115 / 244
第1章
No.114
しおりを挟む
「………で?」
「で?…とは?」
バンラートが、キラキラと何かを期待した眼差しでアルフォンスを見つめてくる。
「だから、アルとマコの事だよ!」
「俺と真琴?」
「何か進展あっただろ?」
この男は、一体何を期待しているのだ。
「何も無い」
「えーー!!嘘だろ!アル、お前…」
「……何だ、その目は」
バンラートの、残念な者を見る目。
(こいつに、そんな目で見られるとイラッとする)
「いや、アルって意気地無しだったんだなぁ~って思って」
「うっ…!!」
「確かに。あの女性関係がこの国1番に派手だった色男の将軍が、まさか本命にはこれ程までに奥手だとは……」
バンラートの言葉にダメージを受けているアルフォンスに、ドランが追撃を仕掛けてくる。
「そ、それは昔の話だ!!今は、真琴一筋だ!!」
そこまで言って、ハッと口を閉ざす。
「……アル、お前さ。咄嗟に口に出るくらいマコが好きなのに、何で告白しないんだ?」
「…………前にも言っただろう。 彼女は帰りたがっているんだ。 そんな彼女の邪魔なんて出来ない。……それに、彼女から本当の家族を俺が奪ったんだ。そんな俺が、彼女にこの想いを伝えることなんて…」
そう言って、後悔の滲んだ顔をするアルフォンス。それを見て、バンラートは苛立った様に話し出す。
「あーー、もうっ!!お前は、しつこ過ぎ!一体、いつまでその事で自分を責め続けるつもりだ!」
そう言って、執務机の前に立つアルフォンスの目の前までドスドスと足音を立て近付き、その胸倉を掴み上げる。
「いいか?よく聞けよ?お前が納得するまで何度でも言ってやる!お前は悪く無い。あんな事になるなんてあの場に居た誰も想像してなかった。…いや、出来なかった。あれは、お前のせいじゃ無い」
バンラートは、力強い眼差しでアルフォンスを見つめ、落ち着いた声で話す。
「だが……」
「お前は、マコの祖父母達に雨の日でもどんなに忙しくても、毎日家まで行って謝罪した。もう、彼等はお前を許してたよ。だから、お前に死んだ後に娘夫婦と一緒の墓を作って欲しいと頼んだんだ」
お前は許されたんだよ…。そう言ってバンラートは、両手をアルフォンスの肩に置く。
「それに、マコにも許されてるんだろ?マコ達に許されても、自分が許せないのは分かる。だけどな?もう少し、自分に優しくしてもいいんじゃ無いか?もし…もしもこのまま、マコが急に元の世界に帰る事になったとして。お前は、後悔しないか?気持ちを伝えず二度と会えなくなっても後悔しないか?」
ーー想いを伝えず、二度と会えなくなっても。
(嫌だっ!!)
強くそう思った。
勿論、真琴を帰したく無い。だが、誰よりも彼女の帰りたいという気持ちを知っていた。だから、叫ぶ自身の心を押さえ付けても彼女を返すつもりでいた。だがーー。
(このまま、何もしないで真琴を見送る?そんな事は嫌だ!!)
何もせずに真琴を帰したら、真琴は直ぐにアルフォンスを忘れてしまうだろう。それだけは嫌だった。
そう思ったアルフォンスは、バンラートの手を振りほどいて執務室を飛び出して行った。
「やれやれ、本当に手のかかる幼馴染だな。まっ、そこも良いんだけど」
「貴方にしては、珍しく良い事を言いましたね」
ドランがそう感心した様にバンラートを見つめる。
「当たり前だろ?このまま後悔し続けて仕事に支障をきたしたらどうするんだ?責任感の強いアルは、きっと仕事を辞めて放浪の旅に出る。そうしたら、俺がアルフォンスと一緒に居られないじゃ無いか!」
アルフォンス大好きのバンラートが、そう力強く叫ぶ。
(この馬鹿は…!!)
