1 / 3
来世こそは⋯⋯!
しおりを挟む
「来世こそは、刺激のある楽しい人生を送りたいな⋯⋯」
俺は今、学校の屋上にある鉄柵の外に呆然と立っている。少しでも強風が吹けば、直ぐにでも飛ばされて地面へ急降下してしまうだろう。
「死ぬのは怖い、けどこの世界にいる事の方がもっと怖いんだよ⋯⋯だから俺はここに立っている」
昔から地味だった俺は何をしても駄目で運動も勉強も中の下、得意な事と言えば格闘ゲーム位で平凡な人間と言うより駄目人間に近い存在だった。
それが悔しくて悔しくて堪らなかった。普通の人は今の話を聞いたら努力しろとか自分のせいだとか言うのだろうが、そんな事自分が一番わかってる。⋯⋯分かってるからこそ新たな人生を歩もうとしているんだ。だから今ここに立っていることは後悔していない。遺書も書いた、親に「行ってきます」とも言った、もう思い残す事は無い。そう心を落ち着かせて──
僕は飛び降り自殺をした。
「起きて下さい、圭人さん。新たな人生を始めるんじゃなかったんですか?」
「ん⋯⋯あぁ何処だここ」
誰かの声で意識を取り戻した俺は氷盤のような冷たい地面に横たわっていた。飛び降り自殺をしてから精神的な時間感覚で言えば、ほんの数秒程度。起き上がって周りをぐるりと見渡すが永遠と真っ白な空間が続いているだけ。俺がここが何処か瞬時に察した。
「おはようございます。どうですか? 亡くなった感想は。実際にはまだ死んでいませんが」
「うわっ!」
さっき見渡した時には誰も居なかった俺の背後に立っていたのは羽衣を身にまとった羽の生えた女性。百合の花のように清楚感を漂わせた彼女はこちらに優しく微笑みかけていた。
「自己紹介していませんでしたね。私はザドキエル、人間界で言う所の天使ですよ」
確かにぴょこんと頭の上に異様なほど輝いている輪っかが浮いているが本当にイメージ通りなんだな⋯⋯。
「あんたが天使って事は分かったが、俺は死んだんだろ?」
「いいえ、正確には死んではいません。確かに午後4時35分、貴方は学校の屋上で飛び降り自殺をしました。しかし、その後すぐに病院へ運ばれて今はまだ意識不明の重体です。そして貴方にはこれから条件付きで生き返る権利を与えます」
「生き返る権利って俺は死にたくて死んだんだぜ?」
「貴方は刺激のある人生を送りたかったのですよね? なので自由な願いをひとつだけ叶えて生き返らせて差し上げます。お金が欲しいでもモテモテになりたいでも何でも良いんですよ?」
女神とやらは優しい表情でそう言った。悪くない話だけど旨みがありすぎやしないか? この話⋯⋯裏がありそうだな。
「って思いましたよね?」
「心の中読めるんかい!」
「天使ですから。確かにご察しの通り条件があります。貴方には魔王を討伐して頂きます」
「ま、魔王?」
「はい。貴方には魔法と魔獣が存在する異世界へ召喚されてもらいます。簡単に言えばファンタジーの世界です」
「あんなの人間が作った空想上の世界じゃないのか?」
「それが実在するんですよ。人間界と並行世界として⋯⋯そしてそこに魔王が居ます」
「それを倒せって事か。でも俺異世界について何も知らないぜ?」
「それは重々承知しております、なので貴方には特殊能力を与えて召喚しますのでご安心下さい」
「特殊能力ってのはどういうやつだ?」
「簡単に言えば魔法が無限に使える【無限魔力】という能力です」
「へぇ⋯⋯無限魔力ねぇ」
正直、願いを叶えてもらって生き返る事はそんなに魅力を感じないけど、異世界召喚ってのには少々興味があるしやってみるか。特殊能力も貰えるらしいし⋯⋯。
「いいぜ、異世界召喚受けて立つ!」
「そのお言葉を待っていました。それでは早速、装備を差し上げるのでお着替え下さいね」
朗らかな笑みを見せた途端、目の前の空間からいきなり革製のローブや短剣が落ちてきた。俺は言われた通りに着替えて装備を整え、ニヤリと女神に合図をした。
「お似合いですよ! それでは召喚しますね!」
「あぁ、それじゃあレッツ異世界しょ──」
俺が台詞を言っている途中で遮るかのように一瞬で目の前が森のような場所に変わり、女神が消えていた。
「まだ言ってる途中だっただろぉ!」
樹木が犇めき叢る森中に俺の怒りの雄叫び声が響き渡った。
俺は今、学校の屋上にある鉄柵の外に呆然と立っている。少しでも強風が吹けば、直ぐにでも飛ばされて地面へ急降下してしまうだろう。
「死ぬのは怖い、けどこの世界にいる事の方がもっと怖いんだよ⋯⋯だから俺はここに立っている」
昔から地味だった俺は何をしても駄目で運動も勉強も中の下、得意な事と言えば格闘ゲーム位で平凡な人間と言うより駄目人間に近い存在だった。
それが悔しくて悔しくて堪らなかった。普通の人は今の話を聞いたら努力しろとか自分のせいだとか言うのだろうが、そんな事自分が一番わかってる。⋯⋯分かってるからこそ新たな人生を歩もうとしているんだ。だから今ここに立っていることは後悔していない。遺書も書いた、親に「行ってきます」とも言った、もう思い残す事は無い。そう心を落ち着かせて──
