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1.賢風寮
10.サークル勧誘
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姉崎はしっかり風呂までついてきて、脱衣所でも丹生田にベタベタ、腕とか肩とか、あまつさえケツまでタッチしまくり
「健朗ってイイ身体してるよねえ。剣道って全身使うんだ」
なんて言ってる。丹生田は気にしてねえっぽいけどコッチが気になる!
「やめろっての! もう触んな、あっちいけよ!」
とか騒いでたら、今度はこっちに腕を伸ばし、がっちり固めてきた。てかマジ動けねえ。ジタバタしてる俺、ザコ感ぱねえ。
「離せよっ!! てかなにしてんの!?」
姉崎の見た感じからだとちょい、てか違和感アリアリに意外とゴツくてデカい手が、肩だの胸だの腹だのぺたぺた触りまくってくる。しかも固められたまんまだから逃げれねえっ!
「藤枝はもうちょっと鍛えるべきなんじゃない?」
そんなん言いやがって、ンでも確かに姉崎も、丹生田ほどじゃないけどかなりイイ身体してて、鍛えてやがるつうコトは分かるわけで、
「余計なお世話! こっの、離せっての!」
「いいじゃない。鍛えれば?」
ニッとか笑ってるニヤケメガネに比べたらへちょい俺なわけで、くっそ負けた感ぱねえ! ほんとマジでイラつく野郎だ~っ!
なんてやってる間に丹生田はさっさと浴室に入るし、やっと追っかけたらツラっと身体洗ってるし、慌てて身体洗ってたらまた横に姉崎が来るし。
丹生田はさっさと湯に浸かったので、いち早く横に収まったけど、やっぱり姉崎がくっついてくるし、もうイライラして、しょっちゅう叫んでた。そのたんびに姉崎が、からかう感じで小馬鹿にしたみてーなことばっか言うし、いちいち反応してたら「おまえたちは仲が良いな」なんて的外れなことを丹生田が言うので、
「なんでだよ!」
とか叫んだりして、風呂から上がったときには、妙にぐったりした。
部屋に戻るとちゃっかり橋田がいて、机に向かい書き物をしてた。
特に変化のない態度で、いつも通り淡々としてて、こっちも娯楽室でちょっと考えたこととかすっ飛んでたし、けどなあ。
協調性があるように見えないし、一人でいたくないような寂しがりにも見えないのに、なぜだか橋田は213の三人で行動を共にしたがる。俺は丹生田と一緒にいたいから、結果、つねに三人一緒に行動するようになってた。けど細かいことは良いか! と声を上げる
「なんか疲れたし腹減った! 飯食いに行こうぜ!」
翌日からは講義が始まり、それまでは禁止されてたらしい部活やサークルの勧誘が始まった。
正門前はひかえめだったが、食堂館やサークル棟に通じる道沿いでは、あからさまな大声やパフォーマンス込みでユニフォームやコスプレまがいの格好した先輩たちが、しきりと一年生に声をかける姿が目立つようになり、丹生田も体育会系のサークルや部に声をかけられてた。
「すでに剣道部に入部しましたので、申し訳ありません」
けれど彼らしく丁重に断わると、スポーツマンってのはあんまり後引かないというか。笑顔で頑張れよ、なんて激励して離れてく感じ。
一方、俺に声をかけてくるのは軟派なサークルばかりだ。
んでもせっかく頑張って七星に来たんだから、実りのある四年間にしたい、なんてこと思ってたわけで。
なにがやりたいとか決まってないけど、卒業するときはなんかやれる人間になりたいし、そうなるための四年間を過ごすつもり。遊びの話しかしてこないサークルなんて、無駄な気がした。
それに寮で過ごす時間が減るじゃん、となんの違和感も無く考えたのは無自覚なわけで、少しでも丹生田を見てたいから、なんてアホなことを当然のように思いつつ、丹生田を見習って丁重に断るのだが、入るサークルが決まっているわけではないと知ると、どこも食い下がってくる。
