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Ep4.最後の晩餐、キンキの晩餐、シメの雑炊
4-14
しおりを挟む同じ方向を向いているはずの二人の想いは、どうすれば繋がるのだろう。話をすればわかりあえるかもしれないのに、二人が向き合うためにはどうすればいいのか。
咲空の頭がぐるぐると巡る。考えて、考えて。でも蝦夷神様の和解方法なんて知らないのだ。ソラヤでしてきたことはご飯を作ることだった。咲空が知る想いを伝える術とはご飯だけである。
(お腹減ったからいい考えが浮かばないのかもしれない。腹が減っては戦はできぬ、ってやつ)
アオイが小さく息を吸いこむ。玖琉に向けた人差し指は震えていた。その瞬間が来てしまう前に――咲空は飛び出す。
「だめ!」
いい案なんてこれっぽっちも浮かんでいない、行き当たりばったりだ。それでも、二人の間に立った咲空は叫ぶ。
「お腹減りました!」
アオイも玖琉も、咲空をじいと見つめて動かない。
咲空は空を見上げる。もしここに雷神がいるのなら――信じて、叫ぶ。
「雷神様も、ご飯食べましょう! 美味しいご飯食べて気持ちリセットです!」
それが届いたのか、雨足が弱まっていく。雷の音も聞こえなくなった。
睨みあっていたアオイと玖琉はというと、遮るように咲空が飛び出てきたことはもちろんだが、雷神に向けて叫んだことに驚いていた。
なんて命知らずだろうと呆れた顔をしていた玖琉だったが、咲空の叫びによって雨足が弱まってきたことがとどめである。がっくりと肩を落とし、その場にしゃがみ込む。
「は、はははっ……なんだこれ……」
同じく緊張の糸がぷつりと切れて、濡れた地面に座り込んだアオイが笑う。ひょこひょこと揺れていた黄金狐の耳や牙といったものは消えていた。咲空がよく知る、いつものアオイである。
あまりにもけたけたと笑っているので逆に心配になる。その顔を咲空が覗き込むと、アオイはへらりと笑みを浮かべた。
「……すごいや、サクラちゃん」
「え?」
「緊張感のなさというか空気の読めなさというか……でも、確かにお腹は減っていますね」
「腹が減っては戦はできませんから」
そして咲空は玖琉の方へ駆け寄り、手を差し伸べる。
「玖琉も。一緒にご飯食べよう?」
「…………」
玖琉は一度だけ空を見上げた。先ほどの雷雲は消え、空は少しずつ明るくなっていく。その様子を確認して、玖琉は咲空の手を取る。
「じゃあ、みんなで食べようか」
***
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