上 下
175 / 244
第2章

No.174

しおりを挟む
此処暫くの間、アルフォンスはファウアームを警戒して真琴の護衛を兼ねて側にいた。だが、その間に溜まった騎士団長であるアルフォンスにしか出来無い仕事がある。今日は、その溜まった仕事を片付けなければならない日だった。


ーーガチャッ


「あっ、お久しぶりです団長」
「ハロルド、久し振り」

久し振りの執務室に入ると、右腕であるハロルドが書類から顔を上げて声をかけて来る。アルフォンスも、声をかけながら自身の執務机に近付く。机の上には、仕事出来ていなかった分の溜まった書類の束が積み重なっていた。

「………多いな」

思わず、心の声が溢れる。

「しょうがないですよ。団長にしか出来無い仕事は、沢山あるんですから」
「わかってる。わかってるが……」

(多すぎ無いか?)

日頃の仕事の感覚で言えば、この書類の山は30枚位だろうか。それが後2つ積み重なっている。

「……はぁ。……やるか」

仕方ない。
今日は、この書類を片付ける為に真琴のそばを離れたのだから。

***

ーーカリカリ…カリ

「……ふぅ。終わったな」
「お疲れ様です」
「ありがとう」

最後の一枚の書類を終わらせ、深い息を吐く。
すると、直ぐにハロルドが労りの声と共に入れた紅茶を机に置く。アルフォンスは、気の利く右腕に礼を言って紅茶を一口飲む。

疲れた身体に、暖かい紅茶が染み渡る。

「………相変わらず、ハロルドの入れる紅茶は美味いな」
「そうですか?まぁ、紅茶を飲むのが趣味ですからね」

アルフォンスに褒められて、ハラルドは嬉しそうに笑う。だが、元々強面の彼が笑うと更に恐ろしさがます。間違っても、子供やお年寄りには見せられ無い。

「かなり時間がかかったな」

窓の外を見ると、日が暮れ始め暗くなりかけていた。

「しょうがないですよ。書類、90枚はありましたからね」
「何故、1週間ほど休んだだけでこんなにも仕事が溜まるんだ…」
「此処んところ、国境付近に近付く怪しい奴等が増えてますからね。捕縛した殆どが何者かに雇われた奴等ですが、その様な奴等が増えれば増える程アルフォンス団長の仕事が増えますからね」

その言葉に、アルフォンスは酷く疲れた様に溜息を吐く。

「はぁ…。……で?雇い主の目星は付いたのか?」
「それが、まだなんです。如何やら、何人もの人物を経由して依頼されている様で元凶に辿り着けません。………それに」
「どうした?」

途端に、難しそうな顔をするハロルドにアルフォンスは気付く。その顔を見て、ハロルドに問いかける。

「………いや、それがですね。何人もの人物を経由しているせいで、どうやら途中から依頼内容が少しづつ変わっていった様で、依頼した人物を辿る度に内容が変化してるんですよ」
「………何だそれは」


ーー本来の命令と全然違う命令になっている?


ハロルドの言葉に、アルフォンスは絶句してしまった。


***

更新が今日になり、すみませんっ!
未だ、バタバタしていて来週の月曜日まで更新でき無いかもしれません。なるべく、今まで通りに更新できる様に頑張ります。

本当に、申し訳ありません。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

この度めでたく番が現れまして離婚しました。

あかね
恋愛
番の習性がある獣人と契約婚をしていた鈴音(すずね)は、ある日離婚を申し渡される。番が現れたから離婚。予定通りである。しかし、そのまま叩き出されるには問題がある。旦那様、ちゃんと払うもん払ってください! そういったら現れたのは旦那様ではなく、離婚弁護士で。よし、搾れるだけ絞ってやる!と闘志に燃える鈴音と猫の話。

番が見つけられなかったので諦めて婚約したら、番を見つけてしまった。←今ここ。

三谷朱花
恋愛
息が止まる。 フィオーレがその表現を理解したのは、今日が初めてだった。

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

王命で泣く泣く番と決められ、婚姻後すぐに捨てられました。

ゆうぎり
恋愛
獣人の女の子は夢に見るのです。 自分を見つけ探し出してくれる番が現れるのを。 獣人王国の27歳の王太子が番探しを諦めました。 15歳の私は、まだ番に見つけてもらえる段階ではありませんでした。 しかし、王命で輿入れが決まりました。 泣く泣く運命の番を諦めたのです。 それなのに、それなのに……あんまりです。 ※ゆるゆる設定です。

くたばれ番

あいうえお
恋愛
17歳の少女「あかり」は突然異世界に召喚された上に、竜帝陛下の番認定されてしまう。 「元の世界に返して……!」あかりの悲痛な叫びは周りには届かない。 これはあかりが元の世界に帰ろうと精一杯頑張るお話。 ──────────────────────── 主人公は精神的に少し幼いところがございますが成長を楽しんでいただきたいです 不定期更新

旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜

ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉 転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!? のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました…… イケメン山盛りの逆ハーです 前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります 小説家になろう、カクヨムに転載しています

私のことが大好きな守護竜様は、どうやら私をあきらめたらしい

鷹凪きら
恋愛
不本意だけど、竜族の男を拾った。 家の前に倒れていたので、本当に仕方なく。 そしたらなんと、わたしは前世からその人のつがいとやらで、生まれ変わる度に探されていたらしい。 いきなり連れて帰りたいなんて言われても、無理ですから。 そんなふうに優しくしたってダメですよ? ほんの少しだけ、心が揺らいだりなんて―― ……あれ? 本当に私をおいて、ひとりで帰ったんですか? ※タイトル変更しました。 旧題「家の前で倒れていた竜を拾ったら、わたしのつがいだと言いだしたので、全力で拒否してみた」

君は僕の番じゃないから

椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。 「君は僕の番じゃないから」 エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。 すると 「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる イケメンが登場してーーー!? ___________________________ 動機。 暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります なので明るい話になります← 深く考えて読む話ではありません ※マーク編:3話+エピローグ ※超絶短編です ※さくっと読めるはず ※番の設定はゆるゆるです ※世界観としては割と近代チック ※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい ※マーク編は明るいです

処理中です...