部外者が入れない寮内にいてさえ、先輩が「藤枝ちょっといいか」なんてやってきて「ゼミの女に頼まれたんだけど」とか言うんで自室に閉じこもって避けるしかない感じになって、丹生田や橋田相手に「いいかげんうんざりだっつの!」とか嘆きの声上げる。
「つうかなんであんなしつっこいんだよぉ、もうほっといてくれよ~!」
なのに橋田はいつも通り淡々と「そりゃあそうだよ」とこともなげだ。
「藤枝君、顔が派手だし、服もカッコイイし、遊んでそうだから」
言いながら手に持ってヒラヒラさせたのは、さっき橋田が二年生から無理矢理渡されたって持って来た『ビジュアルアート研究会』のチラシだ。白黒のチラシはよく分からないデザインだけど、そこに赤いマジックで文字が書いてある。
『理想的なプロポーション! 少し垂れ気味のくっきり二重! スッと通った鼻筋の下、唇がぽってりとして色気アリ! 君こそ理想の素材だ! 藤枝君! 我が研究会へおいでませ!』
「こういうイメージなんだよ」
マジでうんざりで、「あ~っ! めんっどっくせぇっ!」叫びながら髪をかきむしる。
祖母の血を引いてか瞳が茶色で明るいから、ガキのころから目立つとは言われてた。んでもこんなアホくさいこと言った奴なんていなかった。みんなフツーにダチだったし、フツーの高校生だったのだ。その頃とぜんぜん変わってないのになんだコレ。
そりゃ入学前、妙なテンションで茶髪にはしたけど、服はじいさんの遺品からカッコイイ感じのを見繕ってきたのと妹の見立てで、自分で選んだんじゃない。せっかくだからカッコ良く着こなそうと色々考えてるけど、それが悪いってコトかよ? それに遊んでそうって!
いやそりゃフツーに遊ぶことはあったよ?
野郎ばっかで海に行ったり、そこで女の子ナンパしたり、そんでエッチしちゃったりとか、まあ中高あたりはそれなりにモテたっぽいことはあった。モテりゃ、だってそりゃ嬉しいだろ? 中坊ン時は告られて付き合ったこともあったよ。高校で学校別々になって、なんとなく別れたけど。
けど高二以降は七星に入るので精一杯だったから、そういうのはやってない。めっちゃ健全な受験生だったのだ。
だから「不本意だっつの! めちゃ真面目だって俺!」とか抗議したのだが、橋田はいつもと変わらない淡々とした顔と声だ。
「いいじゃない、つまんないと思われるより。仲間に入れたら楽しそうだって思うんだろうし」
すると丹生田が頷いて、なんと「藤枝はかっこいいからな」と言った。
(うわ、かっこいいとか言った!)
ちょっとドキッとしたが「彼女とか、いたでしょう?」橋田が言い足すので、すぐに正気に戻り「そりゃいたけど!」猛然と抗議する。
「だからって遊んでるって決めつけられても!」
「そこはサラッと流さないと~」
当たり前のように部屋に入ってきた姉崎が勝手に会話に入ってきて、ふふふ、と意味深に笑った。
「それに自分がどう見られてるか、自覚した方が良いよ、藤枝は~」
あ~もう黙らせたい。つうか入ってくるな! の目つきで、一見爽やかそうに見える笑顔を睨みつけた。けど寮部屋に鍵はないから、こいつを締め出す方法が分からない。
そんな苛つきを隠そうともせず、唸るように言った。
「なんだよ偉そうに」
しかしこのニヤケメガネは全然ダメージを受けないのだ。
「だって僕はそこで困らないもんね」
ツラッと笑顔のまま橋田のベッドに腰を下ろし、くつろぎはじめた。両手を少し後ろについて、足なんて組んだりして、手足長いからサマになっちまうのがさらにむかつく。
確かに姉崎はきれいな顔で着てるものや持ち物がいちいち高そうで仕草とかキザだし、いかにも遊んでそうで、女がほっておかないタイプに見える。けどつきまとわれている様子とかゼンゼンない。
「君かなり目立ってるよ? そういう顔に産まれたんだから自覚しなよ」
いつもにやけてて妙に偉そうだし、とにかくやっぱムカつく!
