【完結】姉を追い出して当主になった悪女ですが、何か?

山田 ボルダ

文字の大きさ
上 下
22 / 42
第三章 悪女とお茶会

2-01

しおりを挟む
 お茶会当日。
お茶会は一人で参加する人も多い。ダリアももちろん一人で参加だ。
なるべくダメージを減らそうと、ダリアは時間ギリギリに到着するよう会場に向かった。

会場はフォックス公爵家。会場となる部屋は公爵家自慢の庭に面しており、美しい花々が招待客の目を楽しませていた。

 ダリアが少し遅れて会場に入ると、賑やかだった場が一瞬にして静まり返った。
会場中の視線が自分一人に集まるのを感じて、ダリアは思わず下を向きそうになる。

「怯むな。覚悟を決めたんだろ」
夜会のときにクライドに言われた言葉を思い出すと、不思議と心が落ち着いた。

私は稀代の悪女だ、と自身を奮い起こし顔を上げる。そんな心情を周囲に悟られないように、余裕があるようにゆっくりと会場内を見渡し、中に入った。

周囲からヒソヒソと話し声が聞こえてくる。小声のためところどころしかわからないが、間違いなく悪口だ。
中には聞こえるように「よく来れましたわね」「メアリ様がおかわいそう」などの声も聞こえる。

夜会のときに挨拶をした貴族たちの多くは、実際には何があったかを正しく知った上であえて黙っていたように感じたが、この会場にいる女性たちは、〝姉を追い出した悪女〟という噂をそのまま信じているようだ。ダリアを見る視線が鋭い刃物のように刺さってくる。
以前のお茶会では楽しく会話をした令嬢たちも見かけたが、みなダリアを見ると目をそらした。

 空いている椅子を見つけ座ると、給仕から紅茶を受け取り、飲みながら周囲を見渡す。

あいかわらず、悪口はあちこちから聞こえる。クライドの名前も聞こえてきた。やっぱり悪い評判になっている。夜会につれていくんじゃなかった。ダリアは心のなかで舌打ちをした。

 紅茶をゆっくりと飲み終えると、カップをソーサーに戻した。
出席はした。周囲にも自分が参加したことを見せつけた。あとは主催者のソニキュア・フォックス公爵令嬢に挨拶をして、とっとと帰ろう。

 ソニキュアを探すため周囲を見渡すと、遠くに人が集まっているのが見えた。
その集まりはだんだんこちらに移動してきて、やがてダリアの前で止まった。
集団の中心にいたのは、美しい女性。ソニキュア・フォックス公爵令嬢その人だ。

ダリアは慌てて立ち上がり礼をとる。
自分を招待した意図がわからないので、目線は下に向いたままにした。

「今日はお越しいただきありがとうございます。ダリア・マクレディ伯爵」
優しい声が頭上から降ってきて、ダリアはゆっくりと顔を上げた。

ソニキュア・フォックス公爵令嬢は穏やかな笑みを浮かべ、ダリアの前に立っていた。

 ソニキュアが周囲に目をやると、周りにいた取り巻きの令嬢たちは黙ってみんな距離を取った。
ソニキュアはダリアに椅子をすすめ、同じテーブルの反対側に自分も座った。

「ごめんなさいね」ソニキュアがダリアを見て申し訳無さそうに言った。
謝られる理由がわからず、不思議そうな顔をしていたらしい。くすりと笑うと
「他の方たちの対応よ。ここまでひどいとは予想していなかったの。あなたにとっては針のむしろだったわね」
「いえ、そんなことは」

ソニキュアが悪意のみでお茶会に招待したわけではないと思ったダリアは思い切って聞いてみた。
「なぜ、私を招待してくださったのですか」
「そうね、あなたに興味があったから、かしら」
「興味、ですか」
「そう。少し私とお話してくれないかしら」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私が、良いと言ってくれるので結婚します

あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。 しかし、その事を良く思わないクリスが・・。

【完】夫から冷遇される伯爵夫人でしたが、身分を隠して踊り子として夜働いていたら、その夫に見初められました。

112
恋愛
伯爵家同士の結婚、申し分ない筈だった。 エッジワーズ家の娘、エリシアは踊り子の娘だったが為に嫁ぎ先の夫に冷遇され、虐げられ、屋敷を追い出される。 庭の片隅、掘っ立て小屋で生活していたエリシアは、街で祝祭が開かれることを耳にする。どうせ誰からも顧みられないからと、こっそり抜け出して街へ向かう。すると街の中心部で民衆が音楽に合わせて踊っていた。その輪の中にエリシアも入り一緒になって踊っていると──

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの
恋愛
 幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。  誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。  数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。  お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。  片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。  お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……  っと言った感じのストーリーです。

[完結]離婚したいって泣くくらいなら、結婚する前に言ってくれ!

日向はび
恋愛
「離婚させてくれぇ」「泣くな!」結婚してすぐにビルドは「離婚して」とフィーナに泣きついてきた。2人が生まれる前の母親同士の約束により結婚したけれど、好きな人ができたから別れたいって、それなら結婚する前に言え! あまりに情けなく自分勝手なビルドの姿に、とうとう堪忍袋の尾が切れた。「慰謝料を要求します」「それは困る!」「困るじゃねー!」

【完結】婚約破棄!! 

❄️冬は つとめて
恋愛
国王主催の卒業生の祝賀会で、この国の王太子が婚約破棄の暴挙に出た。会場内で繰り広げられる婚約破棄の場に、王と王妃が現れようとしていた。

【完結】都合のいい女ではありませんので

風見ゆうみ
恋愛
アルミラ・レイドック侯爵令嬢には伯爵家の次男のオズック・エルモードという婚約者がいた。 わたしと彼は、現在、遠距離恋愛中だった。 サプライズでオズック様に会いに出かけたわたしは彼がわたしの親友と寄り添っているところを見てしまう。 「アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない」 レイドック侯爵家にはわたししか子供がいない。 オズック様は侯爵という爵位が目的で婿養子になり、彼がレイドック侯爵になれば、わたしを捨てるつもりなのだという。 親友と恋人の会話を聞いたわたしは彼らに制裁を加えることにした。 ※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語

ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ…… リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。 ⭐︎2023.4.24完結⭐︎ ※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。  →2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)

悪女と呼ばれた王妃

アズやっこ
恋愛
私はこの国の王妃だった。悪女と呼ばれ処刑される。 処刑台へ向かうと先に処刑された私の幼馴染み、私の護衛騎士、私の従者達、胴体と頭が離れた状態で捨て置かれている。 まるで屑物のように足で蹴られぞんざいな扱いをされている。 私一人処刑すれば済む話なのに。 それでも仕方がないわね。私は心がない悪女、今までの行いの結果よね。 目の前には私の夫、この国の国王陛下が座っている。 私はただ、 貴方を愛して、貴方を護りたかっただけだったの。 貴方のこの国を、貴方の地位を、貴方の政務を…、 ただ護りたかっただけ…。 だから私は泣かない。悪女らしく最後は笑ってこの世を去るわ。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ ゆるい設定です。  ❈ 処刑エンドなのでバットエンドです。

処理中です...