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牙を剥く狂気

矛盾

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その日は、とてもよく晴れた日だった。

「あっ、レムリア!」

背後から名前を呼ばれ振り向くと、リュシルが此方に手を振りながら走って来る所だった。

「おはようリュシル」
「おはようレムリア。これから仕事?」
「うん。でも今日は午前で仕事が終わりなの」
「そうなんだ。途中まで一緒に行こうよ」

そうしてニ人で最近あった色々話しながら歩き始める。そして、内容はレムリアが今朝見た不思議な夢の話へと移る。

「変な夢?」
「そう。まぁ、内容は全然覚えて無いんだけどね。……でも、凄く大事な夢だった気がするんだけど」
「俺もそんな夢見たことあるよ」
「本当?」
「うん。とても大切な、忘れちゃいけない夢だった気がするんだけど、起きたら何にも覚えて無いんだ」

(誰かの会話だった気がするんだけど…)


ーーズキン。


「痛っ!」
「如何したの?」
「ちょっと頭痛が…」

痛い。
意識が痛みに集中すると、段々と痛みが引いて行く。

「まだ痛い?余りにも酷いなら、今日は休んだら?」
「大丈夫。もう痛く無いわ」

(何だったんだろう今の?寝不足なのかなぁ)

「あっ、もう着いたね。今日は早く終わるんだよね?迎えに行くよ」
「…わざわざ訓練を中断してまで来なくていいよ」
「俺がそうしたいの。それに、休憩の間に来るから大丈夫。じゃあね」

そう言ってリュシルは訓練に向かう。
その背中を見送りながら、小さく呟く。

「…もう一度はっきり言わないと」

私は、貴方の気持ちには応えられないと。


(……あれ?)


応えられない?
……そう、私は彼の気持には応えられないと思っている。つまり、私は彼を弟と見ていて男として見てない。

(なのに…)

この間のローズとの会話。

「な…に?」

何だろうこの気持悪い感じ。
あの時、私は確かにリュシルを好きな事を認めたく無いと思っていた。
認める時間が欲しいと。

それが今は如何だ。
前の気持ちとは正反対の事を思っている。考えが矛盾している。

(如何して?)

人は、こんな短期間に気持ちが正反対に変わるものなのだろうか?

ーーガチャ。

「おや?もう来てたのかい」
「先生」
「来てたのなら、この薬を作ってくれないかの」
「わかりました。直ぐに作ります」

渡されたレシピを手に取り、一旦気持ちを切り替えた。そうして、自身のすべき仕事に取り掛かるのだった。
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