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第2章

No.133

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「これは…」

ハロルドから手渡された書類を見た途端、今までの不貞腐れた顔から一気に真剣な表情に変わる。
その変化を見て、ハロルドは気を引き締めた。

「…ちっ、面倒を起こしてくれたな」
「団長?」

低い声でそう呟いたアルフォンスは、席を立ち部屋を出ようとする。扉の前に立った時、くるりとハロルドを振り向き話す。

「これから、陛下の所に行ってくる」
「何か問題が?」
「あぁ。………どうやら今朝方、国境付近でファウアームの人間が目撃されたらしい」
「なっ!?」

ハロルドは驚いた。
何故なら、隣国ファウアームはドラゴニール国と冷戦状態だからだ。例え、冷戦状態の国の住民は他国に仕事や観光、出稼ぎなどで来る事もある。勿論それなりの警戒はするが、基本的に国の重要人物や余程の事がない限り行き来は自由だ。

だが、隣国ファウアームは別だ。

彼の国は、人間至上主義を掲げている国だ。
人間以外の獣人は、人間の奴隷として生まれたのだと平気で口にする。その考えは、国民にまで浸透している。かつて、ファウアームの国の住民が獣人の家族に遭遇した際、ファウアームの子供が獣人に石を投げ子供に怪我をさせたとして国際問題に発展しかけた事もある程だ。

他にも、ファウアームは他国と様々な問題を起こしている。その為、ドラゴニールを含む数ヶ国の国はファウアームとある条約を7~8年前に結んだ。

『ドラゴニールを含む数ヶ国の国に対して、ファウアームは如何なる理由があったとしてもその土地に断りもなく無断で足を踏み入れることを禁ずる。仮にこの条約を破った場合、その国はファウアームに条約違反金を請求出来るものとする。』

勿論、その条約を受け入れさせる為に数ヶ国はファウアームに対してかなりの金額を支払った。

「……侵入されたんですか?」

ハロルドが、強張った声を出す。

「いや、国境警備隊の報告によると見かけただけらしい。……だが、警備隊が目視出来る距離に現れた。あの条約が結ばれているのに何故だ?」

ーーそんなもの、偵察に決まっている。

アルフォンスが怒りのこもった声で言った。

「それに、今は懸念材料があるからな。ハロルド、騎士団内にこの事を伝え、注意を促せ。俺が戻ったら、国境警備隊に新たに向かわせる部隊編成を行う」
「わかりました。直ぐに、騎士団内に伝え編成の準備をします」
「頼むぞ」

自身の右腕の頼もしい返事を聞いて、アルフォンスは執務室を後にした。

(今まで大人しかったファウアームが、このタイミングで現れたのは偶然じゃ無い。……真琴の事が漏れた?いや、それにしては速すぎる。この場合、何らかの方法で精霊の気配を掴んだという線が濃厚か…?)

何はともあれ。

「面倒な事になったな」


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