僕は飛び降り自殺をした。
「起きて下さい、圭人さん。新たな人生を始めるんじゃなかったんですか?」
「ん⋯⋯あぁ何処だここ」
誰かの声で意識を取り戻した俺は氷盤のような冷たい地面に横たわっていた。飛び降り自殺をしてから精神的な時間感覚で言えば、ほんの数秒程度。起き上がって周りをぐるりと見渡すが永遠と真っ白な空間が続いているだけ。俺がここが何処か瞬時に察した。
「おはようございます。どうですか? 亡くなった感想は。実際にはまだ死んでいませんが」
「うわっ!」
さっき見渡した時には誰も居なかった俺の背後に立っていたのは羽衣を身にまとった羽の生えた女性。百合の花のように清楚感を漂わせた彼女はこちらに優しく微笑みかけていた。
「自己紹介していませんでしたね。私はザドキエル、人間界で言う所の天使ですよ」
確かにぴょこんと頭の上に異様なほど輝いている輪っかが浮いているが本当にイメージ通りなんだな⋯⋯。
「あんたが天使って事は分かったが、俺は死んだんだろ?」
「いいえ、正確には死んではいません。確かに午後4時35分、貴方は学校の屋上で飛び降り自殺をしました。しかし、その後すぐに病院へ運ばれて今はまだ意識不明の重体です。そして貴方にはこれから条件付きで生き返る権利を与えます」
「生き返る権利って俺は死にたくて死んだんだぜ?」
「貴方は刺激のある人生を送りたかったのですよね? なので自由な願いをひとつだけ叶えて生き返らせて差し上げます。お金が欲しいでもモテモテになりたいでも何でも良いんですよ?」
女神とやらは優しい表情でそう言った。悪くない話だけど旨みがありすぎやしないか? この話⋯⋯裏がありそうだな。
「って思いましたよね?」
「心の中読めるんかい!」
「天使ですから。確かにご察しの通り条件があります。貴方には魔王を討伐して頂きます」
「ま、魔王?」
「はい。貴方には魔法と魔獣が存在する異世界へ召喚されてもらいます。簡単に言えばファンタジーの世界です」
「あんなの人間が作った空想上の世界じゃないのか?」
「それが実在するんですよ。人間界と並行世界として⋯⋯そしてそこに魔王が居ます」
「それを倒せって事か。でも俺異世界について何も知らないぜ?」
「それは重々承知しております、なので貴方には特殊能力を与えて召喚しますのでご安心下さい」
「特殊能力ってのはどういうやつだ?」
「簡単に言えば魔法が無限に使える【無限魔力】という能力です」
「へぇ⋯⋯無限魔力ねぇ」
正直、願いを叶えてもらって生き返る事はそんなに魅力を感じないけど、異世界召喚ってのには少々興味があるしやってみるか。特殊能力も貰えるらしいし⋯⋯。
「いいぜ、異世界召喚受けて立つ!」
「そのお言葉を待っていました。それでは早速、装備を差し上げるのでお着替え下さいね」
朗らかな笑みを見せた途端、目の前の空間からいきなり革製のローブや短剣が落ちてきた。俺は言われた通りに着替えて装備を整え、ニヤリと女神に合図をした。
「お似合いですよ! それでは召喚しますね!」
「あぁ、それじゃあレッツ異世界しょ──」
俺が台詞を言っている途中で遮るかのように一瞬で目の前が森のような場所に変わり、女神が消えていた。
「まだ言ってる途中だっただろぉ!」
樹木が犇めき叢る森中に俺の怒りの雄叫び声が響き渡った。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜
西園寺若葉
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。
4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。
そんな彼はある日、追放される。
「よっし。やっと追放だ。」
自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。
- この話はフィクションです。
- カクヨム様でも連載しています。
転生無双なんて大層なこと、できるわけないでしょう!〜公爵令息が家族、友達、精霊と送る仲良しスローライフ〜
西園寺若葉
ファンタジー
転生したラインハルトはその際に超説明が適当な女神から、訳も分からず、チートスキルをもらう。
どこに転生するか、どんなスキルを貰ったのか、どんな身分に転生したのか全てを分からず転生したラインハルトが平和な?日常生活を送る話。
- カクヨム様にて、週間総合ランキングにランクインしました!
- アルファポリス様にて、人気ランキング、HOTランキングにランクインしました!
- この話はフィクションです。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる