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第1章
No.87
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ーーピチョン、ピチョン
暗い空間の中、水滴が一定のリズムで落ちる音が響いてくる。隠し通路に逃げ込んで、どのくらい経っただろう。体感では、一時間くらいだろうか?
「多分、何処か外に出られると思うんだけど…」
暗い隠し通路を、湿った壁伝いに慎重に歩きながら呟く。最初は乾いていた壁も段々と湿ってきた為、水辺が近いのだと思う。
そもそも隠し通路などは、何かあった時に秘密裏に外に脱出する為のものだ。だから、必ず外に出られる筈だ。
「ーーまだ、誰もこっちに来てないよね?」
背後を振り返り、暗闇に目を凝らす。
耳を澄ましても、自身の呼吸音と水滴が落ちる音以外、何の音も聞こえない。
見えるのは、暗闇だけ。
「大丈夫、大丈夫。必ず、外に出られるから」
左手で胸のあたりを、ぎゅっと掴む。
(必ず、アルフォンスさんは私を見つけてくれるから)
不安と恐怖で折れそうな心を叱咤する。
何故、真琴も此処までアルフォンスを信頼しているのか分からない。真琴は、元の世界に戻るまでアルフォンスに世話になっているだけだ。探してはくれるだろうが、見つかるかは分からない。元の世界でも、行方不明者が発見される事は少ない。更には、ルイザは怪我をしていて、目撃者も居なかった。
ーー正直言って、絶望的な状況だ。
本来だったら、既に心は折れていただろう。
「……本当、何でこんなにアルフォンスさんを信頼してるんだろう」
思わず苦笑いが浮かぶ。
自分で自分の事がよく分からない。今まで、そんな事は一度も無かったのだが。
「……でも今は、この気持ちに縋るしか無いよね」
考えている暇は無い。
自身の心がアルフォンスを信じているのだ。今、この心を信じないで一体何を信じる?
「っ!…よし!!」
パンッ!と、両頬を叩いて気合いを入れる。
「後悔するのは、最後の最後よ」
そう言って、前を向いた瞬間。
『かっこいい、かっこいい!』
『こうかい、さいご!』
『かっこいい?』
『かっこいい!』
『おとこまえ』
『"愛し子"、おとこまえ!』
そんな声が聞こえた瞬間。
ーーパァァァ
目の前に、六つの拳より一回り小さな光が現れた。
「えっ?」
(何…これ)
小さな光は真琴を囲むように、クルクルと周りを飛び交う。
『こっち、こっち』
『こっちだよ!』
『しんじて』
『しんじて?』
『しんじる!』
『きて、きて!』
幼い子供の声がいくつも聞こえて来た。
そうして、先を照らす様に私を導く。
(…何だろう。これが何かわからないけど、信じてついて行った方がいい気がする)
どうせ、後ろには戻れ無いのだ。
ならば、この光について行こう。
そうして、真琴は光達の後をついて行った。
暗い空間の中、水滴が一定のリズムで落ちる音が響いてくる。隠し通路に逃げ込んで、どのくらい経っただろう。体感では、一時間くらいだろうか?
「多分、何処か外に出られると思うんだけど…」
暗い隠し通路を、湿った壁伝いに慎重に歩きながら呟く。最初は乾いていた壁も段々と湿ってきた為、水辺が近いのだと思う。
そもそも隠し通路などは、何かあった時に秘密裏に外に脱出する為のものだ。だから、必ず外に出られる筈だ。
「ーーまだ、誰もこっちに来てないよね?」
背後を振り返り、暗闇に目を凝らす。
耳を澄ましても、自身の呼吸音と水滴が落ちる音以外、何の音も聞こえない。
見えるのは、暗闇だけ。
「大丈夫、大丈夫。必ず、外に出られるから」
左手で胸のあたりを、ぎゅっと掴む。
(必ず、アルフォンスさんは私を見つけてくれるから)
不安と恐怖で折れそうな心を叱咤する。
何故、真琴も此処までアルフォンスを信頼しているのか分からない。真琴は、元の世界に戻るまでアルフォンスに世話になっているだけだ。探してはくれるだろうが、見つかるかは分からない。元の世界でも、行方不明者が発見される事は少ない。更には、ルイザは怪我をしていて、目撃者も居なかった。
ーー正直言って、絶望的な状況だ。
本来だったら、既に心は折れていただろう。
「……本当、何でこんなにアルフォンスさんを信頼してるんだろう」
思わず苦笑いが浮かぶ。
自分で自分の事がよく分からない。今まで、そんな事は一度も無かったのだが。
「……でも今は、この気持ちに縋るしか無いよね」
考えている暇は無い。
自身の心がアルフォンスを信じているのだ。今、この心を信じないで一体何を信じる?
「っ!…よし!!」
パンッ!と、両頬を叩いて気合いを入れる。
「後悔するのは、最後の最後よ」
そう言って、前を向いた瞬間。
『かっこいい、かっこいい!』
『こうかい、さいご!』
『かっこいい?』
『かっこいい!』
『おとこまえ』
『"愛し子"、おとこまえ!』
そんな声が聞こえた瞬間。
ーーパァァァ
目の前に、六つの拳より一回り小さな光が現れた。
「えっ?」
(何…これ)
小さな光は真琴を囲むように、クルクルと周りを飛び交う。
『こっち、こっち』
『こっちだよ!』
『しんじて』
『しんじて?』
『しんじる!』
『きて、きて!』
幼い子供の声がいくつも聞こえて来た。
そうして、先を照らす様に私を導く。
(…何だろう。これが何かわからないけど、信じてついて行った方がいい気がする)
どうせ、後ろには戻れ無いのだ。
ならば、この光について行こう。
そうして、真琴は光達の後をついて行った。
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