。
そこで岩原の昇竜院という寺の永代供養墓に入れ、その寺で父母と西田の3人だけの淋しいお弔いをした。
それから西田は東京に戻り、一美と暮らしたマンションを片付けた。
「一美は信用ならない。マンションが留守の間に侵入して悪さをするかもしれないから用心しろ」
と、父が言うので部屋の鍵を替えておいた、これでもう一美は部屋に入れない。
部屋に残る一美の持ち物の処分をどうしようかと西田は心配していたが、クローゼットにわずかな洋服があるだけで、たくさんあった宝石や貴金属は無くなっていた。
きっと帰るたびに少しずつ持ち出していたのだろう。
これに西田はかえってホッとした、高価な物があれば処分したお金をどうやって一美に渡したらいいかわからない。
本棚には一美が読んでいた女性雑誌が数冊残っていた。
「ああ、これも捨てなきゃな」
と西田が取り上げると雑誌の中からボトンと何か落ちた。拾い上げると小さな青いダイアリーだ。
開いてみると細かい文字がびっしりと書いてある。
一美の書いた文字だ。
チラッと「岩原 西田」の文字も見えたが、読むのが怖くなってすぐに閉じてしまった。
それで、ダイアリーは岩原に持ち帰り気持ちが落ち着いてから開くことにした。
西田はそれさえ出来ないほど気持ちが弱っているのだ。
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