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大熊先輩って……
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「だから悪ぃ、つってんだろ~」
半パンいっちょのヘラヘラ先輩。
「黙って入れ!」
……を、小突く新山先輩の苦虫を噛み潰したような顔、そして笑顔のお母さんが入ってきた。
「ごめんなさいねぇ、ついつい引き留めちゃって」
先輩たちの肩とか胸とかパンパンはたきながらコロコロ笑ってる、んだけど。
いつものお母さんとゼンゼン違う。
ニッコリ笑ってる目が、なんつうか……色っぽいつかなんか怖い……つか!
いつもだぼっとした服着てたから気づかなかったけど、お母さんて、めっちゃスタイル良いんじゃんっ!!
今日のお母さんはタンクトップに短いスカートだけで! デカい胸がぷるんと揺れてウエストきゅっとしてヒップでかくて!
「こんな若い男前久しぶりでさあ。離しがたくなっちゃって。ねえ?」
大熊先輩に可愛く首かしげて笑いかけると、「ね~」先輩も同じ方向に首かしげてニッコニコ。
てかスッキリした顔して機嫌良さそう。
……なんなんだろう。一瞬でも心配した自分がバカだった、つう、すんごい徒労感。
「フミさん情熱的だからノリノリになっちゃって、朝から三発やっちゃった」
大熊先輩ってばやに下がっちゃって、うあ~っ!! なんかむかつくっ!!
「いい加減にしろっ!」
銅鑼みてーな小谷先輩の一喝に、思わずビクッとしたんだけど、ビビったのは俺と岡部さんだけだった。
他の先輩たちはニヤニヤ大熊先輩囲んで小突いたりして構ってる感じ。丹生田もちょい困り顔で黙ってるし。
そんな中、庄山先輩がむすっとして、大熊先輩の頭をバシッと叩いた。
「ってーなー」
びしっと言われてもニヤケ続ける大熊先輩に、庄山先輩は大げさなため息ついて、
「その乱れた生活をなんとかしろと常々言っているはずだが!」
いつもの説教が始まった。
なんだけど大熊先輩は、昨日からお母さんと「イイ感じに爛れて過ごし」てたとか、自慢げに言ってて反省の色無し。だから姿が見えなかったんだ~とか納得しつつ、噂は聞いてたけど、大熊先輩ってこういうヒトなわけね、なんて思って、俺はちょい引いた。
しかも庄山先輩以外、けっこうニヤニヤしてて、苦い顔してる新山先輩に「おまえ見たの?」「なに見た」「ヤってた?」とか聞いてたりして。
「見てない、うるさい、黙れ」
とか面倒くさそうに応戦してる新山先輩を見てたら、なんかぐったりした。先輩たちってこういうノリだったんだ~。
そんで現場まで迎えに行ってしまった新山先輩が、いったい何を見てあんな苦虫噛みつぶしたみてーな顔になってんのか、ちょい考えて、遭遇しちゃったかもしんないなんかの場面を想像しそうになって頭振る。
つかめっちゃ同情。災難だったね。
で、気がついた。
姉崎が満足そうにヘラヘラ笑ってる。
そういえば小谷先輩起こした後、グリズリーだなんだとか言って以来、コイツにしては珍しく傍観してたな、と思い出す。
う~ん、とか考えつつ、すっかりにやけてる大熊先輩、お母さん、そして姉崎、と視線を移していくと、意味ありげな目配せが三者間で飛び交ってるのに気づいた。
そういやなんか企んでる顔してたなコイツ。なにやりやがった? と思ったけど言わない。
怪我しそうだから。
姉崎って迂闊に近づくと、わりと痛いコトになるってコトくらい、俺だって学んでるのだ。
なんつって見てたら、お母さんが色っぽい目つきになってコッチ見たからビクッとして思わずブルブル首振った。したら笑みを深めて、目線をひとりひとり、順繰りに動かしてった。コソコソ言い合ってた先輩たちが一斉に口を噤み、離れの中はしんと静まった。
妙にピンッとした空気の中、お母さんの目が丹生田でとまり、そんで近寄ってったから、思わず「だめっ!」と丹生田を引っ張った。
「あら」
色っぽい声で言いつつ目をぱちくりさせるお母さんが、俺を見てニッコリ笑う。うわ、なんかすげえヤバいっ! でも「だめっ!」静まりかえった部屋に俺の声だけが響く。
「丹生田はダメっ!」
お母さんは妙に色っぽい目つきと声で「あらあらあら」言いながら怪しい笑み満面で手を伸ばしてきた。
なになになにっ!?
