JKは元女帝⁉︎

佐倉萌

彼女を初めて見た時の事を忘れない。

(綺麗…。)

そんな言葉しか頭に浮かばなかった。
彼女の整い過ぎた顔もそうだけど何よりその瞳。コバルトブルーの瞳は陽の光を反射しキラキラと輝いていた。その瞳は、全てを見透かす瞳だと思った。

(彼女なら…。)

クラスの男子とのやりとりを見て思った。彼女なら本当の私を見てくれる…と。私の家は代々続く大手食品メーカーを経営している。そんな私を周りの人達は佐倉家のご令嬢としてしか見てくれない。私の言う事を全て肯定しかしない。

『流石は、"あの"佐倉家のご令嬢だ。』
(やめてやめてっ！そんな目で私を見ないでっ‼︎私はすごくなんか無い！私はただの萌だよっ！)

両親は私を可愛がってくれる。そんな両親に私の悩みを言えない。両親は仕事に誇りを持っている。

『萌は萌のやりたい事をしなさい。私たちの娘だからって気にすることはないからね。』

両親はそう言ってくれたけど、周りがそれを許さない。周りの人達には私は佐倉家の娘としか映らない。高校生になっても周りの環境は変わらず一生この環境が続くと思っていた。そこに彼女が現れた。クラスの男子の嫌がらせを物ともせず堂々としたその姿。

(彼女なら本当の私を見てくれる。…ううん。私は彼女と友達になりたい。)

誰かの友達になりたいなんて初めて思った。勝手に周りにやってくる人達はどうしても友達だと思えなかった。彼女から話しかけてくることはきっと無い。

(だから私から話しかけないと。)

深呼吸をして彼女に話しかけた。緊張して何回も噛んでしまった。恥ずかしくて目に涙が溜まった時、彼女がフッと笑みをこぼした。陽の光の差し込む中、微笑む彼女は正しく女神の様に綺麗だった。クラス中が彼女に見入っていることが分かる。

「よろしく萌。」

その一言がとても嬉しかった。
彼女は私を見てくれた。

「！！うっうん！よろしく麗ちゃん！」

家族以外の前で初めて心からの笑顔を浮かべた。