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第一章 悪女と婿にしたい男性ナンバーワン
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それからしばらくしたある日、マクレディの屋敷にクライド・ノーバックが訪ねてきた。
彼はメアリが嫁いだヘンリー・ノーバックの弟で、ノーバック子爵家の次男にあたり、今は王都で騎士団の一員として働いている。
「こんにちは、姉を家から追い出した稀代の悪女様」
クライドはさわやかな笑みを浮かべながら憎まれ口を叩く。
「褒めていただいてどうも。長期遠征お疲れ様でした、騎士様。いつ王都にお戻りで?」ダリアは冷めた目を向けながら嫌味を含んだ口調で言い返す。
クライドはそんな態度を気にする風もなくヘラヘラ笑いながら
「一週間前かな。戻ってからもずっとバタバタしててようやく休みが取れたよ」
「こんな悪の巣窟に出入りしないほうがいいんじゃない?世のご令嬢たちに知られたら大問題よ。婿に来てほしい男性ナンバーワンさん」
「あれ、その噂知ってる?そうなんだよ、俺、婿に来てほしい男性ナンバーワンらしいんだよ。まあ、俺イケメンだし、将来有望だし、性格もいいしね。まあ当然だよね」
まさかの自画自賛にダリアは呆れたように冷めた紅茶をすする。
「そのイケメンさんが何の用かしら?」
「なんでこんなことになったのか話を聞きたくてね」
声が一段低くなった。口元は笑っているが、目は笑っていない。
「なんで俺に一言も相談しなかったのかとか、なんで俺が長期遠征中で王都にいないときに事を起こしたのか、とかまあ、せっかくだからこの計画について全部聞いておこうと思って」
「て、手紙で知らせたじゃない」
「ああ、届いたね。君からもうちの親からも翌日に届いたよ。まさに寝耳に水。ご丁寧に、仕事を放りだして戻って来るなの注意書き付き。しょうがないから従ったけどさあ」
クライドは上を向いて大きなため息を付くと、執務机の前に置いてある来客用のソファにどかっと座って、ダリアをじろりと見た。
「それじゃあ、最初から説明して。全部」
ダリアは少し考えるような仕草をすると、メイドに二人分のお茶をいれるよう命じた。
「そんな計画なんて大したもんじゃないのよ」
と椅子から立ち上がり、クライドの向かいのソファに座った。
彼はメアリが嫁いだヘンリー・ノーバックの弟で、ノーバック子爵家の次男にあたり、今は王都で騎士団の一員として働いている。
「こんにちは、姉を家から追い出した稀代の悪女様」
クライドはさわやかな笑みを浮かべながら憎まれ口を叩く。
「褒めていただいてどうも。長期遠征お疲れ様でした、騎士様。いつ王都にお戻りで?」ダリアは冷めた目を向けながら嫌味を含んだ口調で言い返す。
クライドはそんな態度を気にする風もなくヘラヘラ笑いながら
「一週間前かな。戻ってからもずっとバタバタしててようやく休みが取れたよ」
「こんな悪の巣窟に出入りしないほうがいいんじゃない?世のご令嬢たちに知られたら大問題よ。婿に来てほしい男性ナンバーワンさん」
「あれ、その噂知ってる?そうなんだよ、俺、婿に来てほしい男性ナンバーワンらしいんだよ。まあ、俺イケメンだし、将来有望だし、性格もいいしね。まあ当然だよね」
まさかの自画自賛にダリアは呆れたように冷めた紅茶をすする。
「そのイケメンさんが何の用かしら?」
「なんでこんなことになったのか話を聞きたくてね」
声が一段低くなった。口元は笑っているが、目は笑っていない。
「なんで俺に一言も相談しなかったのかとか、なんで俺が長期遠征中で王都にいないときに事を起こしたのか、とかまあ、せっかくだからこの計画について全部聞いておこうと思って」
「て、手紙で知らせたじゃない」
「ああ、届いたね。君からもうちの親からも翌日に届いたよ。まさに寝耳に水。ご丁寧に、仕事を放りだして戻って来るなの注意書き付き。しょうがないから従ったけどさあ」
クライドは上を向いて大きなため息を付くと、執務机の前に置いてある来客用のソファにどかっと座って、ダリアをじろりと見た。
「それじゃあ、最初から説明して。全部」
ダリアは少し考えるような仕草をすると、メイドに二人分のお茶をいれるよう命じた。
「そんな計画なんて大したもんじゃないのよ」
と椅子から立ち上がり、クライドの向かいのソファに座った。
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