意地っ張りの片想い

紅と碧湖

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9.変化

135.ラブホ※

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 どっ、どれがいいって……そう言った?
 つまりでっかいパネルがあって、区切られた中に色んな部屋の内装の写真が映ってて、その前に立った丹生田が聞いてんだけど……
 ちょいパニクってアタマ真っ白。
「部屋だ」
 低い声が聞こえ、無自覚に首振ってた。
 いやいや知ってるよ? コレがなんなのかくらいは。
 つまり光ってる部屋が空いてて、消えてる部屋が『ご利用中』なわけだろ? こんな洒落た感じじゃねえけどラブホは使ったことあるし、
 ……けどっ!
「分からないか」
 並んだパネルを睨んだまま、低く言う声はめちゃ冷静で、逆にこっちが冷静じゃなくなってく。
「分かるけどっ……!」
 じゃねーよバカッ! そういうコトじゃねえっ!
 じゃなくて、つまりエッチしようってコトだろっ!? そういうコト先に言えよっ! いきなり過ぎてわけ分かんねえよっ!!
「好きな部屋を選べばいいんだ。金はある」
 なのにこっちを見ようともせずに、低い冷静な声だけが続いてる。
「なっ、……言って……っ」
 ヤな意味でテンション上がってうまく言えねえ、けどだって――――
 確かに俺らエッチしたよ? 二回もしたよ? けど、けどけどあんときはっ!
 丹生田溜まってたんだろッ!?
 原島と別れたあとヤってなくて、たまってて、そんで俺が情けなくお願いしたからヤっちまっただけなんだろ、分かってるよ!
 二回目だって丹生田ってば真面目だから俺も気持ちよくしねーとダメだ、悪いことした、なんて考えたんだろっ!? そうなんだろっ!?
「な……っ」
 分かってンだ、つまりだから、すっ、す、好きとか、そういうんじゃねえんだろっ! 俺とは違うんだろっ!!
「な、んで、…………、」
 そんな色々がアタマん中駆け巡って、でもくちから出たのは弱々しい声だけだった。
「……んなコト……言うんだよ」
 丹生田が、うっそりと顔を動かす。
「…………」
 ようやくこっち見た。
「……とても」
 低い声は囁くみたい。俺見る目が睨むみたい。
「……気持ちよかった」
 そんでくちを閉じた。
 歯を食いしばったみたいに顎が膨らんで、丹生田はまた、パネルを睨む。
「……そ、」
 ――――ああ。なるほど~、つか、……うん。
「……そっか……」
 そゆコト、か
 ――――うん、そんなら……分かる。
「…………そうだ」
 コッチ見ない、低い声。
 ふぅぅっ、と息を吐いた。うん、落ち着け。落ち着け。
 そっか、うん、そっか、つまり、
 ヤってみたら意外と良かった、そうだよな、コッチも乗り気なわけだし、妊娠とかねーし、とか、そゆこと、か。
 うん、だよな。
 つまりアレだ、セフレとか、そゆことだ。うん。
 ――――つうか。
 はあぁぁぁぁ~~、とふかーい溜息を吐く。
「おまえソレ……」
 フツーに声出た。なんか落ち着いた。
「てか、つまりヤリてえのな」
「……そうだ」
 そゆことかよ。
 なんだよ。
「すでにコミュ障の域だろ」
 もっかい深呼吸。はあぁぁ~。すうぅぅ~。はぁぁ~。
 よし。
 気合い入れて丹生田を見る。根性入れて、笑った。きっと強ばってる。
 けど、わざと呆れたぜって顔で言ってやる。
「ならソレ先に言えよ。俺だから良いけど、女の子にそんなん、通用しねえぞ」
「………………」
 くち真一文字にしたまま、こっち睨むみてーな丹生田の目の圧ぱねえ
「いやその……たぶん、……だけど」
 それにちょい怯んで、声が細る。
 したら丹生田は目を伏せた。眼光の圧無くなってホッと息吐いたら、低く囁くような声が聞こえてくる。
「済まない」
 そんでゆっくり、深く深く、頭が下がってく。
「だが、藤枝と、したい」
 そっから聞こえた低い、けどなんか一所懸命な声聞いたら、もうなんか、自然に苦笑が出た。
「そっか。……ん~じゃ~」
 片手で髪をかき上げながら、なんかため息も出て。したら丹生田は目だけを上げてこっち見た。めちゃ真剣な、そうだ、
 ――――あのホテルで、月がなんとかって言ってたときみてーな、
 そんな目で見んなアホ。あ~あ~分かったっつの。
「しょうがねえ。……んじゃ、やっか?」
 ニカッと笑って言ったら、丹生田は奥歯を噛みしめたまま、また深く頭を下げた。
 なんか言おうとして、下がったままの頭とか肩、軽く叩こうとして触れなくて、上げた手でパネルの写真を適当に選んで部屋決める。
 イジイジしててもしょうがねーし
「おい、行くぞ」
 なんつってズンズン部屋入って、パッパと服脱いだ。つかこうでもしねーと逆にハズいから開き直るしかねえ。
「先にシャワー使うな」
 とかって浴室に入ったわけなんだけど。
 こういうトコにありがちだけど、風呂の壁が透けてたりして、ちょいギョッとする。