「自覚ってなんだよっ! 顔が派手だったらどうしろっていうんだよ!!」
語気も荒くなるだろとーぜん。
「顔とかで勝手に希望抱いちゃったりして面倒な奴って常にいるでしょ。藤枝だってそんな顔なんだから自己防衛しないと」
祖母の血を引くこの顔が悪いと言われれば、それはそれで腹立つ。逢ったことないばあさんはおろか、大好きなじいさんまで馬鹿にされたような気がするし、そもそも自分のせいだとばかり言われるのは不本意だ。それに『常に』なんていなかった。今までそれなりに楽しくやってきてるし、今回みたいな注目のされ方は初めてなのだ。
だが姉崎はふふんと鼻で笑いやがった。
「いちいちていねいに断ったりとか、逆に脈有りとか思われるよそれ。全くその気が無かったら適当に逃げるとかさあ、無視とかするでしょ普通」
「普通って、おまえの基準で喋るなひとでなし!」
「ひっどいなあ」
ヘラッと笑う姉崎。全然ダメージ受けていないのがマジむかつく。
「ていうか向こうだってなんか一所懸命だし、先輩なわけだし、こんなことでモメたくないだろ!」
「そんな連中の一所懸命なんて、目立つ奴入れたらサークル内でデカイ顔できるとか、あわよくばつきあえるかも~なんて考えてる女とか、そんな程度だよ? ほっときゃいいじゃん。しつこいのなんて蹴っちゃえばいいのに。それで寄ってこなくなるよ」
なんか自信満々でやっぱりむかつく。つうか!
「蹴ってんのかよ! 最悪だなおまえ!」
だからコイツにはしつっこい誘いがかからないのか、と納得はしたが、そんなひとでなしな真似なんてできるか!
「だいたいなんで勝手に入ってくるんだよ! 自分の部屋にいろよ!」
「だって、こっちの方が面白いモンね。三人とも気に入ったし~」
あくまで笑顔、楽しそうな声に苛立ちがつのる。
「お・ま・え~!」
足を踏み出し、姉崎に迫ろうとした目の前に、自分よりだいぶ低いアタマがスッと現れる。
いつも淡々としてる橋田がいつのまにか姉崎の前に立って、忌々しいニヤケメガネを見下ろしてた。
「健朗ってイイ身体してるよねえ。剣道って全身使うんだ」
なんて言ってる。丹生田は気にしてねえっぽいけどコッチが気になる!
「やめろっての! もう触んな、あっちいけよ!」
とか騒いでたら、今度はこっちに腕を伸ばし、がっちり固めてきた。てかマジ動けねえ。ジタバタしてる俺、ザコ感ぱねえ。
「離せよっ!! てかなにしてんの!?」
姉崎の見た感じからだとちょい、てか違和感アリアリに意外とゴツくてデカい手が、肩だの胸だの腹だのぺたぺた触りまくってくる。しかも固められたまんまだから逃げれねえっ!
「藤枝はもうちょっと鍛えるべきなんじゃない?」
そんなん言いやがって、ンでも確かに姉崎も、丹生田ほどじゃないけどかなりイイ身体してて、鍛えてやがるつうコトは分かるわけで、
「余計なお世話! こっの、離せっての!」
「いいじゃない。鍛えれば?」
ニッとか笑ってるニヤケメガネに比べたらへちょい俺なわけで、くっそ負けた感ぱねえ! ほんとマジでイラつく野郎だ~っ!
