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第1章

No.100

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ザッと、騎士達が男を囲む。
だが、男は慌てた様子を見せずにアルフォンスを見つめる。

「ふんっ!敵国に恐れられるドラゴニールの『血濡れの火竜』がなんてザマだ。まさしく、血濡れの火竜だな」

未だ、腹部から血を流すアルフォンスを男は嘲笑う。それを聞いた騎士達は、更に殺気を男に向けながら剣を構える。

「団長を馬鹿にするなっ!」
「この状況で、逃げられると思ってるのか!」

騎士達の言葉を聞いて、男は笑い出した。

「クククッ。…逃げる?まさか!私がこの瞬間を、どれ程待ちわびたと思っている!」

狂気を宿したその目に、騎士達は一歩後退りする。その心に、恐怖が滲む。

ーーその時。

「怯むなっ!」

アルフォンスの力強い声が響いた。

「ここで、この男を止めないとドラゴニールが…俺達の大切な人達が傷付く!決して、背後に逃げるな!俺達は、この国を民を守る騎士だ!」

アルフォンスの言葉に、己の護るべき者達を思い出した騎士達は、退いた足を前に進める。

「かかれ!」

アルフォンスのその言葉と共に、騎士達は一斉に男に斬りかかる。

「くっ!?」

数人の騎士の攻撃を防ぎながら、男は魔法を使おうとする。

「させるかっ!」

だが、直ぐに他の騎士が斬りかかり魔法を未然に防ぐ。その間に、他の騎士が拘束の魔法を使う。

「こ………のっ、雑魚共が!舐めるなっ!!」

男は、拘束魔法を無理矢理解いた。

「雑魚?俺の部下に、雑魚なんていない。いるのは、優秀な者達だけだ」
「なっ!?」

いつの間か、目の前にアルフォンスがいた。男は、目を見開き持っていた短剣を目の前に突き出す。アルフォンスは、それをギリギリでかわしながら剣を振り上げた。

「これで終わりだっ!」
「グハッ!!」

避けられずに切られた男は、血を撒き散らしながら地面に倒れる。それを見届け、剣に付いた血を飛ばす。そうして、他の騎士達に指示を出していた時だった。

ゆらりと、近くの木の影が揺らいだ。
そうして、影から黒いローブを着た小柄な男が短剣を構えてアルフォンスに向かって飛び出した。だが、それを見てもアルフォンスは身動ぎ一つしなかった。

「死ねっ!!」

そう言って、短剣をアルフォンスに刺そうとした時。

「おいおい。そう何回も、団長に近付ける訳ないだろ」
「なっ!?」

小柄な男の短剣を、アルフォンスの前に出たハロルドが男の手首を掴んで防ぐ。必死にハロルドの手を引き剥がそうとするが、ハロルドの手は離れない。

「………お前の仲間だな?ナイフに、竜殺しの呪いをかけたのは」

そう言って、ハロルドは小柄な男の襟を掴む。

「妹の仇だっ!!」

そう言って、小柄な男を背負い投げの要領で男を地面に叩きつけた。

「ぐっ…は!?」

クレーターが出来る程に強く地面に叩きつけられた小柄な男は、白目を剥いて気を失った。

「これで、お前達は終わりだ」

ようやく、16年前の決着がついた瞬間だった。


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