3 / 3
保健室の彼岸花
しおりを挟む
「本当に全部解き明かす気か?」
「やろうよ!」
「まぁ、暇だから良いけどさ」
俺達は第2準備室で偶然見つけた謎のノートを手がかりに浅川高校六不思議を解明することになった。とはいえ、最初の謎のヒントは保健室の彼岸花というだけで他に何か書いてある訳でもない。という訳でまずは保健室に向かうらしい。
「そもそも保健室の彼岸花ってなんなんだ? 彼岸花って不吉な花じゃなかったっけ」
「そうなのよね⋯⋯それがなんで保健室にあるのかが分からないのよ」
彼岸花は開花時期が彼岸である秋分の日前後な事から彼岸花と名付けられたらしい。別名『死人花』や『地獄花』と呼ばれるほど不吉な花として扱われている。
「とにかく、まずは本当に彼岸花があるのかどうか確認しましょ!」
そう言って彼女は可愛らしい笑顔で保健室の扉を指さした。まだ疑問は多いが調べてみるに越したことはないよな。
「失礼します⋯⋯」
「あら、体調が優れないのかしら?」
中に入るやいなや僕達に気がついた保健の先生が問いかけてきた。今は放課後で、保健室を利用するとすれば大半は運動部である。しかし、僕達の格好は制服、怪しまれるのも無理ないだろう。
「ええ、少し倒れそうになってしまって⋯⋯そこを彼に助けて貰ったんです」
「まぁ、そうなのね。こっちにいらっしゃい、ベッドで横になるといいわ」
よくもまあ、そんな嘘が思いついたな。僕がそう感心していると彼女が僕の制服の袖を引っ張ってアイコンタクトを送ってきた。
先生がベッド付近のカーテンを引いた時に見えたのは窓側にある生徒用のスチール製机に供えられた一輪の彼岸花だった。その夕陽が当たって美しく輝いている真っ赤な彼岸花は不吉なんかではなく、むしろ縁起が良い花なのではないかと疑ってしまうほどに見目麗しい。
「私はとりあえず横になるからあとはお願いね!」
彼女はそう僕の耳元で囁いて、ベッドに向かった。全く、自分から解明しようとか言っておいて最終的には僕に任せるのかよ。
「少し寝ていればよくなるでしょう、ありがとうね少年」
今まで保健室なんて利用することもなかったから知らなかったけどウチの保健の先生って意外とおばさんだったんだな。
「いえいえ、それにしても窓際に生けてある花って⋯⋯」
「あー、あれね⋯⋯。彼岸花よ、お彼岸の時とかによく咲いている」
「何で保健室に彼岸花が?」
ストレートな僕の質問に一瞬だけ唖然となった先生は、すぐに平然を取り戻して返してきた。
「あれはね、約束の花なの。ある人が戻ってくるまであそこに生けて置いて欲しいって頼まれて」
「ある人?」
「それは言えないわね⋯⋯」
「そうですよね⋯⋯すみませんでした」
「いえ、いいのよ。普通なら気になるものね、保健室に縁起の悪い花なんて。でも本当はそんなことも無いのよ」
先生は眉をゆがめて、悲愴な表情でそう言った。これ以上ここに居るのも怪しまれると思った僕は、静かに保健室をあとにして帰ることにした。
◆ ◆ ◆
翌日、僕は昨日の事を忘れたかのように登校してきた。勿論覚えているがそれには理由がある。
「加賀くん! 昨日なんで私を置いて帰っちゃうのよ!」
来た。これを避ける為に平然としていたが、まさか話しかけてくるとは。当然だけど⋯⋯。
「悪い悪い⋯⋯。あー、えー、つい忘れちまってな⋯⋯」
本当酷いんだから、とそのムスッとした表情で顔を近ずけてくる。近い、だがその顔も可愛いな⋯⋯。
「まぁ、でも嘉永も僕に全部押し付けてきたじゃないか」
「それは⋯⋯今回は許してあげる!」
ふー、ひとまず解決だ。さて情報の共有をしておくか。
「あぁ、あと彼岸花についてなんだが⋯⋯」
「そんなことより、スマホ出して!」
そんなことよりって何だよ⋯⋯、自分が聞いて来いって言ったくせに。そう思いつつも机上に自分のスマホを置く。
「メアド交換しましょ?」
「なんだそんな事か⋯⋯」
「そんなことって何よ、重要な事でしょ?」
だったら彼岸花の話も重要じゃないのかよ⋯⋯。そう言えば、いつの間にか嘉永とこんなに話すことになるはず思ってもなかったな。
嘉永は僕のスマホを操り、彼女のアドレスを登録した。そして僕に返すやいなや、「よろしくね、加賀くん!」と満面の笑みで僕に言った。
「やろうよ!」
「まぁ、暇だから良いけどさ」
俺達は第2準備室で偶然見つけた謎のノートを手がかりに浅川高校六不思議を解明することになった。とはいえ、最初の謎のヒントは保健室の彼岸花というだけで他に何か書いてある訳でもない。という訳でまずは保健室に向かうらしい。
「そもそも保健室の彼岸花ってなんなんだ? 彼岸花って不吉な花じゃなかったっけ」
「そうなのよね⋯⋯それがなんで保健室にあるのかが分からないのよ」
彼岸花は開花時期が彼岸である秋分の日前後な事から彼岸花と名付けられたらしい。別名『死人花』や『地獄花』と呼ばれるほど不吉な花として扱われている。
「とにかく、まずは本当に彼岸花があるのかどうか確認しましょ!」
そう言って彼女は可愛らしい笑顔で保健室の扉を指さした。まだ疑問は多いが調べてみるに越したことはないよな。
「失礼します⋯⋯」
「あら、体調が優れないのかしら?」
中に入るやいなや僕達に気がついた保健の先生が問いかけてきた。今は放課後で、保健室を利用するとすれば大半は運動部である。しかし、僕達の格好は制服、怪しまれるのも無理ないだろう。
「ええ、少し倒れそうになってしまって⋯⋯そこを彼に助けて貰ったんです」
「まぁ、そうなのね。こっちにいらっしゃい、ベッドで横になるといいわ」
よくもまあ、そんな嘘が思いついたな。僕がそう感心していると彼女が僕の制服の袖を引っ張ってアイコンタクトを送ってきた。
先生がベッド付近のカーテンを引いた時に見えたのは窓側にある生徒用のスチール製机に供えられた一輪の彼岸花だった。その夕陽が当たって美しく輝いている真っ赤な彼岸花は不吉なんかではなく、むしろ縁起が良い花なのではないかと疑ってしまうほどに見目麗しい。
