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ソフィア学園新聞部(非公式)
8、転生は一大スクープ
しおりを挟むスキル鑑定で倒れ高熱で寝込んでから三日。
完全回復したレティシアは、自身の部屋で一人状況整理をしていた。
「私の前世の名前は思い出せないけど、日本に住んでた二十代後半の凄腕記者。因みに独身。最後の記憶は、大物政治家の汚職問題を記事にしようと嗅ぎ回ってた所まで。多分、口封じに殺されたのかな」
そこまで紙に書いてから、レティシアは自身の姿を鏡で見る。少しふわふわした茶色い髪に、パッチリとした緑の瞳。そこには、それなりに可愛い少女の姿がある。
「私は、レティシア・ザットン。ザットン子爵家の長女。家は余り裕福じゃないけど、優しい両親と使用人達が大好き。最近5歳になって、スキル鑑定を受けに行った。そこで前世の記憶を取り戻す」
レティシアは、鏡から離れ先程まで座っていた場所に戻る。そうして、全身を椅子に委ねて溜息を吐いた。
「これが前世で話題の異世界転生か~」
よく小説やアニメで題材に使われ、多くの人々の叶わぬ憧れとなっていた異世界転生。まさか、実際に自分に起こり得るなどとは思ってもいなかった。
「これ、日本に戻って記事に出来れば歴史に残る大スクープになったのにっ!」
一大スクープを逃すなんて、記者として痛恨のミス。悔しさに全身を震わすレティシア。
(転生したのは別にいい。前世では両親を早くに亡くしてて、身内は居なかったし。少ない友人達は…、まぁ大丈夫ね)
最初は悲しんでくれるだろうが、直ぐに私の死の真相を白日の元に晒し無念を晴らすーーという本心と汚職と殺人という大スクープを手に入れる一代チャンスを逃さない為に駆けずり回るだろう。間違いない、私でもそうする。
「うん、それでこそ私の友だ」
前世の無念は、友人達に任せておけば大丈夫。
問題はこれからだ。
「転生しちゃったのは仕方ないよね。幸いな事に、今までのレティシアの記憶はちゃんと残ってる。なんか同化したみたい。両親も少ない使用人達も優しくて大好きだから、家族関係も良好」
生まれた家も、貴族だけれどそれ程堅苦しくはない子爵家。平民に近いが余程良い暮らしが出来る、堅苦しい貴族のしがらみが少ない可もなく不可もない程々の家。今後どうなるか分からないが、平民としての前世を思い出した今のレティシアには最適の環境だ。
「家族、家、ともに問題は無し。問題があるのは、スキルなんだよね」
転生とは魔法のある世界と思っていたが、この世界には魔法は無い。
いや、かつてはあった。
だが、理由は分からないがいつしか魔法が失われてしまったのだ。
その魔法の代わりに、スキルと呼ばれるものがある。この世界では、いつの頃からか5歳になると神の贈り物と呼ばれるスキルを与えられる様になった。スキルは基本的に一人一つ。稀に二つのスキルを持つ者がいるが、それは本当に稀だ。
過去最高の保有スキル所持は三つ。
だがそれも、過去にたった一人だけ。
それ以降、三つのスキルを持つ者は現れていない。
「それなのに、私のスキルは三つ…」
レティシアは、それなりに可愛らしい顔を顰め唸り声を上げるのだった。
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