焦りつつも負けるかと歯を食いしばる。つうか目を離したら負けな感じがして、咄嗟に丹生田の前に出て両手を広げかばう。
「……母さん、こいつらはやめよう」
のほほんとした鈴木の声に、お母さんはまた「あら」と言ったが、今度は色っぽい声じゃ無かった。今までと同じ、おかみさんな感じで、ニッと笑う。
「なんだい勇太」
鈴木はニコニコと笑顔を返しただけだけど、お母さんは肩をすくめてクルッと出口へ向かう。
「しょうがないね。ご飯の時間に遅れないでよ、みんな~」
後ろにバイバイしながら去る歩き方は、ヒップがゆっくり左右に振れて色っぽくて、先輩たちもすっかり目を奪われてる。庄山先輩でさえぼうっと見送ってた。
「……おまえも苦労しているんだな…」
ぼそりと丹生田が言う。
けど鈴木はきょと、と目をぱちくりさせ「なにが?」とぼんやり言ったのだった。
そんなこんなあって、「こいつは俺がシメる」なんてニヤッとした小谷先輩に、庄山先輩、新山先輩が頷き、「今日はめいめい自由行動な」なんて会長が言ったので、んじゃあ丹生田と約束の釣り! なんて盛り上がったんだけど。
「え? ヒメマス? 今年は禁漁だよ」
鈴木が言った。
「なんでっ?」
「魚体が小さかったんだって。ときどきあるんだ」
おもいっきしガックシ来てたら、「見に行くのは構わないのか」低い丹生田の声がした。
「うん、レイクハウスやってるから。軽食あるし、釣りは出来ないけどボートの貸し出しはやってるはずだよ」
「そうか。藤枝」
言いながら肩掴まれたんだけど、がっしりチカラ籠もってる。
え? と顔見上げたら、眉寄せてこっち見てた。
「行くか。……二人で」
なになに、なんでそんな照れてんのッ!?
めっちゃカワイイんじゃん!
「うん! 行こうぜっ! そーだ鈴木、チャリとか借りれねえかな?」
「レンタサイクルやってるトコはあるよ」
「おっし! 行こうぜ丹生田!」
簡単にぐあああっと盛り上がる。マジ俺って安い! とか思うけどイイのだ!
ウキウキしながら丹生田を引っ張ってって、チャリ借りて倶多楽湖まで走る。
天気はイマイチだったけど、家族連ればっかだったけどイイのだ!
だってコレって丹生田とデートじゃね? 誰も気づかなくても、俺ン中でデートにしちまえばイイんじゃん!
ボート借りようとしたんだけど、スワンボートしか空いて無くて、それを借りることにした。
最初はゆったり景色眺めてたんだけど、別のスワンボートが追ってきて、中坊くらいの男の子とお父さんらしき二人連れがコッチ指さしてるから「親子連れかなあ」なんて言ってたら、いきなり速度上げて横を通り過ぎてって、こっちのボートに飛沫がかかった。
「くっそ負けるか!」
いきなりエキサイトしちまう。
「丹生田漕げ! あのボート追い越すぞ!」
目つき鋭く頷いた丹生田は、力強くペダル踏む。俺も負けじとガシガシ踏みまくる。
あっという間に追い越して「うおーっ! 見たかバーカっ!」とか言ってたら、巡回のボートから「危険な行為はやめて下さい」とかハンドスピーカーで注意された。
「それ壊れやすいから、無茶な乗り方しないで」なんつって言われて「すんませーん!」思わず謝ったら
「元気良いね!」
なんて笑われ「やべやべ」とか言いつつ、ちょい落ちる。
ガキかよ。まったく十九歳になったのに俺ってばアホか。
なんだけど丹生田が目を細めてこっち見てたから、ぐわぁぁぁん、と簡単にテンション戻った。
マジ俺って安い!
けど楽しい~~~っ!
そんなこんなでチャリで山ん中走ったりして一日遊んで、暗くなってから戻ったら、離れでは酒盛りが始まってた。
「最終日だから、オーダーしたんだ~」
姉崎が手配したデッカイ舟盛り刺身に先輩たちのテンションが上がったらしい。
「運転手で車出したからって、みんなで負担してくれたから、僕ココまで一銭も払ってないからね」
酒もめっこし買ってきたらしい。
こういうトコそつないってか、やっぱ侮れん姉崎、とこぶしを握りしめつつ、俺と丹生田も自動的に酒盛りに巻き込まれていったのだった。
半パンいっちょのヘラヘラ先輩。
「黙って入れ!」
……を、小突く新山先輩の苦虫を噛み潰したような顔、そして笑顔のお母さんが入ってきた。
「ごめんなさいねぇ、ついつい引き留めちゃって」
先輩たちの肩とか胸とかパンパンはたきながらコロコロ笑ってる、んだけど。
いつものお母さんとゼンゼン違う。
ニッコリ笑ってる目が、なんつうか……色っぽいつかなんか怖い……つか!
