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第2章

No.215

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「もうっ!だから、あんなにやめてって言ったのに!!」

サザーランド公爵家の紋章の入った帰りの馬車の中、真琴は顔を真っ赤にして目の前に座るアルフォンスに抗議をしていた。

「真琴、そんなに顔を赤くしてると身体に良くないぞ?」

だがそんな真琴も可愛い…と、アルフォンスは心の中で思いながら真琴を見ていた。

「アルフォンスさんっ!私の話聞いてますか!?」
「勿論だ。俺が真琴の声を聞き漏らすなんてあり得ない。それに、あれは真琴が俺以外の男を気にかけたからいけないんだ」
「気にかけたって…、ただバンラート様の心配をしただけですよ?」
「ほら、俺以外の男を気にしてるじゃないか」

アルフォンスのその言葉に、真琴は反論出来ずに言葉に詰まる。真琴とアルフォンスの言葉のニュアンスは違うが、結論から言えば確かに真琴はアルフォンス以外の男性を気にかけた事になる。

「そ、それは…確かにそうですけど…」

だが、そんな事を言っていればキリが無い。この世界には、真琴とアルフォンスの二人だけでは無いのだ。故に「他の誰かを気にかけるな」などと言う事は、監禁されるかこの世界に二人だけ居なくならない限りほぼ不可能だ。

「それに、真琴があんな奴の心配する必要はない」

(仮にも、自分の上司でこの国の王様なのにその態度…)

「それってどう言う事ですか?」
「あいつは、俺の真琴の事を試したんだ」
「試す…?」
「あぁ。目の前で態と今後の危険な作戦を聞かせて、真琴が作戦の邪魔をしないか試してんだ」

「理解は出来るが胸糞悪い」と悪態をつくアルフォンスを横目に、真琴はやっと理解した。

(だから、私の前であんなにペラペラと作戦を喋ってたんだ…)

その事実に、真琴はホッとした。
ちゃんと真琴を試す意味があっての行動だったのだ。

(よかった。もしかしたら、今までもこうやって人の前で作戦を話してるのかと、少し心配だったんだよね)

安堵する一方、モヤモヤとした気持ちもあった。

(………試されたって事は、私はまだバンラート様達に信用されて無いって事だよね)

その事実に、真琴は胸が痛む。
真琴の中では、幾度も助けてくれたバンラートやドランは信頼に足る人物だと認識していた。会って話す回数は少なかったが、アルフォンスが心の底では信頼している事を知っていたからだ。

(私って、本当に馬鹿だなぁ~)

バンラートは王だ。
この国のトップとして民を、国を護る責任がある。そして、ドランは彼の右腕だ。そんな彼等が、いくら親友の番だからと言って異世界に住んでいた真琴を無条件で信頼するなど有り得ない。


ーー善人の側の人間が善人だとは限らない。


バンラート達が真琴を助けるのに協力したかの様に、真琴が彼等に何か信頼に足る行動を示していたら話は別だっただろう。………だが、真琴は彼等に何も示せていない。

(精霊の事だって、あの子達が私を好いてくれただけであって私の実力なんかじゃ無い…)

バンラート達が、真琴を嫌っていない事は分かる。だが、心の底では無条件に信頼してもらっていない事も、今回の事で真琴はきちんと理解した。

(………まぁ、信頼してもらう為の何かをしてないんだから当然だよね)

頭では分かっているが、真琴の心は痛みを訴えていた。


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