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第1章

No.108

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想いを伝えると、また涙が溢れてきた。

(うわぁ~、どうしよう…。全然止まんないよ)

これ以上泣いたら、只でさえ腫れた目元が更に酷い状態になってしまう。必死に止めようとするが、もう自分ではどうしようもなかった。

ーーその時。

<真琴っ!掴まれ!>
「え?…うわぁっ!?」

突然、アルフォンスさんが声を上げたかと思うと グラっとアルフォンスさんの身体が揺れる。

(掴まるって、何処に!?)

この滑らかな鱗の身体の何処に掴まれと言うんだろう…?取り敢えず、必死に手を広げてアルフォンスさんの首元に掴まる。

(一体、何が起こったの?)

<ちっ!………真琴、大丈夫か?>

アルフォンスは、小さく舌打ちを打ちギロッと地上を睨み付ける。そうして、心配そうに私に声をかける。

「だ、大丈夫です。………あの、一体何が」

未だに、心臓が早鐘を打っている。
密着している場所からそれが伝わったのだろう。
アルフォンスさんは、私を安心させる様に落ち着いた声で話し出す。

<下にいる黒い蛇が、魔法攻撃をしてきたんだ>
「あっ!!そうだ!あの蛇っ!」

すっかり、あの蛇の事を忘れていた。

「あ、アルフォンスさんっ!わ…私、あの蛇に追われてっ!」

慌てて、今までの事を必死に話す。
そうして、全て聞き終わって暫く黙っていたアルフォンスが漸く話し出した。

<………すまない。真琴がこんな目にあったのは、全て俺のせいだ>

そうして、アルフォンスはこの度の事件が何故起こったかを話す。ダンブレア男爵令嬢マリーが、アルフォンスに好意を寄せており、そんなアルフォンスの側にいる真琴に嫉妬して誘拐した事。そんなダンブレア男爵及びマリーの事を利用したスネラーク国元国王シュネルの配下であった蛇獣人達。色々な思惑が重なって、今回の事件が起きたのだ。

(………本当に、真面目な人)

マリーが、好意を抱いたのはアルフォンスのせいでは無い。蛇獣人の事だって、ただの逆恨みだ。

アルフォンスに非は無い。

それなのに、この真面目で優しい竜は自分のせいだという。そうして、初めてアルフォンスに謝罪された時の事を思い出した。

「ふふっ…」
<真琴?>

急に笑い出した私に、アルフォンスさんは困惑する。

「 いえ…。アルフォンスさんは、本当に真面目だなぁ~って」
<……そうか?>

不思議そうに首を傾げるアルフォンス。

(そう…。どんな時だって、一切言い訳をしないで全ての責任を自分一人で背負う…。とっても真面目で優しい人)


ーーそんな、貴方だから


<真琴?大丈夫か?>
「あ、はい。大丈夫です」
<そうか。なら、あの蛇を始末する。だから、少し耳を塞いでいてくれ>

(耳を塞ぐ?)

不思議に思いながらも、素直に指示に従う。

<塞いだな。それじゃあーー>

何をするんだろうと、黙って見ていると。


ーーゴォォォォォォォォォ!!


視界が、熱風と共に一気に赤く染まった。



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