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第1章

No.103

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「無理無理無理っ!!来ないでーー!!」

私、月宮真琴18歳。
ただ今、長さが3メートル程ありそうな大きな黒い蛇に追いかけられ、現在森の中を全力疾走中。

『まこと、はやく!』
『もっと、はやく』
『たべられちゃう!』
『たべられちゃうの?』
『はしって、はしって!』
『おいつかれるよ』

(煩い!!これでも、死ぬ気で走ってるわ!!)

口々に声をかけてくる私の周りを飛び交う精霊達につい心の中で怒鳴ってしまったのは仕方ない事だと思う。精霊達の様に、飛べるわけでも…況してや、疲れ知らずでも無いのだ。こっちは、命の危険に晒されているのに周囲から色々話しかけられても答えられない。

人は、自身に余裕が無いと他者に優しく出来ない生き物である。

(だから、今は話しかけないでーー!!)

今は、かつて無いほどに余裕が無いのだから。


***


そもそも、何故こうなったかと言うとーー。
あれは、精霊達に警告され追っ手から逃れる為、精霊達について行き小川の流れる場所まで来た時の事だ。

「はぁはぁっ……ふ~。……此処まで来れば一先ず安心かな?」

背後を振り向き、今しがた走って来た森を見つめる。だが、誰かがやって来る気配はない。そこで、ようやく肩の力を抜く。

「あ~、疲れたぁ。もう、喉がカラカラだよ」

それに、汗で服が身体に張り付き気持ち悪い。淡い水色のワンピースは、全体が汗で色が濃くなって居た。

(ーーそれに)

今まで意識しない様にしていた裾の部分を、ちらりと見る。そこは、他の部分より更に濃い色に染まっていた。

ーーそれは、あの真琴を攫った男達の血だ。

「っ…!」

あの時の事を思い出し、ゾクリと身体に悪寒が走る。

(嫌っ………!!)

真琴は、濡れることも構わずに、目の前の小川に入る。そうして、血で染まった部分を水に浸けて何度も洗う。最初は赤く染まっていた水が段々と元の透明な水に戻る頃には、裾に付いた血は殆ど無くなった。その事に、ホッとしながら次にハンカチを川の水で濡らして汗を拭っていく。

『このみずは、のめるよ!』

そう言った、みーちゃんの言葉を信じて水を飲む。

(美味しい…)

カラカラに乾いていた喉や身体に、冷たい水が冷たく染み渡る。

『ひーくんとふーくんが、かわかしてあげる!』
『あげる?』

すると、側にいたひー君とふー君がそう言った途端ブォォーと暖かい風が吹いて、あっという間に濡れた服などを乾かしてくれた。






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