「私はとりあえず横になるからあとはお願いね!」
彼女はそう僕の耳元で囁いて、ベッドに向かった。全く、自分から解明しようとか言っておいて最終的には僕に任せるのかよ。
「少し寝ていればよくなるでしょう、ありがとうね少年」
今まで保健室なんて利用することもなかったから知らなかったけどウチの保健の先生って意外とおばさんだったんだな。
「いえいえ、それにしても窓際に生けてある花って⋯⋯」
「あー、あれね⋯⋯。彼岸花よ、お彼岸の時とかによく咲いている」
「何で保健室に彼岸花が?」
ストレートな僕の質問に一瞬だけ唖然となった先生は、すぐに平然を取り戻して返してきた。
「あれはね、約束の花なの。ある人が戻ってくるまであそこに生けて置いて欲しいって頼まれて」
「ある人?」
「それは言えないわね⋯⋯」
「そうですよね⋯⋯すみませんでした」
「いえ、いいのよ。普通なら気になるものね、保健室に縁起の悪い花なんて。でも本当はそんなことも無いのよ」
先生は眉をゆがめて、悲愴な表情でそう言った。これ以上ここに居るのも怪しまれると思った僕は、静かに保健室をあとにして帰ることにした。
◆ ◆ ◆
翌日、僕は昨日の事を忘れたかのように登校してきた。勿論覚えているがそれには理由がある。
「加賀くん! 昨日なんで私を置いて帰っちゃうのよ!」
来た。これを避ける為に平然としていたが、まさか話しかけてくるとは。当然だけど⋯⋯。
「悪い悪い⋯⋯。あー、えー、つい忘れちまってな⋯⋯」
本当酷いんだから、とそのムスッとした表情で顔を近ずけてくる。近い、だがその顔も可愛いな⋯⋯。
「まぁ、でも嘉永も僕に全部押し付けてきたじゃないか」
「それは⋯⋯今回は許してあげる!」
ふー、ひとまず解決だ。さて情報の共有をしておくか。
「あぁ、あと彼岸花についてなんだが⋯⋯」
「そんなことより、スマホ出して!」
そんなことよりって何だよ⋯⋯、自分が聞いて来いって言ったくせに。そう思いつつも机上に自分のスマホを置く。
「メアド交換しましょ?」
「なんだそんな事か⋯⋯」
「そんなことって何よ、重要な事でしょ?」
だったら彼岸花の話も重要じゃないのかよ⋯⋯。そう言えば、いつの間にか嘉永とこんなに話すことになるはず思ってもなかったな。
嘉永は僕のスマホを操り、彼女のアドレスを登録した。そして僕に返すやいなや、「よろしくね、加賀くん!」と満面の笑みで僕に言った。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
首輪 〜性奴隷 律の調教〜
M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。
R18です。
ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。
孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。
幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。
それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。
新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。
後悔と快感の中で
なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私
快感に溺れてしまってる私
なつきの体験談かも知れないです
もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう
もっと後悔して
もっと溺れてしまうかも
※感想を聞かせてもらえたらうれしいです
完結【R―18】様々な情事 短編集
秋刀魚妹子
恋愛
本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。
タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。
好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。
基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。
同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。
※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。
※ 更新は不定期です。
それでは、楽しんで頂けたら幸いです。
【完結】【R18百合】女子寮ルームメイトに夜な夜なおっぱいを吸われています。
千鶴田ルト
恋愛
本編完結済み。細々と特別編を書いていくかもしれません。
風月学園女子寮。
私――舞鶴ミサが夜中に目を覚ますと、ルームメイトの藤咲ひなたが私の胸を…!
R-18ですが、いわゆる本番行為はなく、ひたすらおっぱいばかり攻めるガールズラブ小説です。
おすすめする人
・百合/GL/ガールズラブが好きな人
・ひたすらおっぱいを攻める描写が好きな人
・起きないように寝込みを襲うドキドキが好きな人
※タイトル画像はAI生成ですが、キャラクターデザインのイメージは合っています。
※私の小説に関しては誤字等あったら指摘してもらえると嬉しいです。(他の方の場合はわからないですが)
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる