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第2章

No.142

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「それで?その後は、どうなったんですか?」

真琴は、思わず少し身を乗り出してマリアンヌに聞く。そんな真琴を、マリアンヌは妹の様に見つめる。

「勿論、最初はお断りしたわ」
「えっ!?そうなんですか?」
「えぇ。私は人間よ?竜人独特の番というのは分からないわ。……それに、あの人とアルフォンスを見ていたら…ね」

「分かるでしょう?」と、マリアンヌは目で伝える。

「………あぁ」

真琴の頭には、アルフォンス大好きオーラを振りまくバンラートが浮かんだ。

「私、2人を見て最初はあの人とアルフォンスがデキてると思ったのよ」

アルフォンスはそうでも無いが、バンラートは本気でアルフォンスを好き……恋をしていると思ったとマリアンヌは語った。

(確かに、側から見たらそう思っても仕方ないよね)

それ程までに、バンラートのアルフォンスに対しての態度が凄いのだ。

「分かるでしょう?本来なら、竜人…しかも王太子殿下に求婚されて断るなんて有り得ない事よ。でもあの時は、あのまま結婚してもお飾りの王妃になると思ったのよ。私をカモフラージュとして、本当に愛している彼といるのだと…」

「まぁ、何より王妃になるのも面倒だと思ったのよね」と、人が聞いたら不敬罪になりそうな事を口にするマリアンヌ。

「ーーそれでも、マリアンヌ様はバンラート様と結婚されたんですね」
「まぁね。 ーーだって、王都から離れたグルーニアに毎日の様にやって来て「結婚してくれっ!」って言ってくるのよ?王太子殿下なんて、この国で2番目に忙しい身分なのよ?それなのに、毎日やって来るんですもの」

(……まぁ、アルフォンスが毎回側に付き添ってたけれど)

マリアンヌに愛を告げるバンラートの背後で、何処か気まずそうに立っていたアルフォンスを思い出す。

「でも、それって簡単な事じゃ無いですよね」
「えぇ。本来なら、「私と結婚しろ」と命じる事も出来たわ。でも、あの人はそうしなかったの。毎日やって来て、少しづつ私自身を知ろうとしてくれたわ」

「だから絆されちゃったわ」と、笑うマリアンヌ。その姿は、幸せに満ち溢れていた。

「その時から、私とバンラート、それにアルフォンスは、夫として友として付き合って来たの」

そう言って、マリアンヌは紅茶を一口飲む。

「………本当に、色々あったわ。辛い事も、苦しい事も沢山あった。それでも、こうして此処にいるのは、夫や友人…それにこの国を支える家臣達が私を支えてくれたからよ。私は、沢山の人に支えてもらった。何度も、夫や友人に助けられた。………それなのに」

サァーーッと風が吹き、髪が一瞬真琴の視界を塞ぐ。

「私は、友人が苦しんでいた時に何も出来なかった」

ーーその時、マリアンヌはどの様な表情を浮かべていたのだろう。

泣きそうな顔?
苦しそうな顔?

ーーわからない。

だが…聞こえた声は、深い後悔と何も出来ない己に対しての苛立ちに満ちていた。

風が収まり、視界が開ける。
その時には、すでにマリアンヌは先程と同じ様な穏やかな表情を浮かべていた。

「だから、私は感謝してるの。私たちの友人であるアルフォンスを、出口の見えない絶望という名の暗闇から救い出してくれた事を。貴女のお陰で、アルフォンスは昔の様に笑っているわ」

『彼の元に、帰って来てくれてありがとう』

そう言ったマリアンヌは、王妃としてでは無くアルフォンスの1人の友人としての顔をしていた。


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