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新たな人生
侵入者
しおりを挟むそれは、突然の事だった。
その日は、仕事が休みの私しか家に居なくて一人ででのんびりと過ごしていた。
「暇だなぁ~。…そうだ、お母さんに野菜買って来てって言われてたんだ」
のろのろとベッドから起き上がり、身支度を整えてからお財布を持って家を出る。
「やっぱり、市場は賑やかだなぁ。あっ、あそこの野菜安くなってる!おじさん、その野菜下さい!」
他にも値下げされた野菜を狙う主婦達の目を掻い潜り、ボロボロになりながらも何とか野菜を買う事が出来た。
「まいど!レムリアちゃん、頑張ったな!帰りにこいつでも食べて帰りな」
そう言って渡されたのは、とっても甘そうな真っ赤な林檎。
「うわぁ!おじさんありがとう」
「また買いに来てくれよな」
「勿論!」
他にも生活用品などの必要な物を買い終えて、レムリアは家に帰る。
シャリシャリ。
「この林檎、凄く美味しい。この林檎も買えばよかったなぁ~」
丁度、リンゴを食べ終える頃に家に着く。
そうして、玄関のドアに手を掛け…。
「………あれ?鍵閉め忘れたっけ?」
そんな事を思いながら家の中に入った瞬間。
「んぐっ!?」
横から伸びて来た手に口を塞がれ、床に押し倒される。
ーーパタン。
背後で閉まる扉の音が、やけに大きく聞こえた。
「ん~っ!!」
「静かにしろ」
必死に抵抗していると、くぐもった声が聞こえ目を開ける。目の前には、黒いローブを被り、口元を黒い布で覆った男がいた。私より大きいが大人と比べると少し小柄な人物。
(誰…?)
「やっと見つけた。お前だ、間違いない」
目の前の男は、レムリアを見下ろしながら少し興奮した様子で話す。
「あの時、あの時にお前が邪魔をしなければっ!あの野郎を殺せたのに!お前が邪魔をするから…!」
(何?何のこと!?)
「今度は邪魔はさせない」
「!!」
そう言って男はナイフを取り出す。
それを見た瞬間、前世での最後を思い出し恐怖で身体が動かなくなる。
(誰か助けてっ!)
「死ね」
男がナイフを勢い良く振りかぶった瞬間だった。
「レムリア~!居る?居るよね?遊びに来たよ~」
男の腕がピタッと止まる。
(リュシル!)
今彼が来たら、間違いなく巻き込まれる。
(来ないでリュシル!来ちゃダメっ!)
そんな思いも虚しくドアが開く。
男が扉に意識を向け身体を向けナイフを向ける。
その瞬間、レムリアの口元の手が緩む。
(いまだ!)
その瞬間を見逃さず、レムリアはその手に思いっきり噛み付いた。
「ぐっ!?」
「リュシル逃げて!!」
男が私から退いた瞬間、扉に向かい必死に走る。
「レムリア!?」
私と男を見たリュシルは、直ぐに状況を理解した様だ。そんな彼に体当たりして、外に勢いよく飛び出す。
「誰か助けてっ!」
私の声に多くの人が集まり出す。
その時、家の中からガラスが割れる音が聞こえた。
「どうしたの!?」
「大丈夫か!」
顔見知りの大人達が、二人の周囲に駆け寄る。
「家の中にナイフを持った知らない男がいて…」
「何!?本当か!!」
「二人はここで待ってろ!」
そう言って何人かの男の人達が家の中に入っていく。
「レムリアっ!大丈夫?怪我してない⁈」
ずっと抱き締めていたリュシルが、自身に覆い被さるレムリアを抱きしめ返して酷く慌てて聞いてくる。
「うん。リュシルが来てくれて助かったわ。…ありがとう」
「よか…た。よかった無事で!」
泣き出しそうなリュシルはそう言って、強く私を抱き締めた。
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