なんてやってる間に丹生田はさっさと浴室に入るし、やっと追っかけたらツラっと身体洗ってるし、慌てて身体洗ってたらまた横に姉崎が来るし。
丹生田はさっさと湯に浸かったので、いち早く横に収まったけど、やっぱり姉崎がくっついてくるし、もうイライラして、しょっちゅう叫んでた。そのたんびに姉崎が、からかう感じで小馬鹿にしたみてーなことばっか言うし、いちいち反応してたら「おまえたちは仲が良いな」なんて的外れなことを丹生田が言うので、
「なんでだよ!」
とか叫んだりして、風呂から上がったときには、妙にぐったりした。
部屋に戻るとちゃっかり橋田がいて、机に向かい書き物をしてた。
特に変化のない態度で、いつも通り淡々としてて、こっちも娯楽室でちょっと考えたこととかすっ飛んでたし、けどなあ。
協調性があるように見えないし、一人でいたくないような寂しがりにも見えないのに、なぜだか橋田は213の三人で行動を共にしたがる。俺は丹生田と一緒にいたいから、結果、つねに三人一緒に行動するようになってた。けど細かいことは良いか! と声を上げる
「なんか疲れたし腹減った! 飯食いに行こうぜ!」
翌日からは講義が始まり、それまでは禁止されてたらしい部活やサークルの勧誘が始まった。
正門前はひかえめだったが、食堂館やサークル棟に通じる道沿いでは、あからさまな大声やパフォーマンス込みでユニフォームやコスプレまがいの格好した先輩たちが、しきりと一年生に声をかける姿が目立つようになり、丹生田も体育会系のサークルや部に声をかけられてた。
「すでに剣道部に入部しましたので、申し訳ありません」
けれど彼らしく丁重に断わると、スポーツマンってのはあんまり後引かないというか。笑顔で頑張れよ、なんて激励して離れてく感じ。
一方、俺に声をかけてくるのは軟派なサークルばかりだ。
んでもせっかく頑張って七星に来たんだから、実りのある四年間にしたい、なんてこと思ってたわけで。
なにがやりたいとか決まってないけど、卒業するときはなんかやれる人間になりたいし、そうなるための四年間を過ごすつもり。遊びの話しかしてこないサークルなんて、無駄な気がした。
それに寮で過ごす時間が減るじゃん、となんの違和感も無く考えたのは無自覚なわけで、少しでも丹生田を見てたいから、なんてアホなことを当然のように思いつつ、丹生田を見習って丁重に断るのだが、入るサークルが決まっているわけではないと知ると、どこも食い下がってくる。
部外者が入れない寮内にいてさえ、先輩が「藤枝ちょっといいか」なんてやってきて「ゼミの女に頼まれたんだけど」とか言うんで自室に閉じこもって避けるしかない感じになって、丹生田や橋田相手に「いいかげんうんざりだっつの!」とか嘆きの声上げる。
「つうかなんであんなしつっこいんだよぉ、もうほっといてくれよ~!」
なのに橋田はいつも通り淡々と「そりゃあそうだよ」とこともなげだ。
「藤枝君、顔が派手だし、服もカッコイイし、遊んでそうだから」
言いながら手に持ってヒラヒラさせたのは、さっき橋田が二年生から無理矢理渡されたって持って来た『ビジュアルアート研究会』のチラシだ。白黒のチラシはよく分からないデザインだけど、そこに赤いマジックで文字が書いてある。
『理想的なプロポーション! 少し垂れ気味のくっきり二重! スッと通った鼻筋の下、唇がぽってりとして色気アリ! 君こそ理想の素材だ! 藤枝君! 我が研究会へおいでませ!』
「こういうイメージなんだよ」
マジでうんざりで、「あ~っ! めんっどっくせぇっ!」叫びながら髪をかきむしる。
祖母の血を引いてか瞳が茶色で明るいから、ガキのころから目立つとは言われてた。んでもこんなアホくさいこと言った奴なんていなかった。みんなフツーにダチだったし、フツーの高校生だったのだ。その頃とぜんぜん変わってないのになんだコレ。
そりゃ入学前、妙なテンションで茶髪にはしたけど、服はじいさんの遺品からカッコイイ感じのを見繕ってきたのと妹の見立てで、自分で選んだんじゃない。せっかくだからカッコ良く着こなそうと色々考えてるけど、それが悪いってコトかよ? それに遊んでそうって!
いやそりゃフツーに遊ぶことはあったよ?
野郎ばっかで海に行ったり、そこで女の子ナンパしたり、そんでエッチしちゃったりとか、まあ中高あたりはそれなりにモテたっぽいことはあった。モテりゃ、だってそりゃ嬉しいだろ? 中坊ン時は告られて付き合ったこともあったよ。高校で学校別々になって、なんとなく別れたけど。
けど高二以降は七星に入るので精一杯だったから、そういうのはやってない。めっちゃ健全な受験生だったのだ。
だから「不本意だっつの! めちゃ真面目だって俺!」とか抗議したのだが、橋田はいつもと変わらない淡々とした顔と声だ。
「いいじゃない、つまんないと思われるより。仲間に入れたら楽しそうだって思うんだろうし」
すると丹生田が頷いて、なんと「藤枝はかっこいいからな」と言った。
(うわ、かっこいいとか言った!)