(いやいやいや、ビビってんじゃねえ)
 慌ててシャワー出し、アタマから浴びながら、手でボディソープ身体に塗ったくる。シャワーの下にいるから当たり前だけど、塗ったそばから流される。何度もプッシュしてバカみてーに使いまくった。
 そうだよ、まだ暑い中けっこう歩き回って汗かなりかいたし、いくらなんでも汗臭い野郎とかイヤだろ、てくらい分かるしキッチリ汗流さねえと。前んときって風呂入ったあとだっけ。うんそうだ多分。
 そんでアレ、ケガしないようにって奴やっとくか。
 けど壁透けてるしハズいしやめとくか。
 つか丹生田こっち見てんのかな。どうだろ、見てねえならやっちまった方がイイのかな。
 いやいやいや無理、あっち側見る勇気ねえ~~。なんか今目が合ったらめちゃマズイ気がする。いやでも良いのか? 良いのか。そうだよだってこれからエッチするわけだし、今回は俺だって勢いじゃなくちゃんとOKしたわけだし、イんだよイイんだ。
 てか前にガン見されてんだからケツを。今さらハズいとか女の子じゃねんだからモジモジとかしたら逆にイタいだろ。そうだどーんとしてろ俺。身体へちょいのは丹生田的にだいじょぶみてーだし、だからイイんだよイイんだ。
 顔ゴシゴシしてバッと顔上げ、顔にシャワーの直撃受ける。
「~~~~っ」
 つうかとりとめなさ過ぎだろ俺。一所懸命、余計なこと考えてるわ。
 無理だっつの冷静になんてなれるか。なったら、なにやってんだか、とか思ちまうだろーが。
 いやいやいやちょい落ち着け俺。パニクってんじゃねえ。丹生田のこと考え……イヤそれもマズイか。えーっと。
 頭ブンブン振り、はぁぁぁぁ~、とか、デッカいため息ついて、
 なんかおかしくなってきて、ククッと笑いながら両手で髪を後ろに流した。
「うーあ、びっしょびしょ」
 わざと声出した。息の方が多いみてーな、なっさけねえ声。
「髪乾かさねえとだなヤる前に」
 なんて呟いて、またククッと笑っちまう。
 アレだな、こっちがヤる方だとオッケだったりすることが、ヤられる方だと色々気になるな。
 今後気をつけよう。
 って、なんだよ今後って。今後、誰かとこんなコトすんのかよ。知らねえよ。わっかんねえよ、そんなん。
 なんでこっから先のこと分かんねーのかな。分かってたらンなバカなことやんねえって思えンのかな。てかバカなことってなんだよ。バカって分かってて、なにしてんだよ。
「あ~~~っ!」
 くっそ、今だろ! 丹生田がヤりてえつって、そんでオッケーしたわけだから、イジイジすんなバカっ!
「ん~~あ~~っ、くっそ!」
 怒鳴って上げた顔に、またシャワーにあてる。そうだよエッチの前の準備なんだから、ちゃんとしねーとだよ。またボディソープとって身体に塗ったくる。
 てかもういいだろ、時間稼ぎとかしてんじゃねえよ、これ以上ウジってどうす……
 腕が伸びてきた。後ろからいきなり。ビクゥっと手が止まる。
「……藤枝」
 耳元に吹き込むみてーな低い声。
 ――――なんだろ。いつも聞いてる声とゼンゼン違う……んじゃね? だって声だけでゾクッとか、なんなんだよ。
 ……てか腕が。
 丹生田の逞しい腕が胸下に回って、背中に胸板とか当たってる。丹生田の体温が近い。近い近い。近いよおまえ。ンでもってなんかドキーンドキドキとか心臓が! うるさいつか!
「済まない。我慢が出来なかった」
 低い声がまた耳に吹き込まれた。荒い息と一緒に。
 またゾクゾクする。
 そんでデカい手が、首とか肩とか胸とか腹とか、つまり身体中あちこち撫でてる。触り方とかめちゃ丁寧つか妙に優しくて、塗りたくってたボディーソープが流されてく。また腕が伸びてシャワー止めると同時、首筋に柔らかいものが触れた。
 ぬめっとしたあったかいモンが動いて、耳まで上がってピチャッとか音がするのと同時、ゾクゾクッときて身体がビクッとした。
 つまり舐めてる。舐めてる舐めてる。舐めてんだ耳とか首とか、うあ肩まで。
 ヤバイってゾクゾクするってドキドキ加速してるって! そんでたぶん、ちょい勃ったぽい! 見れねーけど! だってギュッと目を閉じちゃったから!
 けど顔が熱い。やべえきっと顔赤くなってる。
 ……うあ~。
 ほんとマジに、俺って安い。
 ドキバクして色々どうでも良くなる。だから手が股間に伸びて、そこをやわっと握っても、ギュッと目を閉じたままビクッとしたけど、唇噛んで叫びそうなの我慢した。ケツに丹生田の硬いのが当たってる。てかこっちもガッツリ勃ってんだ。丹生田の手の中で。
 だって手が動いてんだ。強弱つけて擦ってんだ。唇は首筋とか耳とか舐めまくってて、時々歯も立ててくる。もう一個の手は腹や胸を撫でてて、無意識に身体はビクビクしちまってんだけど、声とか出せずに唇噛んで突っ立ってるしかできねえ。
 つか……あ~やべ気持ちいい。
 自分でやンのとゼンゼン違う。丹生田の手が俺の、なんかめっちゃ……あああ、やべっ
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