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第1章

No.102

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「そん………な…」

ガクリと、膝をつく男。

「お前達は、もう終わりだ。無駄な抵抗は諦めろ」

アルフォンスがそう言って、部下に捕縛を命じる。男は、抵抗らしい抵抗もせずに顔を伏せて、されるがままだ。
そうして、暫く無言で伏せていたと思ったら肩を震わせ始めた。

「……ク…ククッ…。ククク…」

何がおかしいのか、男は突如笑い出した。

「おい、黙れ!何がおかしいっ!」

拘束していた騎士が、男に怒鳴るが男は気にせず笑う。そうして、暫く笑うとアルフォンスを見上げる。

「悔し…い…が、お前は…殺せ…ない…ようだ…な。だがーー」

そう言って、ニタリと醜悪な顔で嗤った。

「あの女は、殺せる」

その言葉に、アルフォンスは目を見開いた。
この男が言う「あの女」とは、真琴しか居ない。

アルフォンスの大切な番。

「なっ!?真琴に何をしたっ!!」

真琴は、自分で逃げた筈。
まさか、追っ手が?

「私…達が、失敗…し…た時。あの女…を殺す、追跡魔法…を…かけた。今頃、あの女…は…」

最後まで聞かずに、アルフォンスは走り出した。
そうして、直ぐに竜に変わると空へと飛んだ。

(真琴っ!!何処だ!)

魔法も何も使えない彼女では、あの男の魔法を防ぐことは出来ない。無力な人間だ。

(真琴、真琴!!)

こうしている間にも、真琴が危険に晒されている。

(くそっ!!)

どうして、直ぐに真琴を探しに行かなかったのか。
1人で逃げたして心細かった筈だ。辛かった筈だ。
きっと、アルフォンスの助けを待っている。

(それなのにっ!!俺はどうしてっ…!)

あの時もそうだ。
真琴が目の前で消えて居なくなった時、あれ程後悔したのに。何故、自分は後になって後悔ばかりするのだろう。

(……いや、まだだ)

あの時とは違い、まだ真琴はこの世界にいる。アルフォンスが触れる所にいる。

(真琴、待っていろ。俺が必ず助ける)

だから、もう少し待っててくれ。
そう思った時だった。

『赤い竜よ。こちらだ…』

不思議な声が、何処からか聞こえて来た。
それと同時に、ふわりと目の前に淡い光の糸が現れた。その光の糸は、森の中に続いて居た。

『この糸を辿れ』

それっきり、声は聞こえなくなる。

(今の声は…)

今のが何だったのかは、分からない。
だが、何故か信じようと思った。

(何故だろう。この糸の先に真琴が居ると本能が叫んでいる)

なら、信じるだけだ。

(真琴、今行くっ!)

そうして、アルフォンスは更にスピードを上げて糸の先へと飛んで行った。



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