いつもだぼっとした服着てたから気づかなかったけど、お母さんて、めっちゃスタイル良いんじゃんっ!!
今日のお母さんはタンクトップに短いスカートだけで! デカい胸がぷるんと揺れてウエストきゅっとしてヒップでかくて!
「こんな若い男前久しぶりでさあ。離しがたくなっちゃって。ねえ?」
大熊先輩に可愛く首かしげて笑いかけると、「ね~」先輩も同じ方向に首かしげてニッコニコ。
てかスッキリした顔して機嫌良さそう。
……なんなんだろう。一瞬でも心配した自分がバカだった、つう、すんごい徒労感。
「フミさん情熱的だからノリノリになっちゃって、朝から三発やっちゃった」
大熊先輩ってばやに下がっちゃって、うあ~っ!! なんかむかつくっ!!
「いい加減にしろっ!」
銅鑼みてーな小谷先輩の一喝に、思わずビクッとしたんだけど、ビビったのは俺と岡部さんだけだった。
他の先輩たちはニヤニヤ大熊先輩囲んで小突いたりして構ってる感じ。丹生田もちょい困り顔で黙ってるし。
そんな中、庄山先輩がむすっとして、大熊先輩の頭をバシッと叩いた。
「ってーなー」
びしっと言われてもニヤケ続ける大熊先輩に、庄山先輩は大げさなため息ついて、
「その乱れた生活をなんとかしろと常々言っているはずだが!」
いつもの説教が始まった。
なんだけど大熊先輩は、昨日からお母さんと「イイ感じに爛れて過ごし」てたとか、自慢げに言ってて反省の色無し。だから姿が見えなかったんだ~とか納得しつつ、噂は聞いてたけど、大熊先輩ってこういうヒトなわけね、なんて思って、俺はちょい引いた。
しかも庄山先輩以外、けっこうニヤニヤしてて、苦い顔してる新山先輩に「おまえ見たの?」「なに見た」「ヤってた?」とか聞いてたりして。
「見てない、うるさい、黙れ」
とか面倒くさそうに応戦してる新山先輩を見てたら、なんかぐったりした。先輩たちってこういうノリだったんだ~。
そんで現場まで迎えに行ってしまった新山先輩が、いったい何を見てあんな苦虫噛みつぶしたみてーな顔になってんのか、ちょい考えて、遭遇しちゃったかもしんないなんかの場面を想像しそうになって頭振る。
つかめっちゃ同情。災難だったね。
で、気がついた。
姉崎が満足そうにヘラヘラ笑ってる。
そういえば小谷先輩起こした後、グリズリーだなんだとか言って以来、コイツにしては珍しく傍観してたな、と思い出す。
う~ん、とか考えつつ、すっかりにやけてる大熊先輩、お母さん、そして姉崎、と視線を移していくと、意味ありげな目配せが三者間で飛び交ってるのに気づいた。
そういやなんか企んでる顔してたなコイツ。なにやりやがった? と思ったけど言わない。
怪我しそうだから。
姉崎って迂闊に近づくと、わりと痛いコトになるってコトくらい、俺だって学んでるのだ。
なんつって見てたら、お母さんが色っぽい目つきになってコッチ見たからビクッとして思わずブルブル首振った。したら笑みを深めて、目線をひとりひとり、順繰りに動かしてった。コソコソ言い合ってた先輩たちが一斉に口を噤み、離れの中はしんと静まった。
妙にピンッとした空気の中、お母さんの目が丹生田でとまり、そんで近寄ってったから、思わず「だめっ!」と丹生田を引っ張った。
「あら」
色っぽい声で言いつつ目をぱちくりさせるお母さんが、俺を見てニッコリ笑う。うわ、なんかすげえヤバいっ! でも「だめっ!」静まりかえった部屋に俺の声だけが響く。
「丹生田はダメっ!」
お母さんは妙に色っぽい目つきと声で「あらあらあら」言いながら怪しい笑み満面で手を伸ばしてきた。
なになになにっ!?
焦りつつも負けるかと歯を食いしばる。つうか目を離したら負けな感じがして、咄嗟に丹生田の前に出て両手を広げかばう。
「……母さん、こいつらはやめよう」
のほほんとした鈴木の声に、お母さんはまた「あら」と言ったが、今度は色っぽい声じゃ無かった。今までと同じ、おかみさんな感じで、ニッと笑う。
「なんだい勇太」
鈴木はニコニコと笑顔を返しただけだけど、お母さんは肩をすくめてクルッと出口へ向かう。
「しょうがないね。ご飯の時間に遅れないでよ、みんな~」
後ろにバイバイしながら去る歩き方は、ヒップがゆっくり左右に振れて色っぽくて、先輩たちもすっかり目を奪われてる。庄山先輩でさえぼうっと見送ってた。
「……おまえも苦労しているんだな…」
ぼそりと丹生田が言う。
けど鈴木はきょと、と目をぱちくりさせ「なにが?」とぼんやり言ったのだった。
そんなこんなあって、「こいつは俺がシメる」なんてニヤッとした小谷先輩に、庄山先輩、新山先輩が頷き、「今日はめいめい自由行動な」なんて会長が言ったので、んじゃあ丹生田と約束の釣り! なんて盛り上がったんだけど。
「え? ヒメマス? 今年は禁漁だよ」
鈴木が言った。
「なんでっ?」
「魚体が小さかったんだって。ときどきあるんだ」
おもいっきしガックシ来てたら、「見に行くのは構わないのか」低い丹生田の声がした。
「うん、レイクハウスやってるから。軽食あるし、釣りは出来ないけどボートの貸し出しはやってるはずだよ」
「そうか。藤枝」
言いながら肩掴まれたんだけど、がっしりチカラ籠もってる。
え? と顔見上げたら、眉寄せてこっち見てた。
「行くか。……二人で」
なになに、なんでそんな照れてんのッ!?
めっちゃカワイイんじゃん!
「うん! 行こうぜっ! そーだ鈴木、チャリとか借りれねえかな?」
「レンタサイクルやってるトコはあるよ」
「おっし! 行こうぜ丹生田!」
簡単にぐあああっと盛り上がる。マジ俺って安い! とか思うけどイイのだ!
ウキウキしながら丹生田を引っ張ってって、チャリ借りて倶多楽湖まで走る。
天気はイマイチだったけど、家族連ればっかだったけどイイのだ!
だってコレって丹生田とデートじゃね? 誰も気づかなくても、俺ン中でデートにしちまえばイイんじゃん!
ボート借りようとしたんだけど、スワンボートしか空いて無くて、それを借りることにした。
最初はゆったり景色眺めてたんだけど、別のスワンボートが追ってきて、中坊くらいの男の子とお父さんらしき二人連れがコッチ指さしてるから「親子連れかなあ」なんて言ってたら、いきなり速度上げて横を通り過ぎてって、こっちのボートに飛沫がかかった。
「くっそ負けるか!」
いきなりエキサイトしちまう。
「丹生田漕げ! あのボート追い越すぞ!」
目つき鋭く頷いた丹生田は、力強くペダル踏む。俺も負けじとガシガシ踏みまくる。
あっという間に追い越して「うおーっ! 見たかバーカっ!」とか言ってたら、巡回のボートから「危険な行為はやめて下さい」とかハンドスピーカーで注意された。
「それ壊れやすいから、無茶な乗り方しないで」なんつって言われて「すんませーん!」思わず謝ったら
「元気良いね!」
なんて笑われ「やべやべ」とか言いつつ、ちょい落ちる。
ガキかよ。まったく十九歳になったのに俺ってばアホか。
なんだけど丹生田が目を細めてこっち見てたから、ぐわぁぁぁん、と簡単にテンション戻った。
マジ俺って安い!
けど楽しい~~~っ!
そんなこんなでチャリで山ん中走ったりして一日遊んで、暗くなってから戻ったら、離れでは酒盛りが始まってた。
「最終日だから、オーダーしたんだ~」
姉崎が手配したデッカイ舟盛り刺身に先輩たちのテンションが上がったらしい。
「運転手で車出したからって、みんなで負担してくれたから、僕ココまで一銭も払ってないからね」
酒もめっこし買ってきたらしい。
こういうトコそつないってか、やっぱ侮れん姉崎、とこぶしを握りしめつつ、俺と丹生田も自動的に酒盛りに巻き込まれていったのだった。
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