一瞬でも感心した己が馬鹿だったと、ドランは思った。
「で?…とは?」
バンラートが、キラキラと何かを期待した眼差しでアルフォンスを見つめてくる。
「だから、アルとマコの事だよ!」
「俺と真琴?」
「何か進展あっただろ?」
この男は、一体何を期待しているのだ。
「何も無い」
「えーー!!嘘だろ!アル、お前…」
「……何だ、その目は」
バンラートの、残念な者を見る目。
(こいつに、そんな目で見られるとイラッとする)
「いや、アルって意気地無しだったんだなぁ~って思って」
「うっ…!!」
「確かに。あの女性関係がこの国1番に派手だった色男の将軍が、まさか本命にはこれ程までに奥手だとは……」
バンラートの言葉にダメージを受けているアルフォンスに、ドランが追撃を仕掛けてくる。
「そ、それは昔の話だ!!今は、真琴一筋だ!!」
そこまで言って、ハッと口を閉ざす。
「……アル、お前さ。咄嗟に口に出るくらいマコが好きなのに、何で告白しないんだ?」
「…………前にも言っただろう。 彼女は帰りたがっているんだ。 そんな彼女の邪魔なんて出来ない。……それに、彼女から本当の家族を俺が奪ったんだ。そんな俺が、彼女にこの想いを伝えることなんて…」
そう言って、後悔の滲んだ顔をするアルフォンス。それを見て、バンラートは苛立った様に話し出す。
「あーー、もうっ!!お前は、しつこ過ぎ!一体、いつまでその事で自分を責め続けるつもりだ!」
そう言って、執務机の前に立つアルフォンスの目の前までドスドスと足音を立て近付き、その胸倉を掴み上げる。
「いいか?よく聞けよ?お前が納得するまで何度でも言ってやる!お前は悪く無い。あんな事になるなんてあの場に居た誰も想像してなかった。…いや、出来なかった。あれは、お前のせいじゃ無い」
バンラートは、力強い眼差しでアルフォンスを見つめ、落ち着いた声で話す。
「だが……」
「お前は、マコの祖父母達に雨の日でもどんなに忙しくても、毎日家まで行って謝罪した。もう、彼等はお前を許してたよ。だから、お前に死んだ後に娘夫婦と一緒の墓を作って欲しいと頼んだんだ」
お前は許されたんだよ…。そう言ってバンラートは、両手をアルフォンスの肩に置く。
「それに、マコにも許されてるんだろ?マコ達に許されても、自分が許せないのは分かる。だけどな?もう少し、自分に優しくしてもいいんじゃ無いか?もし…もしもこのまま、マコが急に元の世界に帰る事になったとして。お前は、後悔しないか?気持ちを伝えず二度と会えなくなっても後悔しないか?」
ーー想いを伝えず、二度と会えなくなっても。
(嫌だっ!!)
強くそう思った。
勿論、真琴を帰したく無い。だが、誰よりも彼女の帰りたいという気持ちを知っていた。だから、叫ぶ自身の心を押さえ付けても彼女を返すつもりでいた。だがーー。
(このまま、何もしないで真琴を見送る?そんな事は嫌だ!!)
何もせずに真琴を帰したら、真琴は直ぐにアルフォンスを忘れてしまうだろう。それだけは嫌だった。
そう思ったアルフォンスは、バンラートの手を振りほどいて執務室を飛び出して行った。
「やれやれ、本当に手のかかる幼馴染だな。まっ、そこも良いんだけど」
「貴方にしては、珍しく良い事を言いましたね」
ドランがそう感心した様にバンラートを見つめる。
「当たり前だろ?このまま後悔し続けて仕事に支障をきたしたらどうするんだ?責任感の強いアルは、きっと仕事を辞めて放浪の旅に出る。そうしたら、俺がアルフォンスと一緒に居られないじゃ無いか!」
アルフォンス大好きのバンラートが、そう力強く叫ぶ。
(この馬鹿は…!!)