ちょっとドキッとしたが「彼女とか、いたでしょう?」橋田が言い足すので、すぐに正気に戻り「そりゃいたけど!」猛然と抗議する。
「だからって遊んでるって決めつけられても!」
「そこはサラッと流さないと~」
当たり前のように部屋に入ってきた姉崎が勝手に会話に入ってきて、ふふふ、と意味深に笑った。
「それに自分がどう見られてるか、自覚した方が良いよ、藤枝は~」
あ~もう黙らせたい。つうか入ってくるな! の目つきで、一見爽やかそうに見える笑顔を睨みつけた。けど寮部屋に鍵はないから、こいつを締め出す方法が分からない。
そんな苛つきを隠そうともせず、唸るように言った。
「なんだよ偉そうに」
しかしこのニヤケメガネは全然ダメージを受けないのだ。
「だって僕はそこで困らないもんね」
ツラッと笑顔のまま橋田のベッドに腰を下ろし、くつろぎはじめた。両手を少し後ろについて、足なんて組んだりして、手足長いからサマになっちまうのがさらにむかつく。
確かに姉崎はきれいな顔で着てるものや持ち物がいちいち高そうで仕草とかキザだし、いかにも遊んでそうで、女がほっておかないタイプに見える。けどつきまとわれている様子とかゼンゼンない。
「君かなり目立ってるよ? そういう顔に産まれたんだから自覚しなよ」
いつもにやけてて妙に偉そうだし、とにかくやっぱムカつく!
「自覚ってなんだよっ! 顔が派手だったらどうしろっていうんだよ!!」
語気も荒くなるだろとーぜん。
「顔とかで勝手に希望抱いちゃったりして面倒な奴って常にいるでしょ。藤枝だってそんな顔なんだから自己防衛しないと」
祖母の血を引くこの顔が悪いと言われれば、それはそれで腹立つ。逢ったことないばあさんはおろか、大好きなじいさんまで馬鹿にされたような気がするし、そもそも自分のせいだとばかり言われるのは不本意だ。それに『常に』なんていなかった。今までそれなりに楽しくやってきてるし、今回みたいな注目のされ方は初めてなのだ。
だが姉崎はふふんと鼻で笑いやがった。
「いちいちていねいに断ったりとか、逆に脈有りとか思われるよそれ。全くその気が無かったら適当に逃げるとかさあ、無視とかするでしょ普通」
「普通って、おまえの基準で喋るなひとでなし!」
「ひっどいなあ」
ヘラッと笑う姉崎。全然ダメージ受けていないのがマジむかつく。
「ていうか向こうだってなんか一所懸命だし、先輩なわけだし、こんなことでモメたくないだろ!」
「そんな連中の一所懸命なんて、目立つ奴入れたらサークル内でデカイ顔できるとか、あわよくばつきあえるかも~なんて考えてる女とか、そんな程度だよ? ほっときゃいいじゃん。しつこいのなんて蹴っちゃえばいいのに。それで寄ってこなくなるよ」
なんか自信満々でやっぱりむかつく。つうか!
「蹴ってんのかよ! 最悪だなおまえ!」
だからコイツにはしつっこい誘いがかからないのか、と納得はしたが、そんなひとでなしな真似なんてできるか!
「だいたいなんで勝手に入ってくるんだよ! 自分の部屋にいろよ!」
「だって、こっちの方が面白いモンね。三人とも気に入ったし~」
あくまで笑顔、楽しそうな声に苛立ちがつのる。
「お・ま・え~!」
足を踏み出し、姉崎に迫ろうとした目の前に、自分よりだいぶ低いアタマがスッと現れる。
いつも淡々としてる橋田がいつのまにか姉崎の前に立って、忌々しいニヤケメガネを見下ろしてた。
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