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第2章

No.157

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「落ち着いたか?」
「………はい。すみません、取り乱して」

バンラートの問いに、何とか答える。

(うぅ…。2人に、あんな姿を見られるなんて…)

まるで互いに抱き合っている様な体制を2人に見られている事に漸く気が付いた真琴は、恥ずかしさの余り大きな声で悲鳴を上げてしまったのだ。
ドランが事前にこの部屋に防音の結界を張っていなかったら、今頃大勢の騎士が武器を構えて駆け付けていただろう。

真琴は、もう一度バンラートとドランに頭を下げる。

「………本当に、すみませんでした」
「気にするな」
「そうだ、真琴。真琴が気にする事は何も無い」
「お前は、もう少し気にしろ!!」

まるで反省のカケラも無いアルフォンスにバンラートが叫ぶ。しかし、バンラートの言葉に耳を貸さずアルフォンスは隣に座る真琴の髪を弄り、甘い瞳で見つめ続ける。

竜人は本来、番に対してとても執着する。
長い時を共に過ごす事になる最愛のパートナーを、とても大切にする。

しかし、その一方で。

番に構い過ぎて、何もしなくなってしまう事もよくあった。人前でも気にせず、番にイチャつく者達が其処彼処そこかしこで目撃される。

これが同じ竜人同士の番なら、もっと最悪だ。

互いにイチャつき始め、その場で本番を行う勢いなのだ。そのくせ、自分達がその場で始めたのに番のその様な姿を通りすがりの誰かに見られると、烈火の如き勢いで怒り狂う。昔は、そんな怒り狂った竜人による暴行事件が多かった。

その為、何代前かの国王がある法律を作った。

『番を職場に伴う事を禁じる。仮に、職場が同じ場合は、速やかに部署を変えるか職場を別にする事。その時は、店主が責任を持って職の斡旋を行う事を命ずる。ーーそして、公共の場や公衆の面前で猥褻行為に及ぼうとした者は、竜人の場合は竜化時の鱗剥がし。竜人ではない場合は、男は1週間の鉱山での労働。女の場合は、肩上までの散髪を命じる』

この法律が出来て、瞬く間に猥褻行為や暴行事件が減った。

竜人にとって、鱗を剥がされる事はかなりの苦痛だ。鉱山の労働は、体力のある竜人でも大変だ。大の大人の竜人でも3日で音を上げる労働だ。それを、他の種族の者が行うのだ。
そしてこの時代、基本、女性は髪を伸ばす事が当たり前だった。髪を肩上まで切るのは、罪を犯した証。その髪の女性は、世間から爪弾きにされる。

誰しも、一時の快楽のために、それを上回る苦痛は経験したく無い。

バンラートは、ちらりと目の前の2人を見る。
隙あらば、真琴を自身の膝の上に乗せようと手を伸ばすアルフォンスと、伸びてくる手を必死に両手で押さえる真琴。法により、離れている時間が増えた事で番といるとは直ぐに触れようとする。

パンパンと二回手を鳴らして2人の視線を集める。

「はいはい、そこまでにしろよ。そろそろ、例の男が来るからな」

その言葉と同時に、部屋の扉がノックされた。



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