一瞬でも感心した己が馬鹿だったと、ドランは思った。
10
お気に入りに追加
6,590
あなたにおすすめの小説
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
王命で泣く泣く番と決められ、婚姻後すぐに捨てられました。
ゆうぎり
恋愛
獣人の女の子は夢に見るのです。
自分を見つけ探し出してくれる番が現れるのを。
獣人王国の27歳の王太子が番探しを諦めました。
15歳の私は、まだ番に見つけてもらえる段階ではありませんでした。
しかし、王命で輿入れが決まりました。
泣く泣く運命の番を諦めたのです。
それなのに、それなのに……あんまりです。
※ゆるゆる設定です。
この度めでたく番が現れまして離婚しました。
あかね
恋愛
番の習性がある獣人と契約婚をしていた鈴音(すずね)は、ある日離婚を申し渡される。番が現れたから離婚。予定通りである。しかし、そのまま叩き出されるには問題がある。旦那様、ちゃんと払うもん払ってください! そういったら現れたのは旦那様ではなく、離婚弁護士で。よし、搾れるだけ絞ってやる!と闘志に燃える鈴音と猫の話。
君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。
【完結】お前を愛することはないとも言い切れない――そう言われ続けたキープの番は本物を見限り国を出る
堀 和三盆
恋愛
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
「お前を愛することはない」
デビュタントを迎えた令嬢達との対面の後。一人一人にそう告げていく若き竜王――ヴァール。
彼は新興国である新獣人国の国王だ。
新獣人国で毎年行われるデビュタントを兼ねた成人の儀。貴族、平民を問わず年頃になると新獣人国の未婚の娘は集められ、国王に番の判定をしてもらう。国王の番ではないというお墨付きを貰えて、ようやく新獣人国の娘たちは成人と認められ、結婚をすることができるのだ。
過去、国の為に人間との政略結婚を強いられてきた王族は番感知能力が弱いため、この制度が取り入れられた。
しかし、他種族国家である新獣人国。500年を生きると言われる竜人の国王を始めとして、種族によって寿命も違うし体の成長には個人差がある。成長が遅く、判別がつかない者は特例として翌年の判別に再び回される。それが、キープの者達だ。大抵は翌年のデビュタントで判別がつくのだが――一人だけ、十年近く保留の者がいた。
先祖返りの竜人であるリベルタ・アシュランス伯爵令嬢。
新獣人国の成人年齢は16歳。既に25歳を過ぎているのに、リベルタはいわゆるキープのままだった。
【完結】私の番には飼い主がいる
堀 和三盆
恋愛
獣人には番と呼ばれる、生まれながらに決められた伴侶がどこかにいる。番が番に持つ愛情は深く、出会ったが最後その相手しか愛せない。
私――猫獣人のフルールも幼馴染で同じ猫獣人であるヴァイスが番であることになんとなく気が付いていた。精神と体の成長と共に、少しずつお互いの番としての自覚が芽生え、信頼関係と愛情を同時に育てていくことが出来る幼馴染の番は理想的だと言われている。お互いがお互いだけを愛しながら、選択を間違えることなく人生の多くを共に過ごせるのだから。
だから、わたしもツイていると、幸せになれると思っていた。しかし――全てにおいて『番』が優先される獣人社会。その中で唯一その序列を崩す例外がある。
『飼い主』の存在だ。
獣の本性か、人間としての理性か。獣人は受けた恩を忘れない。特に命を助けられたりすると、恩を返そうと相手に忠誠を尽くす。まるで、騎士が主に剣を捧げるように。命を助けられた獣人は飼い主に忠誠を尽くすのだ。
この世界においての飼い主は番の存在を脅かすことはない。ただし――。ごく稀に前世の記憶を持って産まれてくる獣人がいる。そして、アチラでは飼い主が庇護下にある獣の『番』を選ぶ権限があるのだそうだ。
例え生まれ変わっても。飼い主に忠誠を誓った獣人は飼い主に許可をされないと番えない。
そう。私の番は前世持ち。
そして。
―――『私の番には飼い主がいる』
君は僕の番じゃないから
椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。
「君は僕の番じゃないから」
エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが
エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。
すると
「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる
イケメンが登場してーーー!?
___________________________
動機。
暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります
なので明るい話になります←
深く考えて読む話ではありません
※マーク編:3話+エピローグ
※超絶短編です
※さくっと読めるはず
※番の設定はゆるゆるです
※世界観としては割と近代チック
※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい
※マーク編は明るいです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる